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14.きゅるきゅる

 ご飯のために、みんなで()(はせ)さまの放熱ポイントまで戻ることになった。

 移動の前に、ニーノがマレンポーたちにナームを船に連れて行くことを伝える。


「ニーノはご飯を食べませんか」

「私はいい。ナームに、清潔にして薬湯に入ってもらいたい」

「お? 他の座から帰ってきたとき、エーヴェたちが入るやつですか?」

「内容は違うが、そうだ」


 ペードとカウが顔を見合わせる。


「ナームって、竜さんから降りられるの?」

「ここに来るのも苦労したんだぜ」


 ……動くと痛いのかな? とてもたいへん。


「私が連れて行くので問題ありません」


 ――ニーノに任せれば安心なのじゃ! ナーム、行ってくるがよいのじゃ!

 ――痛みはたいそう大事じゃが、ずっと痛いのはよくないのじゃ! 行ってくるのじゃ!


 お屑さまたちが賛成する。

 ほとんど同時に話してるのに、二人が言ってることが混ざらないのが不思議だ。


 ――わしが連れて行ってもよいのじゃ。今は羽があるのじゃ。


 お骨さまが羽をばたつかせるのを見て、ニーノは目を細めた。


「では、お願いいたします」


 ナームを支えながら肩に乗せて、ニーノはントゥに手振りをした。

 ントゥは、さっとお骨さまの頭の上に戻る。お骨さまの上にあがってくる人間の様子を見に来てたみたい。

 戻ったけど、うろうろして落ち着かない。


 ――では船に行ってくるのじゃ。ひょい、なのじゃ。


 お骨さまは上に軽くジャンプしただけで、風をつかんですいーっと飛ぶ。

 頭の上に、ぴたっと伏せてるントゥが見えた。


「ナーム、またあとでー」


 地馳さまの座の三人がナームを見送る。

 ナームが手にしていた長い杖を振って返した。



「そういえば、エーヴェたち食べ物持って来ませんでしたよ」

「いえいえ、わたしたちが作りますから、エーヴェさんたちは見ていてください」


 マレンポーはもふマントの下から肩掛けカバンを引っ張り出す。

 ペードとカウは拾ってきた枝で何かを作ってる。


 ――地馳は実に寛大なのじゃ! 自分の背で他の生き物が暮らしたり、物を焼いたりしても気にしないのじゃ!


 お屑さまがぴこんぴこんする。

 やぶから出た(なが)お屑さまはコイルみたいに渦を巻いて、止まり木の様子を眺めてる。


「お屑さま、つかまり心地はどうですか?」


 ジュスタが聞く。

 システーナがさっき止まり木を渡してた。

 たぶん、右から左からお屑さまの声が聞こえたら、賑やかすぎます。


 ――うむ! なかなかである! わしはわしでないわしより大きいゆえ、この止まり木では不足かと思うたが、わしは屑なのじゃ! やっぱり軽いのじゃ!

 ――そうじゃ! 屑は軽いのじゃ!

 ――(けい)(みよう)なのじゃ!


 お屑さまたちは謎に盛り上がってる。


「長いお屑さまのほうはぴこんぴこんしませんね」


 ――なんじゃ、ぴこんぴこんとは!


 微妙にトーンの違う声がかぶった。


 ――わしは巻くのが好きなのじゃ! そちらの短いわしではこんなしわざはできないのじゃ!

 ――ぽはっ! わしではないわしはこのように軽快に動けぬのじゃ!


 コイル状にくるくる巻きにした体の()()が太くなったり、細くなったりする。

 ヘビが獲物に絡みつくときの動きに似てるけど、お屑さまはぺらぺらだから、新体操のリボンがくるくるしてるみたいな感じ。


「……お屑さまの幅が変わってるみたいで不思議です」


 ……ぴこんぴこんというより、きゅるきゅるかな?


 きゅるるるる……


 お腹もきゅるきゅる言う。

 大変な空腹に、座りこんだ。


「お」


 お尻や足から、ずんずんとリズムが体に響いてくる。


「地馳さまが走ってるのが分かりますね」


 横には揺れないけど、縦には揺れてるのかもしれない。


 遠くの景色をみて楽しい気分になってると、急に視界が明るくなった。


「わ!」

「地馳さまの放熱かな?」

「それだけじゃないですよ! 火がつきました!」


 カウの()(もと)に火がともり、ペードが煮炊きの鍋をかけられる囲いを置く。


 ご飯まではまだかかりそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] お屑さまたちの呼称。お屑さまと長お屑さま。覚えました。 お九頭さがお屑さまたちに分裂するとき、薄さと軽さを追求した感じなのかな。盛り上がるお屑さまを見てそう思いました。 ナームはこれからニー…
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