13.すぽん!
お屑さま二人の声が、わんわん頭の中に響いてる。
一人でも賑やかなのに、二人になると言葉の隙間が見つからない。
面白げなことや質問したいことはたくさんあるんだけど、聞く前に次の言葉が流れこんでくる。
でも、うっかりして、ぽかんと聞いてると怒られる。
――屑よ。そろそろ皆、食事の時間である。
どっしりした竜さまの声に、夢から覚めた気分。
「本当ですよ! お日さまがもう空の真ん中です」
船からはだいぶ離れちゃったけど、竜さまはしっかり見てくれてる。
――そうなのじゃ。たくさんは話が長いのじゃ。
「うぎゃー――――!」
「ふわっ!」
茂みの上にぬうっとお骨さまの顔が入ってきて、カウとペードがひっくり返った。
――わしはたくさんではないのじゃ!
お屑さまがいつも通りに返すけど、お骨さまはぱかっと口を開ける。
――一人、二人、三人、四人、五人、六人。六人じゃ。六人もびっくりしておるのじゃ。とても上手になったのじゃ。
頭上のントゥが何度も跳ねて、誇らしげ。
……もしかしたら、お骨さまをたたえてるのかな?
「お骨さまも来たんですね」
ジュスタがにっこりする。
「エーヴェ、びっくりしました!」
お骨さまがきょきょきょきょきょと羽を鳴らす。
「……え? なんで骨が動いてるの?」
「いやー見慣れない巨大な生き物が竜さんの背中にいるような気がしてたんだけど、見ないようにしてたんだよなー。いるよなー」
カウとペードはいつの間にかマレンポーの後ろに避難してる。
……二人の動きは素早いか、静かか、両方です。
マレンポーはびっくりしてるけど、一歩前に進み出た。
「お骨さま……? ということはまさか、この生き物も竜ということですか? 竜は骨だけでも生きられるのですか?」
――骨になる前は肉もあったのじゃ。今は骨なのじゃ。だいたい忘れたのじゃ。
――まったく! 骨はたいそうなあほうなのじゃ!
――骨になったゆえ、庇護もすっかり小さくなったのじゃ!
――たくさんとたくさんが、わやわや言うのじゃ。
二人がかりでやいやい言われるけど、お骨さまは全然気にしない。
「だーかーらー! 竜さまが言う通りだぜ。ご飯ご飯ー!」
「ごはんー!」
システーナと一緒に主張した。
「でも、お屑さまをここに置いたままでいいんですか?」
ジュスタの言葉に、やぶを見上げる。
「どうやれば出せますか?」
……ナイフを使って枝を切る?
でも、トゲがたくさんだから、気をつけても引っかかれそう。
「お屑さまもけがしねーよーに……ってケガすっかな? お屑さま」
システーナが腕輪のお屑さまに首をかしげる。
――ぽはっ! わしではないがわしが、草のトゲなぞで傷つくわけがないのじゃ! ちょっと顔を出したところを皆で引けばよいのじゃ!
――なんと! それは不格好なのじゃ! 止まり木をよこすのじゃ! わしがかぎ爪を出してつかむゆえ、止まり木を引くのじゃ!
「なるほど」
ジュスタが持って来た止まり木を取り出す。
――左なのじゃ! もう少し高く掲げよ! むむ! 行き過ぎたのじゃ、戻すのじゃ!
細かな指示でジュスタが位置を調整した。ようやくお屑さまが、枝の隙間からするりとかぎ爪を伸ばして止まり木の横木をつかむ。
――うむ! 引くがよいのじゃ!
「あ、台座を持つと軸が抜けるかもしれないので、ここをにぎってください」
「そんなに何人もにぎれねーぞ」
「エーヴェも引きます!」
システーナとジュスタが宿り木をつかんで、私はシステーナとジュスタの腰のベルトを引っ張る。
「あー、これ、あたし一人でいけっから、ジュスタとおちびはさがってな」
やぶから二、三歩退ったところで、システーナが言った。
ジュスタと目を見交わして、さっと離れる。
「システーナ、手荒にするな」
離れたところでナームの様子を見てるニーノが釘を刺した。
「はーい。そー――っれ!」
かけ声と共に、システーナは後ろに大きく飛びすさる。
――なんと!
――ぽ!
三メートルはありそうな長いお屑さまが、やぶからぽーんと出てきた。
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