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16.ブランチタイム

遅くなりがちで申し訳ありません。

 足先の裏に何かを感じて、目を開けた。

「わひゃっ! ひゃっひゃ! くすぐったい!」

 飛び起きると、システーナがひらひら手を振った。

「おはよー、おちび」

「シス、おはよー! なんでくすぐりますか!」

「わっはっは!」

 はだしのまま寝床から飛び出して、システーナを追い回す。

「――あれ? ニーノは?」

 いつもなら「走るな」の声が聞こえるはずなのに。

「あいつら、まだ寝てっぞ。昨日ので疲れたみてーだな」

「なんと」

 お骨さまを空中で止めるのは、ニーノでも大変だったみたい。

「もう昼近ぇしな。二人で飯作ってから遊ぼーぜ」

「おお! やったー!」

 システーナと二人でご飯は久しぶりです。


 システーナの隣に立って、トウモロコシの粉に水を混ぜて溶く。ほとんど水の感触の種を、システーナに渡した。

 システーナは陶板を温めて、その上に種を流し込み、薄焼きする。水で戻した干し野菜と木の実を細かくして、甘しょっぱいタレと混ぜ合わせ、薄焼きトウモロコシ粉クレープに塗って、くるくる巻く。まだ温かいクレープを布で包んだ。

「よーし、外行くぞー!」

「はい!」

 水筒に水を入れて、二人で出発。

 ――痴れ者め! 待つのじゃ! 料理が終わったならば、わしを連れて行くのじゃ!

 食堂のテーブルの上から声が響いた。

「あーお屑さま、わりーわりー」

 お屑さまの腕輪をシステーナがつける。

 ぴこんぴこんするお屑さまと一緒に、あらためて出発。


「お! ペロ」

 一階降りたところで、船倉のいちばん下から登ってきたペロに会う。ペロは足元まで来ると、ぴたりと止まった。

「……あ、そういえば顔、洗ってないですよ」

 洗面の水がもらえると思って、下で待ってたのかも。

 ――うむ! 水玉は水が好きなのじゃ!

「湖で洗えばいーさ。ペロも来い」

 言うやいなや、システーナがペロの鉢をつかんで持ち上げる。ペロは鉢から出てる部分をうぞうぞさせた。なんとなく、不満げ。

「テーマイも来ますか?」

 外への扉を開くとテーマイが側にやって来た。湿った鼻面にくっついた干し草をなめ取って、テーマイは耳をふるふる動かす。いくら干し草がいっぱいでも、やっぱり外のほうが好きなのかも。


 みんなで湖の側まで行く。ペロはすぐさま湖の中に入っていった。テーマイは鼻面を伸ばして、水を飲みはじめる。

「あ! お骨さま、もう湖にいます!」

 今日もいい天気。青い空と青い湖に、白い骨がはさまれてる。

「もう昼近けぇからなー」

 ――骨の上にントゥもおるのじゃ! 喜んでおるのじゃ!

 お骨さまが湖の真ん中を走る様子を、手をかざして眺める。

 ……遠いから、ントゥはさすがに分からない。

「りゅーさまはどこですか?」

「あっちの岸……、あれだろ?」

「おお」

 離れた湖の岸で、竜さまがくつろいでる。

 その奥の岩陰で黒く丸まってるのはお影さまかな?

「あ、りゅーさま、あくびしました」

 ――山は影とずいぶん遊んでおったのじゃ! 言い聞かせた後はよく遊ぶのじゃ!

 昨夜はいろいろあったお影さま。今はまた眠ってる。


「そーいや、あの岩、どこだっけ?」

 システーナが辺りを見回した。積み上げられた割れた岩の山を見つけて、近づく。

「シスがせっかく持ってきたのに壊れましたね」

 地面を自在に転がるくらい丸かったのに。

「みんなで遊べたからよかっただろー? ……んー?」

 システーナが黒い岩の傍にしゃがみ込んだ。

「どうしましたか?」

 ――む? 白い石があるのじゃ!

 システーナの手には、鶏の卵サイズのつややかな石がのってる。

「……あれ? 石じゃないですよ」

「これ、金属じゃねーの?」

 ――ぽ! 確かにジュスタが作る鉄と、様子が似ておるのじゃ!

 三人でのぞき込んだり、光にかざしてみたりする。卵サイズだけど、形はちょっぴりつぶれたピンポン玉って感じ。

「これ、なんですか? おくずさま」

 ――むむ! 見たことがないのじゃ! ボールに似ておるのじゃ!

「でも、案外重いぜ、これ」

 システーナが白い金属を投げ上げる。ぱしりと手に戻る音が、確かに重い。

「おお! 金属の感じがします!」

 手に取ると、滑らかな表面はひやりと冷たくて、大きさのわりにずしっとする。電池が入ってる機械みたい。

「ジュスタかニーノなら分かっかもなー」

「そうですね!」

 謎の金属をシステーナに返す。

 お屑さまはぴこんぴこんのペースを落として、体を右に左にかしげてる。

 ――ふうむ? 何やらどこかで見た気もするのじゃ! しかし、これが何かは分からぬ! しかし、どこかで見たのじゃ!

「まあ、お屑さまはいっぱいいっから、どっかでは見たんだろ」

 システーナは気楽に返して、謎の金属を服のポケットに突っ込んだ。



 湖岸の岩に朝ご飯を置くと、システーナと並んで顔を洗う。

 岩に座ると、おしりに熱が伝わってくる。

「岩がぽかぽかですよ」

「お日様が上のほうだかんな」

 システーナにならって上を向いた。こんなにゆっくり起きるのは、珍しい。

 おなかがぐーっと鳴った。

「さー食べよーぜー」

「いただきまーす」

 システーナと声をそろえて、トウモロコシ粉クレープにかぶりつく。

「おいしいですよ!」

「そーだなー」

 水で戻した干し野菜はごりごり固いのも多いけど、タレがうまくしみ込んでるのと木の実のごりごりでまぎれて分からない。

 なにより、広い空の下で食べるご飯はやっぱり気分がいいです。


「お、ペロだぜ」

 岩の前の水中を、ペロが歩いて通り過ぎていく。水の底だからゆがんで見えるけど、鉢はきらきらお日様の光をはねかえす。

「ペロも朝ごはんで、気分がいいです」

 にこにこして、二本目のトウモロコシ粉クレープにかぶりついた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 竜さま、子育てのコツをよく心得ておられる。いっぱい遊んでもらってお影さま、竜さまにとても懐きそうな予感。 お影さまが独り立ちするときはしんみりしそうです。その時までにお影さまにも付き人ができ…
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