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7.崖の追いかけっこ

「お骨さま!」

 駆け戻ろうとしたけど、ジュスタに抱えられてまた宙に浮く。

 直後に()ぎ払われたしっぽの風圧で、目をつむった。

 危ない。ずっとあそこにいたら、はるか彼方に飛んでってました。

 ジュスタが上手に岩棚の上に着地した。腕の一振りで、岩の先にかかった(かぎ)を回収する。

 あ、そっか。ジュスタがびゅん! で移動してたんだ。

「困った竜さまだ……、わ!」

 言葉に首をかしげる間もなく、岩棚に強風が吹きつける。

 ばさりと、重々しい羽ばたきが聞こえた。

 黒い翼竜が追いかけて来たんだ!


「あれれ、困った」

 ジュスタは苦笑いしてる。翼竜は、また顎を引く動き。

「わ! 飛んでても火が吐けますよ!」

 叫んでる間に、ジュスタに抱えられて移動してた。

 火を吐いた先に何もないことに気が付いて、翼竜は追ってくる。

「うひゃ!」

 断然(だんぜん)、速い!

 こっちは岩伝いに移動してるから、羽ばたき三つで先回りされた。

「大変です! 大変です!」

 空中で火を吐かれたら逃げ場がない。


 どきっとしたとき、急に上に引っ張られた。

「うはー!」

 足の下を火の息が駆け抜けていく。

 当たらなくても熱い。でも、一瞬で熱は遠ざかり、上に向かってる。

 ……どういうことかな?

 すっかり暗くなった視界に、金色っぽい光が見える。

 ジュスタが岩山の引っ掛かりに手をかけた。

 どうやら、ジュスタが光ってる。

「ジュスタ、金色?」

 光はみるみる消えていく。

 ……何の光だろう?

 ジュスタは忙しなく視線を走らせるけど、次の手がかりを見つける前に、翼竜が追ってきた。


 ヴおぉぉー――!


「うぐー! 怒ってます!!」

 ジュスタにつかまる手に力を込める。

 吐かれた炎のまぶしさに、目がくらんだ。



 (せま)った炎は体を焼かずに、引いた。

 炎が目に焼き付いて、周りがよく見えない。


 ――黒き竜さま、無礼をお詫びします。


 おわ!

 頭に響くこの声は。

「ニーノ!」

 頭に響いても冷たい声。絶対、聞き間違えないぞ。

 瞬きを繰り返して、なんとか姿を確認する。


 ニーノは肩越しにこっちを見た。

「貴様ら、いったい何をした」

 ……お? もしかして、怒られてる?

「エーヴェたち、何もしてないですよ!」

「ありがとうございます、ニーノさん」

 抗議の声を上げる間に、ジュスタは別の手がかりを見つけて近くの岩棚に降り立った。

 翼竜は炎に焼けてない私たちを見て、驚いてるみたい。

 ニーノとこっちを見比べてる。

 ――竜さまがたが理由もなく、他の生き物に火を吐く……?

 ……あ、そうか。ニーノは竜さま絶対正しい主義だった。 

 しかも、すいっと翼竜に近づく。

「うわっ! ニーノ、危ないです!」

 翼竜のほうが、距離を取った。

 ――お初にお目にかかります。黒き竜さま。

「だめですよ! その竜はお骨さまにも火を吐きましたよ!」

 少し驚いた顔をしたニーノに、翼竜が火を吹いた。

「ニーノ!」

 でも、ニーノはびくともしない。火が消えた後に、変わりなく宙に浮かんでる。

 少し眉をひそめて、こっちを見た。

「貴様らは戻れ」

「はい」

「ニーノは?」

 ジュスタに抱えられて、慌てて尋ねる。

「こちらの竜さまと話してみる」

 言葉の最後が聞こえるか聞こえないか。ジュスタがまた鉤で飛び出し、翼竜とニーノの姿は遠ざかっていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ニーノ‼️ ここぞってときのニーノはホントに頼もしい。ジュスタもありがとう。ジュスタの鉤使いアクション、カッコいいですね。これはエーヴェも鉤アクションをマスターしたくなるんじゃないかな。 金…
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