2.なぞの跡
「ふわー! 暑いですー!!」
熱心にうぉっほっほしてたために、気がついたら汗だくになってた。溶岩の近くなの忘れてた。
「本当だね、あついあつい」
汗をぬぐうジュスタに竜さまの鱗で風を送る。
「ありがとう、エーヴェ。俺にも貸して」
「はい」
手渡すとジュスタも扇いでくれる。
「うわー! りゅーさまの鱗の風ですよ!」
嬉しくなって、またうぉっほっほをする。
……暑い。
――わしも風がほしいのじゃ。
お骨さまもぐいっと首を寄せてくる。
「はい、いかがですか?」
ジュスタが一生懸命扇ぐけど、相手がお骨さまサイズだと、風になってるのかよくわからない。
扇いでるジュスタがだんだん汗びっしょりになってきた。
――よく分からぬ。きっと前歯がすずしいのじゃ。
お骨さまがぱかっと口を開けて羽を震わせた。
「よかった」
ジュスタはやっと手を止めて、汗をぬぐった。
ジュスタに鱗を返してもらって、改めて鱗の様子を眺める。……どこも溶けてない。
「やっぱり溶けてません! 偉大!」
頭の上に掲げて称えた。
「よし、じゃあ、探検を続けようか」
「はーい!」
満足して、竜さまの鱗を背負い、またお骨さまの背中に戻る。ペロはうぉっほっほ中、さすがに危なかったのか、背骨に移動してきてた。
――出発なのじゃ。
お骨さまは目的地の赤い割れ目に向けて、移動を始める。でも、溶岩はやっぱり熱いのか岩山沿いに歩いてる。
枯山水みたいに溶岩のでこぼこが模様になってるのは、流れ出た跡なのかな?
よくよく眺めてみると赤い裂け目を中心に模様が続いてる。
「あれ?」
流れてる中に、なんだか種類の違うくぼみが見える。他の模様は裂け目から流れたのが分かるけど、そのくぼみは全然関係ない。
「ジュスタ、あれ、何の跡ですか?」
「何かあるの?」
ジュスタに見つけた跡を指し示す。
「ああ、確かにくぼみがあるね。しかも一つじゃないみたいだ。――お骨さま」
ひょいひょい進んでたお骨さまが首をこちらに巡らせた。
「あのくぼみ、見えますか? あの近くに行ってもらえませんか?」
――どれのことなのじゃ?
お骨さまは頭をかたんと傾けつつ、溶岩のほうへぴょいぴょい踏み込んでいった。
「わ! お骨さま、大丈夫ですか?」
――あちちなのじゃ。あちち、あちち。
お骨さまは足をかわるがわる高く上げながら、くぼみのほうに近づいていく。
くぼみの近くまで来て、みんなでのぞき込んだ。何かがめり込んだのかな? 私が寝っ転がれそうなくらい大きい。
「向こうにもあるね」
同じくらいの大きさのくぼみがいくつか見える。
「何でしょうか?」
「うーん。お屑さまなら分かるかもしれないけど……」
お骨さまがぴょいぴょい跳ねるから、もともと距離も遠いのにさらによく見えない。
――そうなのじゃ。たくさんなら分かるのじゃ。
お骨さまは首を高く上げた。
――たくさん。たくさん。おるか?
あちちあちちと繰り返しながら、お骨さまはどこかに声をかける。
――わしはお屑さまなのじゃ! ちゃんと覚えるのじゃ!
「お! おくずさま!」
そうだった。竜さま同士もお話しできるもんね。
――たくさん、あちちにくぼみがあるのじゃ。なんのくぼみなのじゃ?
お骨さまの説明はさっぱり分からない。
――なんじゃと! お主、大地のかっかの吐き出した岩どもの上におるのかや? 痴れ者め! 熱いに決まっておるのじゃ!
なんと! 通じてる!
思わずジュスタを見ると、目を見張ってこくこく頷く。
――そうなのじゃ。あちちなのじゃ。
――ケンカ場の大地はかっかしておるのじゃ! 吐き出すのは熱く溶けた岩だけではないのじゃ! 岩の塊を吐き飛ばすこともあるのじゃ! 気を付けるのじゃ!
――かたまり?
お骨さまは頭をかたんっと揺らす。
――機嫌が悪くなると、赤く溶けた岩を噴き出すのじゃ! 岩を吐き飛ばすのじゃ! 深い深い灰の煙で空を覆いつくすのじゃ! 気を付けるのじゃ!
「とっても大変です!」
「怒らせないように気を付けないと」
――では、くぼみは吐き出された岩の跡なのじゃ。
火山から飛ばされた石……火山弾だっけ? その跡ってことかな?
お屑さまの説明を受けて、くぼみをもう一度のぞいてみる。
「岩はないですよ」
「そうだね」
お骨さまはぴょいぴょい次のくぼみに行った。
のぞき込む。
――岩はないのじゃ。
「ないですね」
また、ぴょいぴょい次のくぼみに行く。
のぞき込んだ。
「ありませんね」
――ないのじゃ。
むーこれは、火山弾じゃないのかも?
「うーん」
ジュスタは腕組みして考え込んでる。
お骨さまはぴょいぴょい進んで、また次のくぼみをのぞいた。
――ないのじゃ!
「あの……お骨さま」
ジュスタが腕組みを解く。
「このくぼみ、ある程度同じ間隔で続いてる気がするんですよね」
通り過ぎたくぼみを振り返ってみる。
「本当ですね」
「もしかして、これ、何かの通った跡じゃありませんか?」
――おお!
お骨さまがぴょんっと跳ね上がった。
「足跡!」
私も思わず飛び上がってジュスタを見た。
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