17.探検に出発
食事を終えて、食器の片付けをする。ジュスタは探検の準備で部屋に戻った。
「ニーノは何をしてますか?」
皿を台所に運ぶと、ニーノが片付けのスペースを空けてくれる。手許には黒い海藻みたいなのが入ったボウルがあった。
「これも昨日見つけた。湖の浅い場所に生えていた」
「ほー!」
じゃあ、やっぱり水草なんだ。
ニーノは黒いのを水に浸して、砂つぶやゴミを取って、丁寧に伸ばす。
「……食べますか?」
「食べられるようなら、食べる」
「お? ニーノ、これが何か知りませんか?」
「知らん。初めてだ」
「おー!」
知らない物に出会って食べようと工夫する、とっても人間です!
「エーヴェ。貴様は早く片付けを済ませて、ジュスタと出発しろ」
青白磁の目が鋭く冷たくなったので、慌てて食器を片付けた。
「ジュースーター! 準備できましたか?」
自分も準備を整えて、ジュスタの部屋をのぞき込んだ。
ジュスタの部屋は船の二層目。外へ出る扉がある層だ。声が聞こえたのか、枯れ草をもしゃもしゃしてたテーマイがこっちを見た。
ジュスタは、道具をつけた帯を体にぎゅっと巻きつける。
「――はい。お待たせ」
「行きましょう!」
私もお昼ご飯が入ったリュックを背負い直した。
扉に向かっていると、上の階段からペロが降りてきた。体が大きいから、滑り台みたいにスムーズに下る。
「ペロ! ペロも行きますか?」
さささっと扉へ走った。体が大きくなっても、スピードはあまり変わらない。
「待ってー!」
ペロに追いついて、一緒に外に出た。
「む、やっぱりちょっと温泉の匂いです」
湖から少し離れてても、硫黄くさいにおいがする。
「竜さま、どこかで硫黄を食べてご満悦かもね」
ジュスタが空を見上げてにっこりした。いつの間にか、ロープも担いでる。
「りゅーさま、硫黄が大好きです! きっととっても喜んでます! いーなー!」
硫化ガスが出なかったら、一緒にいて、大満足な竜さまを見たい。
「あれ? シス、大丈夫かな?」
「きっと大丈夫。お屑さまも一緒だしね」
確かに。お屑さまが絶対、ぴこんぴこん注意してくれる。
「じゃあ俺たちも行こう。何があるかな?」
「何があるかなー?」
ジュスタと顔を見合わせて、意気揚々と出発した。
湖の周りは白っぽいけど、湖を背にすると黒っぽい岩山が広がってる。地面は岩でごつごつしてる。枯れたイネ科っぽい草が、岩の隙間に生えてる。邸の周りの森に比べたら、食べ物が少ない感じ。
船は黒っぽい岩の上で、支柱を出して立ってる。船だから、湖が深かったら湖に停泊できたけど。
「あ、お骨さま! まだ走ってます」
「うん。お元気だ」
お骨さまがまだまだ湖を走り回ってる。真ん中のほうにも行ってるから、ずっと遠くまで浅いんだ。
眺めてたら、船の扉から地面まで渡された板がことこと鳴った。
「あ、テーマイ!」
テーマイが周りをときどき確認しながら降りてくる。
「テーマイも一緒に行きますか?」
岩まで降りると、テーマイは地面のにおいをかぎはじめる。一緒に来る気はなさそうだけど、周りに興味があるみたい。
「テーマイのことはニーノさんにお願いして、俺たちは山のほうに行ってみようか?」
「はい」
ペロは向こうの地面で、もぞもぞ動いてる。近くに行ったら、さっそく体の中に黒い小石を取り込んでる。いろんな物が初めてだから、ペロもきっと忙しい。
すっと周りが暗くなって、空を見上げた。
「あ! お骨さま!」
お骨さまが首をかしげて、こっちを見下ろしてる。駆け回って跳ね上げた水が、骨からぽたぽた、きらきら落ちてくる。
――エーヴェと、ジュスタと、水玉なのじゃ。どこか行くのか?
「はい! 何か良い物がないか探しに行きます」
「お骨さまも一緒にいらっしゃいますか?」
ジュスタがにこにこ提案する。
「おー! 行きたい! 行きましょう!」
――おー! 行くのじゃ、行くのじゃ。
ぴょんぴょんしたら、お骨さまもぴょんぴょんしてくれた。
――では、乗せて行こう。みんなで行くのじゃ。
ペロはいつの間にか、足から腰骨に登ってる。ガラスの鉢にきらきら光が反射してるから、なんだか嬉しそう。
「エーヴェ、行こうか?」
ジュスタがしゃがんだので、えいやっと跳びつく。ジュスタがおんぶのまま、お骨さまの背中の上に運んでくれた。
ントゥが頭から駆け下りてきたけど、私たちの顔を見ると、駆け戻っていった。
……うん。私たちよりお骨さまの頭の上が大事だよね。
きょきょきょきょきょ
お骨さまが羽を揺らした。
――行くのじゃー。
「行くのじゃー!」
お骨さまの背中から見る新しい場所。楽しみです!
評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。
是非、よろしくお願いします。