1.相談!
遅くなってしまいました~~~! 申し訳ありません!
マレンポーが船にやって来たのは二日後のことで、ニーノに相談することがあるらしい。
「竜さんにいろいろお聞きして、わたしたちもいろいろ相談しました」
「カウとペードは今日は来ませんか?」
――二人、群れの見張り。
マレンポーの隣で話を聞くのはストスト。並んでる様子を見ると、地馳さまの座ではアミョーと人が、本当に対等なのが分かる。
「ニーノさんにはナームを預かってもらってますけど、出発までに治りそうですか?」
「そのことだが、ナームを海巡さまのところへ連れて行きたい」
「おお?」
私の声に視線を下げて、ニーノはその場にあぐらをかいた。
マレンポーも羽布をふわっとさせて、草の上に座る。
「話が長くなります!」
――長い? 立つぞ!
私はニーノの隣に腰を下ろしたけど、ストストは羽を振るった後、しずしず周りを歩き出す。
話を聞く体勢もいろいろです。
「ナームはしばらくアミョーから離れるべきだ」
「なんと!」
――なにゆえ!
ストストの羽が一気に膨らんで、顔の後ろで扇が広がったみたい。
「以前も言った通り、ナームの症状は皮膚炎だ。ナームはアミョーに乗る時間が長く、エーヴェがテーマイに乗るときに使った鞍のような物も使っていない。独特な排泄器具の形状もある。結果、擦れ合う箇所が傷つき、たまたまそこから細菌に感染し、炎症を起こした。そして、長く放置した。症状がこじれて、アミョーに過剰に反応する」
「過剰反応!」
――あれるぎー!
「アレルギー?」
「アミョーの傍に行ったり触ったりすると、発熱や呼吸に関係する症状が出る」
「くしゃみですか?」
「厳重な咳の類いだ」
急にマレンポーが立ち上がった。ストストも大きく羽を広げる。
みゃうみゃうみゃう!
――思い当たるぞ! ナーム、ぼうっとなってアミョーから落ちたぞ!
「アレルギー! ナームはアミョーが大好きなのに、近寄れないってことですか?」
――ストストもナームが大好きぞ!
ストストが足で猛烈に地面をかいて、砂煙で一気に何も見えなくなった。
……あ、とげとげ幾何学模様が宙に浮かんでます。
マレンポーの特性は、便利なのかよく分からない。
「治りますか?」
「なんとも。アミョーから離れ、休まれば、改善する可能性は高い。しかし、そもそも共に生活して問題ない期間が長い。アミョーだけが要因ではない」
「何か、悪いものがあるんですか?」
――アミョーは良きぞ! 良き!
砂煙の中から勢いこんで突っかかってきたマレンポーとストストに、ニーノは軽く眉根を寄せる。
「お屑さまは邪気だとおっしゃる」
「お、邪気!」
口を開けっぱなしにしたら入るやつですよ!
ストストが憤慨して、また土埃が舞い上がる。
――邪気! 悪しきぞ!
「……地馳さまのご依頼で、海巡さまのところへうかがうことになった。海巡さまにお会いしたなら、報告のため再び地馳さまのところに立ち寄る。ならば、その間、ナームを連れ出せば」
「ナームの症状が改善する可能性があるということですねー!」
「……ああ」
きらきらするマレンポーに、ニーノは渋い顔で頷く。
ニーノは、はっきりしないことは話したくないですからね。
「――海巡さまの座には、医者がいる」
「お?」
もうもうと立ちこめる砂煙の中で、ニーノがぽつんとこぼした。
「医者ってニーノみたいな医者ですか?」
「私よりも長い間、医術を続けている人間だ」
――そんな噂は聞かないぞ! 怪我や病を治すのはニーノぞ。
羽を膨らませては萎ませるのを繰り返しながら、ストストがぶっきらぼうに言い放つ。
「その医者は人間の病やケガしか診ないそうだ。私はお屑さまからその人間のことを聞き、竜さまにお願いして一度、話したことがある」
「話すとはどうやって?」
「お! エーヴェ、分かります! おどろさまのときと同じです!」
跳び上がってアピールすると、ニーノが頷く。邸とおどろさまの座は離れてたけど、竜さまの力でおしゃべりはできた。竜さまと竜さまはつながってる。弱くなったけど、まどろみどきの力です!
「海巡さまがどこにいるか分からなくてもお話しできますか?」
「昔のことだ。かろうじてお屑さまのご助力で話せた」
「おお~!」
海巡さまの座には、ずっと昔にニーノが話した医者がいる。
医者がいるなら、海巡さまも元気かも!
「つまり……ニーノさんの意図は」
「ナームを診てもらいますか!」
「シューマのこともある」
「きっと知らない技術もたくさんありますねー。なるほど、そうかー」
マレンポーがうんうん一人で頷いてるのを見て、ストストが羽をぱたぱたした。
――ナーム、元気になるか?
ニーノはまた眉根を寄せた。
「可能性はある」
評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。
是非、よろしくお願いします。




