17.暴力!
怯えたシューマから、システーナが目にも留まらぬ早業で、お屑さまを取った。
「ふーっ!」
「しひゃー!」
シューマが唸るけど、システーナが聞いたこともない音を立てる。シューマは残ったお屑さまを抱え込んで丸くなった。
シス、強いです。
大喜びのお屑さまが腕輪にかぎ爪で引っかかったのを確認して、システーナがこっちを見た。
「行こーぜ、おちび」
――行くのじゃ! 童の食べ物を得るのじゃ!
さっさと歩き出したシステーナを追いかけようとして、後ろを見る。幅広おくずさまが巻き付いて、シューマを励ましてる。
「シス、急におくずさまを取るのはよくないですよ」
ニーノの部屋の扉を閉めて、システーナの隣に並ぶ。
「よくねーの?」
「シスは力が強いですからね! 暴力ですよ!」
――シスは良いのじゃ! わしは外に行くのじゃ!
「おお……」
お屑さまがいいなら、システーナは悪くないです。
「じゃあ、行きますよ!」
「おくずさま、この辺でおちびの食べ物って何があんだ?」
お屑さまがぴこんっと伸び上がった。
――童は何を食べるのじゃ? 虫は小さいものばかりじゃ! トカゲとヘビなら大きいものがおるのじゃ! 草の実かや? 草の実ならば痛いのがあるのじゃ!
「痛いの?」
「いてーのに食べれんの?」
――痴れ者め! 美味ゆえ痛くなるのじゃ! 皆が食べねば、痛くすることはないのじゃ!
「おおー」
「意味分かんねーから、それに行こうぜ」
「そうします!」
虫とかトカゲとかヘビより、食べてみたいです。
船の外に出て、向こうがまるで朝焼けみたいに染まってるのに気づいた。空全部じゃなくて、薄い絹をかけたみたいに、一部だけ空気に色がついてる。
「シス、あれ、何ですか?」
システーナが手をかざす。
「あー、ありゃあ、アミョーたちだぜ」
――マレンポーの特性なのじゃ!
古老さまのところに行くときあんな色が着いてたか思い出そうとしたけど、思い出せない。きっと初めて見る。
「シス、食べ物を取る前に、アミョーのヒナが見たいです! きっと大きくなりました!」
ぽわぽわの羽が生えたくちばしおばけだったけど、どうなってるか興味津々。
「じゃあ、行ってみっか」
――行ってみるのじゃ!
お屑さまがぴこんぴこんする。
なだらかな斜面を駆け下って、徐々に賑やかになるみゃうみゃうに耳を澄ます。遠くのアミョーたちの群れが詳しく見えてきたところで、数羽のアミョーがこっちに向けて走って来た。
――シス! 童! 止まるのじゃ! アミョーの群れに近づきすぎなのじゃ!
「おっと」
「はい!」
二人とも止まった頃には、アミョーたちに取り囲まれた。
みゃうみゃう!
羽を膨らませたアミョーが、頭を高くして見下ろしてる。
「悪りぃ悪りぃ」
――そうじゃ! シスと童は考えなしに走るのが好きなのじゃ! ヒナが見たいのじゃ! わしもヒナが見たいのじゃ!
お屑さまがフォロー(?)してくれる。
アミョーたちは頭を傾けたり、首を伸ばしたりで、お屑さまを眺めてる。
みゃう!
――うむ! わしがよく言い聞かせるのじゃ!
みゃうみゃうみゃう
三羽だけ残して、アミョーたちはどこかに走り去る。
――このアミョーたちが案内するのじゃ! 歩いて行くのじゃ!
「おくずさま、すごいですよ」
――当然なのじゃ! わしは誰よりも物を知っておるのじゃ!
アミョーたちの後を追って、巣の近くまで行く。前にカウたちと一緒にヒナを見に来たときは、もっと近くまで行ってもアミョーに取り巻かれなかったから、やっぱりマレンポーたちが一緒のときとそうじゃないときは扱いが違う。アミョーたちが足を止めて、くるるるると喉を鳴らした。
これ以上はダメってことみたい。
首を伸ばして眺めると、アミョーの群れが全体にふわっと丸みを帯びてる。大きなアミョーの合間に、その半分くらいの高さの茶色と白のまだらがいた。まだらはふわふわしてる。白も茶色も新品の色。ヒナだ。
「でかくなったなー!」
「おおお、足もふわふわです!」
大人のアミョーはダチョウと同じで長い足に羽毛は生えてないけど、ヒナたちは全身ふわふわしてる。途中で曲がったエビフライみたい。座ってるヒナは、ほわほわの毛なのになぜか、茶色と白の花崗岩そっくり。
――ぽはっ! ふくらふくらと膨張してどこかに飛んで行きそうなのじゃ!
「飛んでくのはお屑さまだろ」
「ぶふっ!」
噴き出しちゃう。
いつでもどこかに飛んで行ける海藻みたいなお屑さまが、ふわふわのヒナを笑ってます!
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