13.えーっ
1時間くらい遅れました~~
地馳さまはどしんどしん円を描いて回る。
お骨さまと竜さまが、地馳さまの姿を追って首をめぐらせる。最後に首が回らなくなって、竜さまは逆側からさっと首を巡らせたけど、お骨さまは首を後ろに倒してそのまま三六〇度動かす。
たぶん、あれだと見えてないと思うけど、お骨さまはもともとどうやって見えてるのか分からないから、謎が謎を呼びます。
――地馳、少しゆっくり歩くのじゃ。目が回るのじゃ。
お骨さまがだんだん地馳さまのリズムと関係なく首を回し始める。
――地馳は止まらぬのじゃ。山も骨も、見ずともよいのじゃ。
――うむ。わし、走るぞ。
地馳さまは立ち止まらない。そう思うと、地馳さまとの相談は落ち着かないかも。
地馳さまの座のみんなは、いつもどうやってるんだろう。
……背中に乗るのかな?
――地馳よ、海巡の所在は分かるか。
相変わらず、地馳さまのほうに顔を向けたまま竜さまが聞く。
――海巡は海におるぞ。
――海か。
――おお、海は水がたくさんあるのじゃ。
――海は広い。所在は分かるか。
――ぬう。ぬう……? 海ぞ。
――海じゃ。
――海か。
三人の竜さまの上にはてなが吹き荒れてる。
この世界に海がある話は聞いてたけど、どこにあるのか、どのくらい広いのかは分からない。竜さまは大きいけど、広いっていうくらいだからきっと大海なんだな。
「お屑さま、知ってんじゃねーの?」
システーナに言われて、細お屑さまがぴこんっと伸びる。
――うむ、知っておるのじゃ。
「おお、さすがおくずさま!」
――おお、友よ、たくさんが知っておるのじゃ。たくさんはたくさんなのじゃ。
――うむ。わしはたくさんゆえ、知っておるのじゃ。
――屑よ、案内できるか。
渦を巻きそうになった会話を、竜さまが止める。細お屑さまはゆわんゆわんと大きめにたわんだ。
お骨さまがかぱっと口を開けた。竜さまも目をぱちぱちする。
ヴァアアアア!
――海巡ぞ!
「うわぁ!」
地馳さまの吠え声と声が被さって聞こえてびっくりした。
……頭の声と音の声、一緒に出すの、初めて見ましたよ。
「何ですか?」
――屑が海巡の姿を見せたのである。
――本当に水がたくさんなのじゃ。泥の座より水が多いのじゃ。
……テレパシーかな? 人間には見えないのが残念です。
――うむ。しかし、ちょっとばかり古いのじゃ。海巡は泳ぐのじゃ。同じ場所にいるのか分からんのじゃ。
「ああ、それですぐに言わなかったんですね」
ジュスタにお屑さまはぴこんぴこんする。
――そうなのじゃ。海は流れがあるゆえ、知っている場所が偏るのじゃ。生き物から伝え聞くところでは、最近では、海巡は動いておらんのじゃ。
「最近?」
――いつからか分からんのじゃ。
――ふむ。では、屑が示した場所に行くしかあるまい。
――山よ、屑よ、頼むぞ。海巡、声がないぞ。
地馳さまはようやく納得したみたい。また、遠くを歩くモードに戻っていく。
アミョーから飛んでたイライラ三角が、だんだん薄くなった。砂煙も徐々に消えて、みんな落ち着いてきたんだな。
「ストスト、竜さまを追いかけたい」
――よいぞ!
マレンポーがストストに声をかけて背中に乗ると、あっという間に駆け出した。カウとペードも驚いて、走り出す。地馳さまの座のみんなは足が速いけど、やっぱりアミョーが速い。
見送ってから、竜さまに向き直る。
「エーヴェたち、海巡さまに会いに行きますか!」
――うむ。そうなった。地馳には影を頼むゆえ、地馳の頼みも聞きたい。
「おお、りゅーさま、偉大!」
竜さまの応えにニーノが背筋を伸ばす。
「私たちもご一緒してよろしいですか?」
――む?
「お?」
どういう意味かな?
竜さまのたてがみがふわっと広がって光る。
――そうか。一人で行くか。
「えー!」
「えー!」
「ええっ」
ニーノ以外三人で声が重なった。
仰ぎ見ると、ニーノも眉間に深々としわを刻んでる。
……なんですか! ニーノもいやですよ!
「エーヴェたち、付き人ですよ!」
「そうだぜー!」
「私たちがお役に立つことはあります。しかし、出発までに少し時間がかかり、海巡さまのことを考えると……」
なんと! ニーノはシンリョエンボー。
でも、いやですね!
――来るのじゃ。竜の傍には人がおる。人のことは人が分かるであろう。
「りゅーさま!」
――うむ! ニーノたちが一緒ならば、わしも一緒に行けるのじゃ。そもそも人の時間など、竜には大して関係ないのじゃ。
「おくずさま!」
ばっと、もう一回ニーノの顔を見る。
そのままニーノが頷いたから、みんなで胸をなで下ろした。
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