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10.たき火を囲んで

大変遅くなりましたが、今週分でございます……

 薬を飲んで、カップを渡すと、包みを渡された。


「外で皆が待っている。持って行け」

「ご飯ですね!」

「そうだ」


 大喜びで包みを抱えて、船の外に走った。

 地面に立ってきょろきょろすると、すぐに火を焚いてるシステーナを発見! システーナも手招きしてる。もう他のみんなも火の周りにたどり着いてた。

 マレンポー、ペード、カウ、ストストとあれはポッポキだ。シューマとナームは見えないから、ニーノの部屋で休んでるのかもしれない。


「はい、持って来ましたよ!」

「腹ぺこなのに働いて、おちびはすげーな」


 包みごと掲げられて、頭をわしゃわしゃされた。

 視界が高くなった拍子に、走ってくるジュスタが目に入る。結局、ストストには乗らなかったみたい。


 ――(わつぱ)! よく帰ったのじゃ!


 聞き慣れた声に振り返る。

 ニーノが腕にお屑さまの腕輪をつけてやって来た。


「おくずさま! 久しぶりです!」

 ――久しくなどないのじゃ! たったの四日なのじゃ!


 確かにお屑さまの言う通り、とっても長く船から離れてた気分だけど、今日で四日目の夜だ。

 お腹がぐうぐう鳴って、おしゃべりはいったんそこまで。

 包みを広げて、待ちに待ったご飯。ニーノはスープが入った鍋を火の傍に置く。潰した豆と干し野菜の入ったスープ。あっさり塩味でお腹に熱が染み渡る。いつものトウモロコシパンをひたして食べると、長いこと空っぽだったお腹にも優しい食事。燃える火に照らされると、皆の顔も料理も違って見えて、わくわくする。

 火の粉が見分けられないくらい、星がたくさん散る空を眺める。

 アミョーはストスト以外、帰ってしまった。

 人間の食事に興味がないのは当然です。


「すげーよなー。お前ら、いっつもこんな美味いの食べてんの?」


 幸せそうにスープを味わってるペードの横で、カウが呆れ声で叫ぶ。

 前も一緒に食べたけど、やっぱり(やしき)の周りのほうがいろんな食べ物があるから、草原暮らしのマレンポーたちより食事は豊かなのかも。


「アミョーの卵もとても特別でしたよ!」

 ――アミョー、特別。立派ぞ!


 ストストが誇らしげに頭を持ち上げる。


「おいしい食事を一緒にいただいて、とても嬉しいですね」

「マレンポーたちは招待されましたか?」

「そりゃ、おちびが無事に帰ってきたかんな、ニーノが」

「おお、ニーノが!」


 これだけたくさんのご飯を用意するのは大変です。


「ニーノ、ありがとうございます!」


 ニーノは冷たい目で頷く。


「ジュスタやシステーナも手伝っている」

「おお、ジュスタ、シス、ありがとうございます!」


 笑みが()けた蜂蜜色の目は、火の赤で赤銅色に見える。


「それで、古老の竜さまはどんな竜さまだった?」

「古老さま! 偉大です! とっても大きいですよ!」

 ――古老は偉大なのじゃ! 大きいのじゃ!


 お屑さまが激しくぴこんぴこんした。


「古老さまはとっても大きいですから、エーヴェと会うためにエーヴェに合わせますよ。だから、最初は小さいツバメみたいでした。尾っぽが二つに分かれてて、その先に目がついてました。だから、四つも目がありますよ!」

 ――なんと! 童が見た古老は古老ではないのじゃ! 古老はそれはそれは立派な竜なのじゃ! 大きくて尻尾の先が見えぬのじゃ!

「へー……、お屑さまとも見え方が違うんだな」


 システーナが感心してる。

 ……もしかすると、お屑さまもそれぞれ、古老の見え方が違うのかな?


「特性のことは分かったか?」


 ニーノの声に背筋が伸びる。


「はい! エーヴェ、やりました! まどろみどきからりゅーさまのところに帰ってきます!」

 ――ぽはっ! よくやったのじゃ!


 みんなに盛大に誉められて、さっきのストストみたいに胸を反らす。

 ニーノは無言で、小さな包みを差し出した。首をかしげて、受け取る。


「少しだ」

「……なんと!」


 ぴこんと伸び上がって中を見たお屑さまも、興奮して激しくぴこんぴこんする。


 ――はじけ菓子なのじゃ! わしの軽やかなボールなのじゃ!


 そういえば、出発前にはじけ菓子の約束をしてた。

 はじけ菓子の歌をお屑さまと歌い、踊りながら、焚き火ではじけ菓子を作る。

 もともとが一握り。(はじ)けて、両手ひとすくい。

 ニーノ特製の調味料もかけてもらった。システーナとジュスタも、にこにこしてる。


「お祝いです! お祝いです!」


 全員に配る。でも、ストストの前に来て、ちょっと考えた。


「ストストは食べますか?」

 ――オイワイとは? 知らんぞ!


 ニーノを振り向く。


「……毒ではない」


 先に配ったカウとペードは、珍しい味にのけぞってる。マレンポーの周りには、きらきらがあふれてた。


「ストスト、口開けますよ」

 ――ふむ? オイワイは食べ物ぞ!


 ストストが開けた(くちばし)に、はじけ菓子を放り込む。

 一瞬、ぶわっと羽を逆立てて、ストストははじけ菓子を喉に落とし込んだ。


「ストスト、どうですか?」

 ――火ぞ! 小さな火を呑んだぞ! おれ、火喰いアミョーぞ!


 ばっと羽を広げて、ストストは踊り出す。

 元気な様子に安心して、一緒に踊った。

ちょっと週1更新だと、古老さまへの旅があまりにも時間かかかりすぎて四日しか経ってないのが信じられません。


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是非、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
4日しかたってないことにびっくりです。 体感、1ヶ月くらい旅してた気がする。それだけ濃密で盛り沢山の時間だったということですね。楽しく、またとない旅でした。 ずっとエーヴェの空腹にやきもきしてましたが…
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