表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/166

9.お決まりの

一日更新がずれました!

 元気がわいたと同時に、お腹が鳴った。

 ニーノがくれた謎の甘いものの力も、出迎えの間に使い果たしたみたい。


「飯もあんぞー!」

「おおー!」


 システーナの笑顔に期待がふくらむ。

 古老さまに会う前の食事も、干した木の実と水だったから、トウモロコシパンを思い出しただけで口の中がよだれでいっぱい。


「お、ペロも聞きつけてきたぜ」


 カウがいつも持ってる棒の先でちょっかいかけようとしたけど、ペロは俊敏によけて、ジュスタとシステーナの足下を一周し、ツボに入った。

 ……ニーノがいなくなってほっとしたのかな?

 ペードが首を傾ける。


「どういうこと?」

「運んでほしーってこったろ」

「はーん、なるほど」


 システーナがペロ入りツボを小脇に抱え、竜さまのほうへ進み出る。竜さまはお骨さまと遊ぶお影さまを眺めて、たてがみをゆらゆらさせてる。遊ぼうかどうしようか考えてるみたい。


 ――む? シス、ペロはツボに入ったか。

「そーそー、連れて行きます! 竜さま、また明日!」

「りゅーさま、おやすみなさーい!」


 システーナと並んであいさつすると、竜さまは金色の目を細める。


 ――うむ。ゆっくり休むとよい。


 ジュスタやマレンポーたちも、手を振ってあいさつした。


「ほれ、おちび」


 屈んで背中を向けられて、しがみつく。システーナはストストに声を投げた。


「あたし走っから、ジュスタでも乗っけてけよ」

「え、俺ですか?」

「おお、そうです! ジュスタは走って来ましたよ」

 ――シス、競争ぞ!


 ()()(けん)(こう)に羽を開いたストストに構わず、お先、とシステーナは走り出す。


 ――シス、先行くぞ! ジュスタ、急ぐぞ!

「ええー? 走るから、ストスト先に行っていいよ」

「ジュスタはアミョーが怖いんだよ」


 からかいみたいなペードの言葉が聞こえた。

 そこからはもう耳元をびゅうびゅう風が過ぎていく。システーナが(ちよう)(やく)すると、一気に船が見えてきた。

 急にシステーナが笑う。


「あっははは! おちびの腹が鳴っから、あたしの背中が腹減ってるみてー」

「シスなら背中にお腹があってもおかしくないですよ!」


 背中とお腹で二倍お腹がすくかもしれない。

 ……あれ? どういうことだっけ?


 首をかしげる間に船の前まで来て、システーナがぽーんと()ねた。



 甲板に着地するやいなや、システーナの背中から飛び降りる。


「エーヴェ、帰りましたー!」


 細お屑さまもテーマイもペロも一緒にいたから寂しくはなかったけど、大きな船に入るときは幸せ気分と安心感に包まれた。


「止まれ」

「はい!」


 冷たい声で、足が止まる。

 甲板から船に降りる階段の下で、ニーノが待ってた。いつもはハーネスを着けるスペースに、水を張った小さな桶と着替えが用意されてる。


「お! エーヴェ、分かりましたよ」

「ここは水がない。薬湯代わりだ。体を()いて、着替えろ」

「はい」

「終わったら、食堂へ来い」

「はい」


 (やしき)にいるときと同じ。ニーノは準備万端です。


「マレンポーたちと一緒に外で食べっから、あたしは先行ってんぜ」


 甲板からのぞき込んだシステーナが、手をひらひらして、行ってしまった。と思ったら、すぐ戻ってくる。


「忘れた」


 ごとっとペロのツボが階段の上に置かれる。

 システーナは今度こそいなくなった。

 ナイフ付きのベルトを置いて、服を脱いで、布を水に(ひた)して体をふいて、頭をふいて、服を着替える。お腹は空いてるけど、清潔になると少し力が出る。

 ニーノが去ったのを確信したのか、ペロが階段を下りてきた。

 ツボだとやっぱりちょっとバランスが悪いみたい。よろよろしてる。


「ペロ、一緒に食堂に行きますよ! きっと水もあります」


 脱いだ服や桶を放って、食堂へ向かう。さいわいペロは、桶の残り水に気づかずについて来た。


「ニーノ! 来ました!」

「座って待て」


 席に着こうとして、やっぱりやめる。キッチンの入口まで行って、のぞきこんだ。


「エーヴェ、ペロに水をあげたいですよ」


 顔色一つ変えずに、ニーノは大きな器に水を注ぐ。受け取って食堂を振り向くと、ペロは普段寝るスペースに移動してる。


「ペロはかしこいです」


 器の水を壁際のツボに注ぐ。

 久しぶりにたっぷり水をかけられて、大満足。ぐんぐん吸収してるから、ペロもきっと大満足。

 ……これで、お影さまの手の中で縮んだ分は戻ったかも。


「エーヴェ」


 ニーノの声。ぴょんぴょん跳ねて近づき、器を返す。

 すると、カップを渡された。

 予想通り。もう鼻が慣れちゃったけど、甲板から入っただけでにおいがしてた。


「……苦いですか?」

「苦い。飲め」

「むー」


 どこかから帰ったら、ニーノの薬。

 お風呂ができないから、飲むしかありません。

船に戻ると途端にニーノ率が増えますね。



評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。

是非、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ニーノがいる安心感と彼の存在感よ。帰ってきたなぁってしみじみ。久々のニーノにシャキッと背筋がのびた気分で今話を読んでます。 シスはいつも通りのカラッとした明るさだけどちょっとだけエーヴェを甘やかしてく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ