13.心は花畑
少し遅れました。なんとか書けた!
古老さまの言葉にちょっと考える。
「窓ですか」
古老さまが目を細めてる。厳かな雰囲気だけど、燕さまだからちょっと可愛い。
――貴様は違う層を見る。窓は他者の世界を見せる道具だ。他の層への入口にも、出口にもなる。
「扉は違いますか?」
出入口と言えば、扉です。
――扉はたくさんの法則がある。難しい。
窓と扉を、頭に思い浮かべる。確かに扉のほうが大きくて、窓より作るのに手間取るかも。窓は壁に穴を開けるだけだもんね。
……でも、いったいどこに窓をつけるのかな?
――層の壁に窓をつける。
「わ! 古老さま、エーヴェが考えてること分かりますよ」
――ここは貴様の心と呼んでもよい場所だ。
びっくりした。
「エーヴェ、心がこんなに花畑!」
――私の影響もある。
「むむ……」
じゃあ、古老さまの心が花畑?
古老さまが肩から飛び立って、すいーっと周囲を滑空する。
髪の毛に軽い感触が降りた。頭に移動したのかな。
――窓は壁に穴を開ける。貴様も同じ事をすればいい。見ろ。
頭の上の古老さまが気になって、視線を上げるけど、古老さまも一緒に動くから視界に入らない。ぱたぱたと羽ばたきの風が頭に当たった。
――エーヴェ、よく見ろ。
「お? はい!」
燕さまを見てる場合じゃなかった。
でも、どこを見ればいいか分からない。とりあえず目の前の景色を見てみる。
ほかほかと陽脚が降り注いで、黄色の花が風に揺れてる。黄色いふかふかのじゅうたんみたいで、ぽーんと飛び込みたい。
いい気分でゆらゆらしてると、黄色い花が動いてる気がする。
「……お?」
体を止めても、黄色い花は動いてる。草原中に散らばってたのが、何かの形を取ろうとしてる。集まると黄色の花は黄色い光になって輝く。
気づいたときには、長方形を描く黄色の光が宙に浮かんでた。
「なんと?」
近づいてみる。黄色い窓枠が光りながら空中を漂ってる。
「窓ですか?」
――窓だ。
くるりと周囲を回ってみる。ずっと長方形に見えるわけじゃなくて、台形になって、直線になって、台形になって……。つまり、フラフープみたいに真ん中がない、光る窓枠が浮いてる。
「ほわー! 不思議ですね」
――今は逆にいる。元の位置に戻れ。
「はい!」
最初の位置に戻って見る。首をかしげた。
「ツバメさま」
うっかり呼んでしまって、慌てて言葉をかき消す。
「古老さま、窓の向こうの景色は他の世界ですか」
窓枠で切り取られた世界も、黄色の花畑が広がってる。
――今、つなげた。
「お」
さっそく光の窓をのぞき込んだ。
窓の中の花畑は、すこし暗い。
……曇ったのかな?
向こうの空を見上げようとして、気がついた。
「おぉ!」
天気は晴れ。暗かったのは、大きな動物の陰の中だったから。
ディーかな? でも、とてもとても大きい。
毛皮が緑で風になびいて、まるで丘みたい。
頭の角のある位置には、巨木が生えてた。右は前の世界で見たスズカケに似てる。大きな葉っぱを茂らせて、いくつも丸い実が下がってる。左はガジュマルだっけ? 枝からたくさんの根っこが垂れて、大きなディーの肩までかかる。首筋に、たてがみみたいに木が生い茂ってた。角に比べると小さい木々だけど、林くらいある。
そのとき、肩で何かが動いてるのに気がついた。
「あ! テーマイです!」
ぴょんぴょんとテーマイが大きなディーを上っていく。テーマイと比べると、ディーがどれだけ大きいか分かって、ちょっと背中が寒くなった。
そこで、はっとした。
ばっと頭を上向ける。もちろん、燕さまは見えない。
「あれも古老さまですね!」
――そうだ。
「ふわー!」
テーマイが見る古老さまは、とっても大きなディーです!
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