9.別れは惜しめない
どうも月曜更新で安定になってます……。本当は土日で更新したいのですが、徐々に整えます。
細お屑さまに案内されて、逃げ出した場所に戻る。
ロデットの気配はないと太鼓判を押してもらって、三人でそろそろ近づいた。
「なんと……!」
きちんとまとめてた荷物がずたずたにされて、中身がそこら中に散らばってた。ペロはさっそく走り出して、布の切れ端や何かの欠片を取り込んでる。
「――食べ物がないですよ」
ものをひっくり返した結果、干した木の実がかろうじて少し残ってた。鍋や器のいくつかは大丈夫だったけど、羽布が裂けて細かな羽毛が散らばってるのが、鳥の襲われた後みたい。
「なんと……」
食べ物のにおいがするところを重点的に探ってるから、リュックサックや袋がほとんど引き裂かれたり、踏まれたりしている。
拾い上げて、目の前で広げて見た。
「おお……」
初めてお骨さまに会ったときから使ってるリュック。
いったいどういう技術か分からないけど、ニーノがだんだん大きくしてくれて、今日まで使ってる。
擦り切れそうになったらあて布をして、ほつれを何度も縫う。大事に使う方法を教えてもらった。
ニーノもジュスタも物を大事にする。
システーナは分からないけど、持ってるものが全部ボロボロだから、きっと長く使ってる。
ここでは布も糸もとっても大事だ。
それがずたずたになってる。
ちょっと目の周りが熱くなったけど、むっとお腹に力を入れた。
「破れてるけど、きっと修理できますよ!」
――うむ。きっと修理できるのじゃ。
細お屑さまの同意で力を得る。
咬まれたり、踏まれて割れたりした道具から、修理できそうなものを選び出す。
修理できないものの山ができたけど、修理できそうなもの、修理しなくても使えるものも残った。
でも、問題は運び方。
道具類をまとめても、包む布がほとんど破れてる。
大きな布が二、三枚残ってるけど、背負うタイプはない。破れた布ばかりで、荷物を包んで腰にくくりつけるのが精いっぱい。
そんな小さな包みだから、修理できそうなもの全部を持っていくのは難しい。
「おくずさま。エーヴェ、持てませんけど、これ、なくしたくないですよ。帰りもここを通りますか?」
通るなら、地面に埋めたり木の上に置いたりすれば、持ち帰れるかもしれない。
「あとから、ニーノたちと取りに来られるかもしれません」
――ふむ……、ふーむ。
細お屑さまは疑問符になりながら、考え込む。
――この道はすでに古老への道なのじゃ。外の世界と同じに見えるが、入れるかどうかわからないのじゃ。ふむむ。ならば、今ならば入れるのかや? もしかすると、さようなのじゃ。
……何を言ってるか、よく分からない。
でも、実際目に見えてる世界より、実は不思議な体験をしてるのかもしれない。
――エーヴェよ。別れる覚悟はするのじゃ。うまくいくかは分からないのじゃ! 場所を知らせて、わしではない別のわしと付き人の誰かがここに来られるよう印てみるのじゃ。しかし、たどり着けるか分からないのじゃ。
「おお……」
たくさんの道具を振り返る。
前の世界にいたときに比べると、持ち物はずいぶん少ない。だけどその分、一つの道具と過ごす時間は長くなる。
どれもちゃんと手入れしてる。
どれも大事で、悲しくなってきた。
――エーヴェよ。急ぐのじゃ。別れは惜しめないのじゃ。今日は必ず、次の水場に着くのじゃ!
……そうです。ペロにあげた水が最後の水で、もう水がありません。
しかも、おなかもすいてる。
「はい!」
持って行かないとダメなものを選び出す。持って行けない物と羽布のなんとかつながってる一部は、まとめて山にした。周囲の丈の高い草を切り、上にかぶせる。
穴を掘って埋めるのも、木の上に置くのも時間がかかります。
「お別れです!」
すっかりくつろいでるテーマイを呼ぶ。
食べ物と関係ないからか壊れてなかった鞍を、テーマイにつけてもらった。
「おくずさま、エーヴェ、おなかがすきますよ。どこかで食べ物が欲しいです」
――おお! 食べ物は大切なのじゃ。探しながら急ぐのじゃ。
細おくずさまはぴこんぴこん答える。
もう一度、おなかに力を入れて、草で覆ったお別れするものを見つめた。
強く瞬きしてから、周りを見渡す。
「ペロ? 行きますよ」
ペロはアミョーの羽毛で遊んでた。
取り込んでぺっと吐き出すと、羽毛はふわふわ落ちてくる。ねらってるのか偶然なのか、またペロの上に落ちた羽毛は、ぶもんと吸い込まれた。しばらく、ペロの中を漂ったあと、羽毛はぺっと吐き出される。
……ピーナッツを投げて口で受け止める遊びみたい。
「ペロー! 行きますよ!」
声をかけると、一瞬停止して、ペロはこっちに駆け寄ってきた。
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