20.練習スタート
投稿用小説執筆のため、しばらくの間、投稿を週1更新に固定しようと思います。
タイミング的に新章に入る前なので、新章に入って週1更新にする予定です。
投稿用小説の進み具合によっては、一端更新を停止するかもしれません。
申し訳ありませんが、長い目で見ていただければと思います。よろしくお願いします。
まずは足場になる岩探し。
地面から直接テーマイの背中によじ登ろうとすると、テーマイの背中をつかまないといけない。
テーマイが痛そうなので、遠慮する。
「テーマイ! こっちに来てくださいー!」
岩の上に立って呼ぶけど、テーマイは知らん顔で草の匂いをかいでる。
「テーマイ!」
――テーマイ、練習なのじゃ! こっちへ来るのじゃ。
細お屑さまが呼びかけると、ちらりとこちらを見て不承不承やってきた。
「テーマイはエーヴェを乗せるのがいやですか?」
テーマイは耳をふるふるしてる。
――以前、エーヴェと水の中で泳いだことがあるのじゃ。水の中と陸の上だと重さが違うから警戒しておるのじゃ。
お影さまと会った湖で、テーマイに引っ張られて泳いだっけ。
そのとき、ペロはテーマイの背中に乗ってた。
「ペロはテーマイに乗りますか?」
ペロはテーマイの足下をうろうろしてたけど、今はリラックスモードになってる。
テーマイが立ってると、ペロには登る手がかりがなさそう。
「ペロは乗りません」
――ともかく、テーマイ、エーヴェ、やってみるのじゃ。
「はい!」
ふぶっ!
テーマイも鼻を鳴らす。
近寄ったテーマイの背中に両手をかけて、体を乗り上げる。
ふぶっ!
テーマイがまた鼻を鳴らした。
鉄棒に足をかける要領で、テーマイの背中にまたがる。
「おお! 乗れました!」
――テーマイ! どうじゃ? 歩けるかや?
またがる間もバランスを取る感じで足踏みしてたテーマイが、二、三歩進む。
「おお! 揺れます!」
アミョーの背中も揺れたけど、四本足のディーの揺れはまた違う。
ディーの背中は肩のところが一番高くて、お尻方向になだらかに下ってる。
気がつくと、ずるずる後ろに下がっていく。
――エーヴェ! テーマイの首をつかむのじゃ!
「はい! つかみますよ!」
つかむと、テーマイが急にスピードを上げた。
「うわわわわわ!」
つるっと両手が滑り、どしっと地面に落ちた。
びっくりして空を眺める。
――エーヴェ! 大丈夫かや?
「あいたたた……」
細お屑さまがぴこんぴこんしてる。
遠くに走って行ってたテーマイが戻ってきて、こっちを見た。
――テーマイ、急に速く走っては、エーヴェが落ちてしまうのじゃ。息を合わせるのじゃ!
ふぶっ!
テーマイは無表情な目でこっちを見ながら、耳をふるふる動かす。
首をかたっと動かした。
元気を出して、ぴょんっと跳び上がる。
「大丈夫です! もう一回やってみます!」
テーマイが近づいてきて、細お屑さまに鼻先を寄せた。
――むむ? なんと。テーマイは首を触られるのがこわいのじゃ。それでは走ってしまうのじゃ。
「おお。じゃあ、エーヴェは何につかまりますか? なにか道具が要りますか?」
――道具で補えるかや?
細お屑さまが、クエスチョンマークになる。
……鞍を作ったほうがいいのかな。
座るところが平らになるだけでも、ずいぶん乗りやすくなるはず。
*
「テーマイ、ちょっと待っててください」
ふぶっ! という鼻の音を聞いて、船に引き返す。
部屋に戻って、寝台の布をかき集めた。
そして、今度は船倉に向かう。
「ジュスター!」
「エーヴェ、どうした?」
布を頭の上に掲げたまま、ジュスタの部屋に駆けこんだ。
「エーヴェ、テーマイに乗ることになりました!」
「そうなのかい?」
ジュスタは木を加工する手を止めて、こっちを見る。
「はい! 古老の竜さまに会いますよ」
――遠い場所ゆえ、テーマイの足を借りるのじゃ!
「なるほど。テーマイに感謝だね」
「そうです! でも、エーヴェがテーマイの背中に乗ると、後ろにずるずるさがります。エーヴェは落ちるから、テーマイの首に捕まりたいです。でも、テーマイは臆病です。首に触られるのがいやですよ! エーヴェ、つかまるところが要ります!」
思いついて、一度布を床に置き、部屋から砂絵板を持ってきた。
「こんな感じの座る場所を作りたいです!」
鞍の絵を描いて、ジュスタに見せる。
――ほほう! なるほど、よい考えなのじゃ。テーマイも人間が直接触れるより、布のほうが気が楽なのじゃ。
「おお、そうですか」
……さすがお屑さま、物知りです。
「そうだな……まずはテーマイの背中の形を見ないといけないな。布と縄を持って、見てみよう」
――うむ! 何事も準備なのじゃ!
「準備です!」
ジュスタと一緒に外で待ってるテーマイの所へ向かった。
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