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18.実験終わり

 離れた場所に行ってたニーノとカウが戻ってきた。

 カウは走ってくる。


「はいはーい! 歌うぜー!」


 いつの間にか、カウもやる気。面白くなってきたのかも。

 歌い出した言葉は全然聞き覚えがない。

 前の世界で聞いた言葉で近いのは、ベトナムやタイの言葉かな。

 ニーノの前にいた世界の歌なのかも。

 ……長いこと離れてたのも、言葉が分からなくて覚えるのに時間がかかったせいかな?

 歌詞の意味を想像してるうちに、目蓋が落ちる。



「起きろ。エーヴェ」

「ふぁっ!」


 ニーノに肩を揺すられて目が覚めた。

 思わず、目をしばたく。

 花畑は薄闇に包まれて、空が沈んだ陽の光でかすかに明るい。


「あれー? 寝ちゃいました」

「なぜか貴様がいちばん長く寝ていた」

「なんと。実験は終わりましたか?」


 眠ってる間に結論が出たのかな。


「そうだな。私は眠らずに貴様らは眠った。マレンポーの説のどちらか分からないが、歌を知っていれば眠らずに済むのだろう」

「おおー!」

「カウが眠らずに歌えることにも理屈が通る」

「そうですね。じゃあ、シューマの手術ができますか?」

「おそらく」

「おお、やりました!」


 跳び上がって、うぉほっほをする。


「帰るぞ」

「はい。シスももう起きましたか?」

「ああ、お屑さまがたの様子を見に行った」

「おお!」


 ニーノと船に戻りながら話す。


「細お屑さまと幅太お屑さまは寝てましたか?」


 ニーノがちょっと眉根を寄せた。

 お屑さまにあだ名をつけるのがだめなのかも。 


「他の二人のお屑さまも眠っておられた」

「おおー。ということは、九九七のお屑さま、みんな寝てるかもしれません」

「確かに」


 世界中に散らばってるお屑さまが一斉に眠ってたら、とっても面白い。


「特性は奥が深いです」

「そうだな。カウの特性は、きちんと把握すればもっと広がるものかもしれない」

「ニーノも特性でいろいろ実験しましたか?」


 ニーノはしばらく黙って歩く。

 見回りアミョーの数羽が、どっどっどっと通り過ぎた。


「そうだな。初めはいろいろ試した」

「ニーノは特性をいろんな使い方しますからね。エーヴェも古老の竜さまに会ったら、いろいろ試しますよ」


 ニーノは黙って頷き、こっちを見下ろしてきた。


「エーヴェ、特性は竜さまの力だ。敬意を持って使え」

「はい! 大事にします」


 竜さまの付き人になれただけで嬉しいのに、竜さまの力を分けてもらってるなんて、とてもすごい。


「エーヴェはりゅーさまが大事ですからね!」

「ああ、そうだ」


 船に近づいたときに、地面が震えてるのに気がついた。


「お? これはおかげさまですよ!」


 不満のマナーモード。

 ……どうしたのかな?


「――はい。竜さま」


 ニーノが立ち止まる。

 竜さまからテレパシーです。


「なるほど。分かりました」

「何ですか?」

「お影さまが布がなくなっていることに気がついて、ご不満だ」

「あはははは!」


 お影さま、布のこと忘れてません。


「笑い事ではない。私はお影さまのところに行ってくる」

「エーヴェも行きます!」


 戻れと言われなかったので、ついて行く。



 ぶー! ぼっぼっ!


 ニーノの姿を見つけると、お影さまがさっそく不満を表明する。


「はい」


 ぶー! ぶー!


「残念ながら、お影さまに着けられる布がありません」

 ――うむ。ニーノは余りがあったら、影につけたにちがいない。


 竜さまが口添えしてくれる。


 ぶー!


 お影さまが羽をバタバタして、ニーノの髪が揺れた。


「申し訳ありません」

「何やってんだー?」


 船の甲板からシステーナが飛び降りてきた。


「お影さま、布がなくなって不満ですよ」

「だが、余っている布はない」

「へー、それで怒ってんの」


 ぶー!


 ――まったく! 影はヒナなのじゃ! 竜は何も着けずとも万全なのじゃ。


 お屑さまの言葉を聞いて、お影さまは首をかしげた。


 ……ぶー!


 やっぱり納得できないみたい。


「まーとりあえず、これ巻いとくか?」


 システーナがいつも腕にまいてる長い紐を、お影さまの尻尾の先に結わえつける。

 お影さまは自分の尻尾の先に、ちょんと巻かれた紐を眺めた。

 指につけた輪ゴムくらいの感じ。


 ……ぼ


 明らかにしぶしぶ、しっぽを降ろす。

 いつか余り布ができたら、素敵な色に染めてお影さまにあげたい。

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― 新着の感想 ―
ニーノ、カウにだけ歌ったのかな~? 聞きたかったけど、カウとニーノ以外は寝ちゃうから聞けないんですよね、残念だ。せめて歌詞だけは知りたかったかも。子守唄かな、とか想像してました。 エーヴェがニーノと二…
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