17.考えに考えを積む
今週、仕事がめちゃくちゃ忙しかったので、今日ゆったり執筆できて嬉しかったです。
黙って考えてたニーノがカウを見た。
「カウ、歌は決まっているのか」
「んー? どういう意味?」
「カウが何を歌っても、皆、寝るのか?」
カウが目をぱちぱちする。
「えーっと、おれ、いろんな歌、知らない」
「カウは何の歌を歌ってますか?」
「前にいたところで覚えた歌だよ。これ以外、知らねーや」
「そうか」
歌を一つしか知らないなんて、ちょっと寂しい。
はっとひらめいた。
「エーヴェ、いいこと思いつきました! エーヴェが作った歌を教えますよ! りゅーさまは偉大!」
「お! おちび、いいぞー!」
システーナの応援を受けて、ぱっと立ち上がった。
「りゅーさまはーいーだーいー! やさしくてーいーだーいー
りゅーさまはーいーだーいー! つーよーいーいーだーいー
りゅーさまはーいーだーいー! おーきくてーいーだーいー!」
みんなが拍手してくれたので、うぉほっほをする。
――なんじゃ! わしも歌うのじゃ! わしはー黒い背中ー黒いお目々ー!
「おおー! お屑さまのお歌!」
みんなで拍手する。
「それなら、簡単だな。りゅーさんはーいーだーいー! やさしくてーいーだーいー」
カウが竜さまは偉大を歌う。
手拍子で聞いて、歌いきったところで拍手する。
「カウ、上手です!」
「――そして、眠らなかった」
「あ、ほんとだー」
ペードが目をくりくり動かした。
マレンポーのきらきらが強くなってる。
「カウ、お屑さまの歌も歌ってみてください」
「えーい」
カウがお屑さまの歌を歌う。
――わしはー黒い背中ー黒いお目々ー! わしはー九つ首ー黒いお目々ー!
「わしはー黒い背中ー黒いお目々ー……」
お屑さまが率先して歌って、カウが後に続く。
*
「おわー! 寝ませんよ!」
謎が解けるみたいで、とっても面白い。
「もしかして、いつも歌ってる歌だけ眠くなんのかな?」
カウが首をかしげた。
「いや……」
「それ以外の可能性もありますよ! 歌詞の問題です! 今はみんな、あらかじめカウが何を歌うか知ってましたからね。歌詞を知らない歌について眠らせる特性が発揮される、または曲調を知らない歌についてそれが発揮される可能性です!」
ニーノが話す前に、マレンポーがかぶせてきた。
話に合わせて手が動いて、目がきらきらしてる。
ニーノがちょっとマレンポーを見つめた。
「……同感だ。他の歌を離れた場所でカウに教えて、それをここで歌えばどちらの場合でも特性の効果範囲が確かめられる」
「おおー! すごいですよ!」
「じゃあ、他になんか歌ある?」
「あ、わたし、歌知ってる!」
「いえ、ペード、ちょっと待ってください!」
ペードが勢いよく手をあげたけど、マレンポーがきっぱり止めた。
「ここはニーノさんが知っている歌を教えるのがいいと思いますよ。もしこの推論が当たっていたら、ニーノさんが眠らずに済むのが一番いいでしょう? それからお屑さまも聞いておくと、さきほどエーヴェさんが言っていた『別の場所でカウが歌ってお屑さまを通じてシューマさんに歌を聞かせる』ということもできそうです!」
「おおー!」
マレンポーは、二歩くらい先を考えてる。
――ぽはっ! マレンポーは考えに考えを積むのじゃ! なんとも忙しないのじゃ!
「ありがとうございます。ぜひ試してみてください!」
お屑さまのほめてるかどうか分からない言葉に、マレンポーはにこにこ応えた。
ニーノはカウを見る。
「カウがいいなら、その方法を試したい」
「いーよー!」
二人が立ち上がったところで、システーナが腕輪を取った。
「ニーノ、はい、お屑さま」
――ぽはっ! 歌を覚えるのじゃ!
――なんと! わしがおるからわしではないわしはよいのじゃ!
――わしも覚えてもよいのじゃ! お互いのことが見えても、わしではないわしはわしではないのじゃ!
システーナが渡したお屑さまとカウの頭上の長お屑さまが、訳が分からないケンカをしてる。
「あ!」
マレンポーが手を打った。
「幸いにも今、お屑さまは四人いらっしゃいますから、お二人が覚えるのはとてもいいと思いますよ! あと二人のお屑さまにどんな影響が出るのかも試せますからね!」
――ぽ! マレンポーは考えるのじゃ!
――考えに考えを積むのじゃ! 危ういのじゃ! ぽはっ!
お屑さままで説得するマレンポーのきらきらは、すごいです。
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