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10.お土産くばり

 最初に会ったのはジュスタ。

 作業部屋から出てくるところに、出くわした。


「ただいま、ジュスタ! お土産ですよ」

「おかえり、エーヴェ。お土産、何かな?」


 草巻き焼き卵を渡す。

 ジュスタは目を丸くして、結び目や葉っぱを眺めてる。


「かえらなかったアミョーの卵ですよ。他に葉っぱで作ったさじもありますけど、それはご飯で使います」

「ありがとう。さっそく食べちゃおう」

「ジュスタは何をしてましたか?」


 食べるといいながら、大事にしまうジュスタに聞く。


「俺はお屑さま用の腕輪作りだよ。少なくとも三つはあったほうがいいだろ?」

「そうですね。止まり木もありますから、三つです」


 納得してジュスタと別れ、同じ層のニーノの部屋に行く。


「ニーノー! エーヴェですよ! 入ってもいいですか?」

「待て。すぐに行く」


 (やしき)のときと変わらず、ニーノは部屋に入らせない。

 出てきたニーノは大掃除みたいな格好をしてた。


「どうしましたか?」

「必要だから着ている。羽は持って来たか?」

「はい、どーぞ!」


 大きな羽を手渡す。


「それからお土産ですよ! ナームにもあります」


 焼き卵とゆで卵をちらっと見て、ニーノは首を振った。


「食堂に置け。ナームはしばらく、食べ物や着る物を選ぶ。それはアミョーの卵か?」

「そうですよ。かえらなかった卵を食べさせてくれます」


 ニーノは頷いた。


「ありがたいことだ。残念だが、ナームは食べないほうがいい」

「なんと。カウががっかりしますよ」


 ナームのためにせっせと準備してたのに。


「ナームはおそらく環境を変える必要がある。しかたがない」

「むむ。……あ! エーヴェ、シューマのこと忘れてました。シューマ、お土産ないですよ」


 カウもシューマのことは忘れてた。


「シューマはまだ、物を食べられない。不要だ」

「そんなに悪いですか!」

「長いこと物を食べていない。食べれば、かえって毒だ」


 ……いったいどうやって生きてたんだろう?


「私もすぐには食べない。システーナに届けてやれ」

「分かりました。ニーノ、頑張りますよ!」


 システーナを探しに甲板に向かった。

 テーマイは外。ントゥは狩り。ペロはお屑さまと一緒。


「ヲホロは走る鳥! 飛ぶ鳥!」


 アミョーミュージカルの一節を真似しながら、甲板に飛び出す。


「シースー!」

「おちびー! 帰ったかー!」


 帆桁からぴょーんとシステーナが降りてきた。


 ――(わつぱ)! 帰ったのじゃ! アミョーの話は面白かったのじゃ!


 お屑さまがぴこんぴこんする。


「お屑さまが盛り上がってたぜ。何やってたんだ?」

「ストストとアミョーたちが『はじめのアミョー ヲホロ』の話をしてくれました! ときどき、けー!」

「なんだー、それ?」


 お屑さまがぽはぽは笑ってる。


「シスにお土産ですよ。焼き卵です」

「おーあんがとー」


 システーナは葉っぱを解いてぱくぱく食べる。


「こんなに卵たっぷり食べたの初めてだぜー」

「そうですよ。邸ではエーヴェたち、ほとんど卵食べませんでした」


 邸では、本当にときどき木の上の巣から分けてもらって食べただけ。

 もちろん大きさもウズラの卵くらい。


「おいしかった! あんがとな」

「シスも今度、一緒にヲホロの話見ますよ!」

 ――そうじゃ! わしも連れて行くのじゃ!

「お屑さまは見たんだろ?」

 ――わしではないわしが見たのじゃ! わしが見てもいいのじゃ!


 お屑さまネットワークは不思議。

 自分は見てないけど見てて、自分じゃなくても状況は知ってる。


「お屑さまは他のお屑さまがこわいものにつかまってたのは知ってましたか?」

 ――もちろん知っておるのじゃ! しょんぼりがしょんぼりしたのも知っておるのじゃ! わしではないがしょんぼりは元気が足りぬのじゃ!


 お屑さまはぴこんぴこんしてる。


「じゃあ、お屑さまはどうしてシューマがお屑さまをつかまえたか知ってますか?」

 ――知っておるのじゃ!

「え? 知ってんのかよ!」

 ――当然なのじゃ! わしは誰よりも物を知っておるのじゃ! シューマは屑たるわしを集めれば()()たるわしに戻せると思ったのじゃ!

「なんと!」


 シューマ、ゆがんで良くないことをしたのかと思ったけど、お屑さまを元に戻したかったのか。


「へー。お屑さまってそれで元に戻んの?」

 ――戻らんのじゃ! わしが戻ろうと思わねば戻らんのじゃ! まったく! シューマは分かっておらんのじゃ!


 結局、空回りみたいだけど、シューマの気持ちが少し分かった。

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