5.アミョーミュージカル
小屋をしげしげ眺めてたお骨さまは、今度はカウが見張ってるところまで運んでくれる。
――狩りが終わったら、ントゥと遊ぶのじゃ。
それまではこっちに付き合ってくれるみたい。
「りゅーさまと遊びませんか?」
――友はニーノと話すのじゃ。なにやら難しいことを話しておるのじゃ。
……難しいことだと、シューマのことかな?
遠くにみょんみょんしてる長お屑さまが見えてきた。
――だんだんと色が変わっていくのじゃ! ふくらむのじゃ! 料理は不思議なのじゃ!
「じーっと見てると、面白えよな」
カウも頭の上にいる長お屑さまも、卵料理を楽しんでる。
お骨さまにお礼を言って降ろしてもらい、側の地面に腰を下ろして、さっそくペードに折り方を教えてもらうことにした。
「こうやって、こう折って、こう」
「おお、さじですよ!」
「そう。簡単」
三回折ると、基本の形になる。瞬く間にできて魔法みたい。
あとは、使いやすくするために葉っぱの端を折り込むだけ。
簡単に作れて、香りづけになるけど、一回使うとくったりしてもう使えない。
材料の葉っぱがそこら中にあるなら便利だけど、草原だとぜいたくなさじかもしれない。
ニーノとシステーナとジュスタへのお土産に、大事にリュックにしまう。
「マレンポーはまだ戻りませんね」
「クフプがヒナの名前を付けるんだ」
カウが遠くから応じる。
「マレンポーも名前を考えますか?」
「クフプは決めるのが苦手だから、マレンポーにどれがいいか選ばせたいんだよ」
「でもさー、マレンポーも、これは素敵ですね、これはとても音がいいですよねえ、とかいって全然決めねーの! 日が暮れるぜ」
――ぽ! マレンポーなのじゃ! カウがマレンポーの声を出したのじゃ!
カウがマレンポーの声色をそっくりに真似るから、お屑さまはびっくりしてるけど、私は面白くて笑ってしまう。
ペードも笑ってる。
「自分より迷う人がいたら、クフプも決めやすいのかもね!」
「あっはっは!」
――何をそんなに笑ってる?
頭から赤色を飛ばしながら、ストストがやって来た。
他にも若いアミョーが辺りを警戒しながらやってくる。
「マレンポーとクフプのことです。二人とも決めるのが苦手」
――クフプ、決めるのがゆっくりぞ。いいことぞ。マレンポーはいいところ、たくさん見つけるぞ。
みゃうみゃう
他のアミョーが羽を揺らす。
……同意してるのかな?
「決めるのがゆっくりなのは、いいことですか? 逃げるときに困りませんか?」
ストストはかたっと首をかしげた。
――逃げるのは体。決めるのは頭。別ぞ。
「アミョーたちに言わせると、体に任せることと頭に任せることがあるらしいんだよね。名前を決めるのは頭だから、ゆっくり悩むのはいいことらしいよ」
「ちょっと分かんねーけどな。逃げるときだって、どっちに逃げるか頭で考えるはずだろー?」
――体が知ってる。体に任せると、速く走るぞ。
――うむ! アミョーはよく分かっておるのじゃ! 大きな知識は体に任せるのじゃ!
……大きな知識?
よく分かんないけど、アミョーとお屑さまには分かる何かがあるみたい。
「それより、ストスト。エーヴェがマレンポーと旅したアミョーのことが知りたいんだって」
ペードの言葉に、ストストはぴょんぴょん飛び跳ねた。
――おお! ヲホロ!
みゃうみゃう、みゃうみゃう!
ストストだけでなく、他のアミョーも盛り上がってる。
頭上には、濃い黄色の丸が飛び交う。
――はじめのアミョー、ヲホロ! エーヴェ、話が聞きたいのか?
「はじめのアミョー! 聞きたいですよ!」
ストストは羽をバタバタさせながら、ぴょんぴょん駆け回る。
――ヒナたちがもう少し大きくなったら、みんな、話してやるぞ。でも、エーヴェ、人間ぞ。おれたちの話、分からん。仕方ない。おれが話すぞ。
みゃうみゃう、みゃうみゃう、みゃう!
アミョーたち、盛り上がってます。
――長い話ぞ! 準備はいいか?
「はい! いいですぞ!」
ストストはその場を行ったり来たりしながら、草や花を蹴飛ばして、何か準備をしてるみたい。
――はじめのアミョー、ヲホロは長いくちばし。殻の内側をこつこつ、こつこつ。夢を見ていたぞ。大きなトカゲの夢を見て、卵は巣から転げ落ちたぞ。
こつこつ、のところで、周囲のアミョーが岩をこつこつ鳴らし、転げ落ちたところではあちらこちら走り回る。
……まるで、アミョーのミュージカルみたい。
――外に出ると、揺れる地面ぞ! 親を呼んだぞ。ごうごう。親を呼んだぞ。ごうごう。風の音ばかりぞ。目が薄く開いて、ごつごつした岩の原を走って、ようやく小さな茂みを見つけたヲホロは、その下に潜ったぞ。
風の音ではアミョーたちが一斉に羽を鳴らしたり、足音高く走り回ったりして臨場感たっぷり。
つんつんと腕がつつかれた。
「これ、ヒナたちに見せるやつだよ。もうすぐだから、張り切ってるんだ。エーヴェ、練習に付き合わされるよ」
ペードが心配そうに低声で教えてくれた。
アミョーのヒナに見せる劇。
「エーヴェ、大丈夫ですよ!」
ワクワクして座り直した。
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