4.マレンポーの小屋
お腹がぽかぽかになった後、ペードに葉っぱのさじの折り方を聞いた。
「わたしもマレンポーに教えてもらったんだ」
「じゃあ、マレンポーに教えてもらいます」
「もちろん、構いませんよ」
そこに、群れから一羽のアミョーが駆けてきた。
みゃう、みゃうみゃう
薄い黄色や水色の丸が頭からふわふわ浮き出てる。
「おや。わたしは呼ばれていますので、やっぱりペードに教えてもらってください」
「おお。分かりました」
マレンポーはやって来たアミョーに乗ると、行ってしまった。
「あれはクフプの伴だね。たぶん、ヒナが出てきたからマレンポーに見せたいんだ」
「ペード、分かりますか」
「クフプは前に、ヒナが上手く餌を飲み込めなかったときに、マレンポーに助けてもらったことがあったらしいんだ。それから、ヒナが殻から出ると真っ先に声をかけに来るんだよ」
「おお。素敵な話です! でも、エーヴェ、もう一つ聞きたいですよ」
「あ、何?」
「ペードはさっきのアミョーが誰か分かりましたよ」
「それがどうしたの」
ペードは「あ」という顔になる。
「そうか、アミョーの見分けがつくって話か」
「誰が誰の伴かも分かってますよ」
「わたしが分かってるのは三分の一くらいだよ。伴は固定じゃないから、もっと難しいね。クフプは言葉も通じるし、伴をなかなか変えないからたまたま知ってただけだよ」
確かにアミョーは何百羽もいるから、三分の一も分かれば十分すごい。
「いちばん見分けが付くのがマレンポーかな。あと、ナームもすごいよ。細かい特徴をよく覚えてる」
「エーヴェ、なんとなく分かりますよ」
この間、船の外に出てきたときのふわふわ頭つつきの様子から、仲が良いのはよく分かった。
でも、ナームはまた調子が悪くなっちゃって、今日は船で休養中。
ニーノによると、外からの要因で皮膚に炎症ができるらしい。
……アミョーアレルギーだったらたいへん気の毒です。
「でも、いちばんは竜さんだな。全員分かってるよ」
「なんと!」
いつも走ってるのに、全員区別できるなんて、すごい。
アミョーの前を走ってるから、姿形で見分けてるわけじゃなさそう。
「不思議ですよ」
首をかしげたところで、ペードがはっとした。
「おいおい、さじを折る話だったよー! おしゃべりしてる場合じゃない」
「おお! そうでした!」
慌てて立ち上がる。
さじを折るのに使うのは、日影に生える草。
まずはその草を取りに行く。
「マレンポーの小屋にあるんだ。ちょっと離れてるから走るよ」
「走りますか!」
驚いてる間にペードが走り出したから、追いかける。
地馳さまの座は、みんな走るのが好きなのかもしれない。
――おお! エーヴェが走っておるのじゃ。
お骨さまがひょいひょいやって来た。
「あれ、お骨さま。ントゥはどこですか?」
お骨さまの頭上にうねる尻尾が見えなくて、きょろきょろする。
――ントゥは狩りなのじゃ。わしは大きいので、離れておるのじゃ。
確かに、お骨さまが近くにいたら狩りは上手くいかないかも。
「おお、残念ですね。……じゃあ、お骨さま、エーヴェたちを運んでくれますか?」
――運ぶ? よいぞ。どこに運ぶのじゃ?
「ええ! 骨さまに乗っていいの?」
先を行ってたペードが急停止する。
――よいのじゃ。
気前の良いお骨さまの背骨に乗って、マレンポーの小屋まで運んでもらった。
お骨さまのおかげですぐだったけど、走ったら三〇分くらいかかったかもしれない。
――ここでいいのか?
「はい。ありがとう、骨さま」
ペードはいそいそお骨さまから降りる。
マレンポーの小屋は小屋というより、藁山みたいだった。
小ぶりな竪穴式住居。
「おお! あったかいですね」
入ると湿っぽくて温かく、いろんな草が壁に生えてる。
ただし、やっぱり狭い。
……人が二人寝られるかな。
あまり暗くないのは、天井に明かり取りの細い窓が作ってあるから。
「雨は大丈夫ですか」
一応、雨が降り込まないよう工夫はしてあるけど、光がさんさんと入ってくる。
「この辺はほとんど雨降らないよ」
ペードは壁に生えた葉を二枚ちぎる。
壁はコケやシダの類いがいっぱい。
「この小屋は、植物を育てるための小屋ですか?」
「いやー? これは今は捨てられてるんだけど、日陰にしか生えない植物が生えるからときどき来るよ」
「捨てられた小屋ですか」
ペードに渡された葉っぱはしっかりしてて、微かにすーっとするにおいがする。
「マレンポーは前に一羽のアミョーと一緒に、竜さんから離れて暮らしてたんだ。いろんな場所を点々として。ここはそのときの名残り」
「おお」
「わたしたちの中でいちばん初めにここに来たのはマレンポーだから、いろんなことを試したらしいよ。ほら、葉っぱは取ったから外に出て」
小屋は狭いから、後から入ったほうが出ないと出られない。
外に出ると、ペードは大きく深呼吸した。
「カタッカやクフプは忙しいだろうから、ストストに聞いてみたらいいよ。マレンポーと旅した一羽の話。アミョーの中では伝説らしい」
「なんと」
さじの折り方もだけど、興味津々な話が出てきました。
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