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18.正体

 ()(はせ)さまの上をくうるりと一周飛んでから、竜さまがこちらへ戻ってくる。


 ――地馳、よくやったのじゃ!


 お屑さまが次々に地馳さまを誉めたたえた。


 ――地馳が、たくさんがたくさんでびっくりしておるのじゃ。


 お骨さまがかたかた(あご)の骨を鳴らしてる。

 竜さま同士ならこの距離でも会話できるみたい。


 ぶー!


 お影さまは竜さまを迎えに飛び出していった。

 まだ金色に光っている竜さまの周りを、珍しそうに飛び回る。


 ――うむ。そうなのじゃ。この火の吐き方を忘れたのである。


 竜さまの声が遠く聞こえた。

 ……お影さまに応えてるのかな。


「じゃあ、今ので邪気が焼けましたか?」

 ――今も焼けておるのじゃ! 明るいのじゃ!

 ――地馳の火は良い火なのじゃ! 長く燃えておるのじゃ!


 話してるうちに、竜さまが近くに降り立った。

 せっかく甲板に登ったけど、また外に駆け出す。



 ずん、とお影さまも地面に降り立った。


 ぶー……


 竜さまの光はもうほとんど残ってない。


 ――邪気が焼けたゆえ、見えるようになったのである。


 こわいものを地面にぽとりと落として、竜さまが首を持ち上げた。

 こわいものも、もう全然光ってない。


「おお! 人ですよ!」


 縄は元のとおりかかったままだけど、さっきまでもちゃもちゃしたぼろくずにしか見えなかったのが、ぼさぼさに伸びた髪や手足や顔の形が分かるようになってる。


「……お、お」


 今は、竜さまや人に取り巻かれて、おびえてるみたい。


「……ニーノ、この人、ケガしてますか」


 肌は赤黒く日に焼けてる。

 体中汚れてるだけでなく、妙に固くなったり、曲がったりしている部位があって、怖じ気づいてしまう。

 ぴこんっとお屑さまが伸び上がった。


 ――うむ! やはりヒトであるのじゃ! こわいものはヒトなのじゃ!


 お屑さまの声を聞いた途端、元こわいものの目が輝いた。


「お、お――ぅう、うー、ま」


 さっきまでぴこんぴこんみょんみょんしてたお屑さまたちが、ぴたりと止まる。


「あれ、どーしたんだ? お屑さま?」


 システーナがのんびり聞いた。


 ――なんと!

 ――なんということじゃ!

 ――大変なことなのじゃ!

 ――信じられないことなのじゃ!

「うわっ! 何事だよ!」


 お屑さまたちが一斉に叫び始める。

 大興奮で、高速ぴこんぴこんして、縄跳びの縄の残像みたい。


 ――信じられないのじゃ!

 ――シューマなのじゃ!

 ――なぜここにおるのじゃ!

 ――わしの付き人なのじゃ!

 ――生きておったのじゃ!

 ――座にはいなかったのじゃ!

 ――邪気で見えなかったのじゃ!

 ――大変なことなのじゃ!

「なんと」


 一斉に話す中から聞こえる言葉を拾い集めると、元こわいものはお屑さまの付き人です。

 ナームが大興奮お屑さまたちを元こわいものの側に連れて行く。


 ――おおおお!

 ――シューマよ!


 ジュスタもお屑さまたちを運んであげた。


 ――見違えたのじゃ!

 ――生きておったのじゃ!

「うー――、ま」


 喉から絞り出したうめきの後、元こわいものは泣きはじめた。


 ――なんと! 泣くことはないのじゃ!

 ――よかったのじゃ! シューマよ、また会えたのじゃ!

 ――あれほど小さなヒナがよく生き延びたのじゃ!

 ――よかったのじゃー、よかったのじゃー。


 ジュスタが縄をとくと、元こわいもの――シューマはお屑さまたちを抱きしめる。


「うー、さま」

 ――よく生きたのじゃ!


 シューマはまだぼろぼろ涙をこぼしてる。

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― 新着の感想 ―
シューマがお屑さまたちを抱きしめたとこで涙腺緩々です。たどたどしい口調でお屑さまと繰り返すシューマ、ぼろくずみたいになってしまってもお屑さまの名前だけは覚えてたのかと思うと、グッとくるものがあります。…
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