13.カウのうた
目を開けると、いっぱいの星が目の前。
広い草原の上は広い空。
数え切れない星で、夜空は賑やか。
「はやっ?」
体を起こすと、火の周りに地馳さまの座のみんながいる。
「あいたたた」
手でおでこを触った。
左のおでこが痛くて熱い。
「……こぶですよ」
「ああー、エーヴェさんはおでこをぶつけましたか?」
「ちょっと見せて」
ペードがやって来て、水袋を当ててくれた。
「小さいこぶができたね。アミョーから落ちたわりには軽傷、軽傷」
「……エーヴェ、ポッポキから落ちましたか?」
首をかしげたところで、側の地面にある物にびっくりした。
「ニーノ! シス!」
ニーノとシステーナが目をつぶって、花畑に横たわってる。
「なんと! 二人はどうしましたか!」
もしかして、二人もアミョーから落ちたのかな?
……あれ? システーナはアミョーに乗ってたっけ?
「大丈夫。寝てるだけ」
ペードが白い歯を輝かせて笑う。
改めて二人を見ると、確かにすーすーと規則的な息の音がする。
「おお……本当です」
「ちょっと頭にきて、おれが大声で歌っちゃったんだよ」
ひっかき傷だらけの顔をゆがめて、カウが不機嫌そうに吐き捨てた。
手当ての後なのか、傷には何かの汁が塗りたくってある。
「そういえば、カウが歌ってるところ見ました。とってもいい声でしたよ」
「そーおー? へへへー」
カウが照れて笑い、ナームが深く頷いてる。
「でも、聞いてからすぐ、夜になりました」
「そうそう。カウの子守歌」
「その言い方はやだってー」
「なんで? すごくいいよ」
「やなの!」
「カウの特性なんですよ」
よく見たら、長お屑さまやお屑さま、ストストふくめたアミョーも、何羽か花畑に寝転んでる。
「カウの歌は、生き物を眠らせます」
「おお、子守歌!」
「だーかーらー、ちげぇの!」
「正確に言うと、気持ちを落ち着かせるんですよ。声が大きくなればなるほど、効果が強くなって即座に眠ってしまうんです」
「本人がこんなに落ち着かない性格で、不思議なんだけどさ」
「ペードは言い方がよくないと思いますー!」
ペードとカウが言い合いしてる。
「俺が痛いとき、カウが歌った」
ナームがぼそっとこぼした。
「お? 痛いのも楽になりますか?」
頷きが返ってくる。
痛みが楽になるなら、まるで麻酔みたい。
「カウ、すごいですね!」
「そうなんです! カウはすごいんですよ!」
「うへへー」
マレンポーと一緒にほめると、またカウは照れ笑いになった。
ぼっ
声がかかって振り向くと、星空を真っ黒に切り取って、お影さまがいる。
……もうお影さまの活動時間です。
お影さまは、システーナやニーノをのぞき込んだ。
ぶー!
声をかけても動かないので、そのままそこにお腹をつけて伏せる。
そういう遊びだと思ったのかな?
――星じゃ! 我が目で見るのは久しぶりなのじゃ!
――ぽっ、星はきれいなのじゃ。なんともきれいなのじゃ。
後ろから聞こえてきた声にびっくりして振り返る。
「ふわ! なんと!」
後ろにいたのはジュスタ。
でも、その腕に、二人のお屑さまがくっついてる。
もう一度振り返る。
お屑さまも長お屑さまも、やっぱり花畑で寝てる。
――影よ! その者たちは眠っておるのじゃ! まもなく起きるのじゃ!
――うむ。お主の声で、眠りが薄くなったのじゃ。
ぼ! ぶー!
お影さまはお屑さまの言葉に勢いを得て、起き上がると大声を出す。
――ぽはっ! その調子じゃ! ぽはっ!
私は、ぽかんだ。
「エーヴェ、大変だったみたいだね」
ジュスタがやって来たので、お屑さまがよく見える。
――おお! エーヴェなのじゃ! わしではないがわしが会ったのじゃ!
長お屑さまくらいの長さで、ちょっと幅が広いお屑さま。
――わしではないわしは会っておるが、わしは初めましてなのじゃ。エーヴェ。
お屑さまより細くてやや短いお屑さま。
二人とも共通してぺらぺら。
「お屑さまがたくさんです!」
――そうじゃ。たくさんがたくさんなのじゃ。
向こうの花叢でお骨さまがひょいっと顔を上げた。
ントゥとペロが気がついたみたいに、こっちに来る。
「ントゥ! ペロ! エーヴェ、起きました」
ントゥはこっちをじっと見つめてから、ぱっとお骨さまへと身をひるがえした。
ペロもしばらく止まってたけど、やがてのそのそどこかへ行く。
すやすや寝てるテーマイの前で、しばらく停止して、最後にジュスタの足下に行った。
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