16 視点
いっぱいしゃべって疲れちゃったのかな、
レマリィさんは、焚き火のそばで眠っちゃったよ。
それにしても、なんでこんなに無防備なんですかね。
お歳頃の乙女、しかも巡回司法官なのに。
っていうか、僕だって男なんだけど。
まあ、何もせんけどね。
あの事件は、知っている。
カミスさんとサイリさんから、聞いていたから。
体験した内容が違うから、3人の想いは、それぞれの視点からのもの。
どれが正しいってことじゃなく、全部、真実。
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当時カミスさんは、エルサニアのツァイシャ女王様の依頼で、
キルヴァニア王家への親書を届けに行って、アレに巻き込まれた。
その頃のキルヴァニアは、王家の中の一部の連中が、"ファミリー"っていう悪党集団を好き勝手に操って、好き放題していた。
エルサニアにまで手を出してきた連中を何とかしようと、
ツァイシャ女王様とキルヴァニア王家の心ある人が、
悪党どもを一網打尽にしようと計画、
カミスさんは、それに深く関わる。
計画が大詰めを迎えた頃、
突然、"ファミリー"の本拠地だった街が大混乱。
死者・負傷者多数、結果"ファミリー"は壊滅状態。
その後、悪さをしていた王家の連中は逃げ出して隠遁。
キルヴァニア王国は、平穏を取り戻す。
カミスさんは後始末でも大変な目にあったらしい。
キルヴァニア中にはびこっていた"ファミリー"残党を、
全員本拠地だった街に集めて、
これからどう暮らせば良いのかの啓蒙活動。
なにせちょっとでも悪さをしようとすると天罰てきめん。
住人たちは、嫌でも平穏に暮らさざるを得ず。
それでも、残党の連中、"ファミリー"に関わっていた人、無関係だった人、
街が落ち着くまでは、本当に大変だったそうだ。
それまであまり荒事に関わらないようにしていたカミスさんも、
この騒動にはいろいろと考えさせられたそうです。
それからは、冒険者として積極的に活動するようになり、
つまりは、今のカミスさんこそが、僕の知っているカミスさん。
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サイリさんも、それに巻き込まれた。
エルサニアに手を出そうとしてきた"ファミリー"に目をつけられて、
本人だけじゃなく家族まで狙った暗殺者を送り込まれて、
あのおとなしいサイリさんが、マジ切れ。
後腐れないよう"ファミリー"丸ごといっぺんに何とかしようと、
あの凄い固有スキルを全開で使ったのが、
例の大騒動の引き金に。
自分が巻き起こしてしまった事態の大きさと、
その後起こった諸々の出来事が、
優しいサイリさんの心を壊しそうになる。
経緯はともかく、レマリィさんがサイリさんを救ったことになるのかな。
ふたりとも、絶対に認めないと思うけど。
それからのサイリさんは、
我慢するのをやめたそうです。
自分の能力に振り回されないよう慎重に。
でも、必要ならば躊躇せず。
だから、やったことの結果には、全ての責任を持つ。
サイリさんらしい、覚悟。




