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15 やりたいこと


 キルヴァニア王国で暮らしていた頃の、お父さんとの穏やかな普通の日々。


 ところがある日、住んでいた街が、突然大混乱。



 暴れ出す人、逃げ惑う人、何も出来ず立ち尽くす人。


 それまで優しかったみんなが、人が変わったようになり、


 私も、どうしたら良いのか分からない。



 お父さんが先頭に立って、


 近所の人たちで助け合いながら、公民館に避難。


 集まったのは顔見知りの人たちばかり。


 ここで助けを待とうと、今後のことを大人たちが話し合っている。



 話を聞こうと、そばに行ってみる。


 なんでこんなことになっているのかを、


 お父さんが、みんなに説明してるみたい。



"キルヴァニアファミリー"って、何?


 神さまみたいな凄いチカラを持った人が天罰を降したって、何?


 これからも悪いことさえしなければ、今まで通りの暮らしが出来るって、何?



 それを聞いていた大人たちが、怒り出した。


 お父さんのせいだって。



 お父さんが"ファミリー"の幹部だからって、何?



 いつの間にか、ぼろぼろになって倒れているお父さんにすがって泣いてた。


 暴れていた大人たちは、みんな取り押さえられている。


 私たちを助けてくれたのは、巡回司法官っていう人たち。


 お父さんも助けようとしてくれたけど……駄目だった。




 キルヴァニア王都の巡回司法省の保護施設で、これからどうしたいのか、聞かれたけど、


 もうあの街には戻りたくなかった。


 司法官の人たちが教えてくれた真実は、


 お父さんが言っていたこと、そのままだった。



 なんだか何もかもがどうでも良くなって、


 保護施設で、ひとりで、ただ生きている。


 同い歳の子、小さな子、


 みんな話しかけてくるけど、


 きっと私の身の上を知ったら、


 嫌われるって分かってるから、


 誰とも仲良くしない。


 どうせもう、ひとりぼっちだし。




 ある日、トゥルーレスっていう変な人が面会に来た。


 この騒動で酷い目にあった人たちで助け合うために集まって、


 こんな目に合わせたヤツに償いさせようって言ってる。



 正直どうでも良かったけど、


 私たちを酷い目に合わせたヤツに会わせてくれるって言うから、


 いっしょについて行く。



 どっかの街に連れてこられて、


 アイツが犯人だって指差した先にいたのは、


 呑気そうな、すっごく痩せてる男の子。


 ソイツが楽しそうに街を歩いてる姿を見てたら、


 なんだか頭の中がぐちゃぐちゃになっちゃって、


 いつの間にか持っていたナイフで……




 今いる施設は、前よりも静か。


 あまり部屋の外には出してもらえないけど、


 どうせやることないし、


 何もやる気が起きないし、


 あんなことしちゃった私に、


 何かやる資格なんて無いし。


 


 そんなある日、施設が襲われた。


 私に会いにきたのは、


 例の神さまみたいなチカラを持ったアイツの家族、らしい。


 こんなに見た目はバラバラなのに、ちゃんと家族なんだ……



 せっかくだから、アイツにひと言言ってやりたくて、施設を飛び出した。



 アイツの家に連れていかれて、


 なんで私がこんな目に遭わされなきゃならないのって、


 面と向かって言ってやろうとしたけど、


 なんか変だ。



 アイツが、おかしくなってる。


 あの街であんなに楽しそうに笑ってたのに、


 死んでるみたいな、無表情。


 痩せすぎにも程があるでしょ、


 死んでるみたいな、激痩せ。



 本当に今にも死んじゃいそうだから、


 死ぬ前に、私が言いたいこと、全部言わなきゃ。



 最初は、聞いてるのか聞いてないのかよく分かんないくらいの、


 死んでるみたいだったアイツが、


 途中から変わった。



 逆ギレ?


 なんだか睨んでくるし、


 やたら喋り出したし、


 なんか、スッゴいムカつく。


 結局、ケンカ別れみたいになって、部屋を出た。



 追いかけてきた巡回司法官の人に連れられて、施設に逆戻り。


 なんだか気持ちが高ぶっちゃって、


 司法官のルシェリさんに、


 今日のことも、これまであったことも、


 全部話しちゃった。



 ルシェリさんは、


 私の話しを最後まで聞いてくれて、


 何も言わずにハグしてくれたら、


 すごく久しぶりに、すっごく気持ちが落ち着いて、


 そのまま寝ちゃった。




 それから何度も会いにきてくれたルシェリさんに、


 いろいろ相談しているうちに、


 自分がこれからやりたいこと、


 少しずつ分かってきた。



 ルシェリさんみたいな人になりたい。



 私がやらかしちゃったこと、


 いつの間にか無かったことになってるけど、


 許されるとは思っていない。



 これからひとりで生きていくため、私に何が出来るのか。


 職業適正を調べたら、


 一番向いてるのは、


 巡回司法官!



 やるしかないでしょ。


 アイツみたいなわけ分からんヤツに、


 私みたいな目に遭わされる人を増やされないように、


 しっかり勉強して、


 がっつり身体を鍛えて、


 ルシェリさんみたいな、


 スッゴい巡回司法官になってやる。



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