表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/9

禁断の果実

「禁断の果実って?」


「それはですねぇ。ぐふん。わたしたちがなぜここにいるのかという話になります。ぐふ」


早川さんは直接大星さんを見るのは眩しすぎるのかやたらとまばたきをしながら話を始めた。オタク特有の熱量のある早口だ。

ぐふぐふ言うときに手で口を抑えるのは彼女の癖なんだろうか。


「ここに私たちをつれてきたのは宇宙人です。ぐふ。嘘でも冗談でもありません。彼らは地球にたどり着く前は他の星を侵略しながら宇宙をわたってきました。ぐふふ」


何がそんなに楽しいのか早川さんは笑いを止めない。言葉もとめない。


「暗くて広い宇宙。そこを漂ってきた彼らには娯楽という概念がなかった。地球に来て彼らがたまたま人間の頭にたどり着いた時それはそれは驚きました。日本の世界に誇るポップカルチャー!! クールジャパン!!語られてない物語はないというほど多岐にわたる漫画が特にお気に入りでして。初代クイーンは少女漫画。それから次代は少年漫画。さらに青年漫画。ホラー。SF。ゆるふわエッセイ漫画。等々クイーンたちは世代交代の度に様々なジャンルに舌鼓を打ってきました。」


興が乗ってきたのか天をあおぎ目をかっぴらいて手を広げて演説を打つ早川さんは人間離れした雰囲気を醸し出す。普段ならかかわり合いたくないから見かけたらそこの交差点手前で曲がっちゃう宗教系街頭演説の人ににていた。


本当は話しかけるのも憚られる感じだけど聞き逃せない単語に俺はいやいやながらも話を遮る。大星さんは俺の隣で存在を消している。


「ちょちょちょっと待って舌鼓?って言った?」


(いい間違いではなく?)


「ええ。宇宙人は我々人類の脳を食べることで娯楽を摂取します。」


嫌な予想が当たった。


「普通に本を読んでくれないの?」


「残念ながら彼らは大変小さいので脳細胞を消化吸収することで直接キメタイそうです。」


「そんな違法薬物みたいな言い方」


「実際彼らにとっては化学物質を出す脳は違法ドラッグみたいなものでしてなぜそんなことになるのかはわたしにも分かりません。私はクイーンにそういわれただけなので。」


「そのクイーンって誰?何してるの?」


「分かりやすいたとえだと宇宙人女王蜂って感じでしょうか。巣の中にいる最高峰の存在にして母。彼女なくして巣の蜂は生きていけない。彼女のために全ての蜂は尽くす。これは地球の蜂の話ですが特別なエサ、ローヤルゼリーを与えられるかどうかそれが普通の蜂になるか女王になるのか分岐点です。興味深いでしょう?食べ物が違うだけで産卵という生き物のメスにとって最重要の役割をこなせるかいなか変わってしまう。私たちは人間ですから蜂のようにはいきませんが口にするものは気を配らないといけませんよね」


そこで早川さんは俺たちを向いてニンマリと笑った。口が横に大きく引っ張られた笑いは不思議の国のアリスに出てくるチェシャネコを思わせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ