第三話
「って言うことが今日あったんだよね。私、どうすればいいのかな?」
「それお母さんに聞く?」
夕飯を食べながらお母さんは心底興味がないといいたげな様子で言った。思春期の娘が悩みを打ち明けたんだからもう少し真摯に対応しても良いと思うんだけど。
「ていうかその姉妹制度?ってお母さん初めて聞いたんだけど。」
筑前煮を突きながら言う。そういえば説明してなかった。
「姉妹制度って言うのはあれだよ。なんか二年生の先輩と姉妹の契りを結んで学校生活を充実させる制度らしいよ。なんか、昔の監視制度の名残で今もあるみたいなんだよね。」
私が通う菫女学院の歴史は長くそのルーツは大正時代の女学校まで遡るらしくそれが紆余曲折あり今の学校の形となったらしい。何故、女学校で監視する必要があったのかと疑問に思ったがなんでも菫女学院内で社会活動グループが出来上がり他の学校の学生と結託してデモを起こしたらしい。そのような学校の恥さらしが二度と出ないよう先輩後輩同士で監視し合う、それが姉妹制度誕生のきっかけだとか。
「ふうん。面白い制度ね。まぁ、せっかく珍しい学校に入れたんだからなったらいいじゃない。そこでしか体験できないんでしょ?」
いつの間にか食事を終えていたお母さんはのんびりとお茶を飲んでいた。まぁ、確かにそうかもしれないけど・・・。
「そりゃ私だって奈々お姉ちゃんが姉妹になろうって言ってきたらその場ですぐに姉妹になってたよ。・・・今日言ってきた先輩は知らない人なんだよ?そんな人と姉妹になるっていうのもなんかな。」
「あんた本当に奈々ちゃんが好きね。そういえば今年の八月に一度こっちに帰って来るみたいよ。」
「本当に!」
思わず立ち上がってしまう。今までもやもやと先輩に言われたことばかり考えていたがそんなものあっという間に吹き飛んでしまった。
私の大好きで憧れの奈々お姉ちゃん。二年前に県外の大学に進学してからは全然合わなくなってしまった。会うのは本当に久しぶりで胸が高鳴る。奈々お姉ちゃんが帰ってくるまであと二ヶ月もあるのにこのワクワク感。実際に会ったらどうなってしまうのだろうか。
「まぁ、とりあえずなっちゃえばいいじゃない姉妹に。もし何かあったらその時に考えればいいんだし。」
私の雰囲気が一瞬で変わったのを見たお母さんは少し呆れながら言う。
まぁ、そうか。何故かはわからないがお母さんの一言がストンと胸に収まった。どうすれば良いのだろうと無駄に焦って考え込んでばかりいたが何も考えずに行動しても良いのかもしれない。
明日の昼に先輩に会いに行こう。そう、密かに決意をし味噌汁を啜った。