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その94 試験当日

 楽しい日々というのはあっという間で、まるで時空が歪んでいるかのように、気付けばイブンの試験当日を迎えていた。

 実際、ゲームなどをしていると五時間くらいは一瞬で過ぎ去っていくので、推しの周りでは時の流れが加速するのかもしれない。

 アニメも三十分絶対ないもんね……実質三分!

 逆に次週の放送を待つのは三年くらいに感じる……推しの上にも三年……。

 毎時間放送してくれ……。


 さて、ここで問題です。

 試験において最も重要なことはなんでしょう?

 勿論、色々と大事なことはあるだろうし、答えが一意に定まるものではないのだけど、私個人の考えとしては最も重要なのは──遅刻しないことだと思う!

 当たり前すぎますか? いえいえ、案外重要なのです。


 まず試験というのは事前に合格できる実力は身に着けていることが前提なので、その実力を十全に発揮できるかどうかが大事だったりする。

 そのためにはどれだけ普段通りでいられるかが求められるので、ジャージを着て日常を演出したり、モフモフするものを持ってきてニギニギしたりすることで癒されたり、そんな風に伸し掛かるプレッシャーを緩和することも案外馬鹿に出来ないわけだ。

 ちなみに浪人生あるあるな半纏は日常性とモフモフと兼ね備えているのでオススメ……らしいよ?


 翻って考えるに、試験当日に慌てるようなことがあればそれだけでパフォーマンスが衰えることになるし、何より、普通に失格になりかねない。

 出来るのなら、試験の前の段階から一度は試験会場に足を運んでおいて、道順を覚えておくことが求められる……むしろ、遠くの学校を受けるのなら、これはもはや必須行動とさえ言えるほどだろう。

 よって遅刻はヤバいという事になる。

 試験の最大の敵はパニックなのだから!


 イブンの場合は立地が近い上に、何度も通っているので道順については問題にならないのだけど、遅刻の方はそれなりに気になった。

 日替わり教職では実にお利巧さんで遅刻などの問題は発生していなかったけれど、イブンは一つのことに熱中すると全てを忘れてそれに没頭してしまう癖がある。

 事実、居眠りはあったわけで、授業中だから癒されるだけの光景だったけれど、それが試験中という舞台になれば、胃がキリキリと締め付けられる光景に早変わりするだろう。

 特に試験の前日なんて、追い込みを頑張り過ぎて寝坊や寝不足になりかねない危険性が高い。

 そうなってしまっては今までの努力が水の泡!


 ではそんな悲劇をどうすれば回避できるのか?

 答えは明らかだ──誰かが一緒に寝てあげればいい!

 私は無理だけどね!!!!


 そう、さっさと寝かす役目は私では出来ない理由がある。

 まあ、まず男女だというのもあるのだけど、そんなものは私程度の存在にはあまり関係がないことで、どちらかと言えば『真実の魔法』のせいで喋り過ぎてしまうのが問題だった。

 あれは寝る前も止まることがないので、安眠妨害甚だしかったりするのだ。


 ジェーンは驚異の寝入りの良さを誇るのであまり問題にはならなかったのだけど、イブンにもあののび太くんもびっくりな睡眠速度を期待するわけにもいかない。

 というわけで、様々な審議を重ねた結果……グレンがいいだろうということになった。


「なんで俺なんだよ!?」

「面倒見が良くて、意外と早起きだからです。いつもラウラの早朝のランニングに会うのでしょう? それはつまりいつも早起きしているからじゃないですか」

「うっ、目敏い奴だな」

「それにイブンもグレンのことは気に入っていますよ」

「そうかぁ……まあ、そんだけ言うならやってやるけどよ」


 こんな感じの問答を経て、ヘンリーの鋭い指摘によりイブン寝かせ係はグレンに決定した。

 グレンとしても、教師役を務められなかった申し訳なさからなのかあまり抵抗はせずにあっさりと受け入れてくれたけれど……まあ何もなくても優しい人なので、やってくれたとは思う。

 

いやー、まさかイブンとグレンが寝食を共にすることがあるなんて、オタク冥利に尽きますなぁ。

 この目で見られないのは残念だけど、その事実が存在しているというだけで満足できる私だった。

 なんかそういう設定があるだけですっごい興奮できるんだよね……そういう設定なくても妄想だけで興奮出来るけども。


 これで準備は万全、後は試験に臨むのみ!

 頑張るぞー!


 ……いや、頑張るのは私じゃなくてイブンだけどね?

 なんだかずっと一緒に勉強してきたせいで、もう一度入学試験を受けるような気持ちになっている私なのだった。





「それで赤猿が連れてくる予定だったはずだが、何でまだ来ていない」

「ど、どうしてでしょうか……」


 試験当日の朝、門の前で待つ私とお兄様の元に、グレンとイブンの二人は──やってこなかった。

 もう約束の時間は十分ほど過ぎている。

 ふ、二人ともどうしちゃったのー!


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