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その90 自習の時間はダベリがち

 我が学院もさすがのさすがにそこまで非常識ではなかったらしく、談話室に来てみればナナっさんの授業は中止になっていた。

 ものすごーく不満げな顔で教壇に立つナナっさんだけど、それは(あまりにも贔屓すぎるので)そうなりますよ。

 むしろ安心したくらいです。


「というわけで、代役を呼んでおいたので後は任せておるから、儂はふて寝する」

「ふて寝するナナっさんの姿は想像するだけで癒されますけども! 問題はそちらではなく、だ、代役とは?」

「ジェーンじゃ」

「えっ、ジェーン!?」


 まるで予想していなかった名前に私は思わず今朝のことを思い出す。

 確か私が寮を出た時にはまだ眠っていたような……?


「ジェーン、ぐっすりでしたよ。眠り姫のように」

「そう、まだジェーンは可憐に寝ておる。それもそのはずでジェーンに代役を頼もうと思ったのが一時間ほど前なのじゃ」

「いくら何でも急すぎますよ!」

「きちんと使い魔に伝言頼んでおいたのでそのうち起きるじゃろう。それまでは自習じゃな」

「了解、次週まで自習する」

「そこまでしなくていいんだよ!?」


 そもそもナナっさんが教師役を諦めることになったのが、つい先ほどの出来事のようなので、まだジェーンに代役の旨が届いていないのも当たり前の話だった。

 こんな予測不能な事態に先んじて対応できる人なんているはずが……いや、ヘンリーがいるか!

 

 そんなこんなで、ナナっさんがその場で教えるわけにもいかず、しばらくは自習ということになった。

 朝には弱いジェーンだけど、さすがに今くらいの時間であれば起きているはずなので、午後まで待つようなことはさすがにないだろう。

今から急いでやってくるであろうジェーンの姿を想像すると大変に和むけれど、同時になかなか不憫でもあった。

 

 ──というかそうだ! 瓶のことを相談しないとなんだった!

 今なら完璧に暇な時間なわけで、丁度いいかも!


「あのナナっさん! 少し相談したいことがあるのですが!」

「相談? よいよい、儂とラウラウの中ではないか! 存分に話すと良いぞ!」


 ものすごく快く受け入れてくれるナナっさん。

 むしろ頼られることが嬉しいと言わんばかりのナナっさんの態度はいつも滅茶苦茶ありがたい……人生の全てを頼ってしまいたくなるほどに!


 ショタなのにその懐の広さはママレベルのナナっさんだった。

 つまりショタママ!

 実に淫靡な響きだ……いやそうじゃなくて!

 

「夢の話なんですが!」

「ショタママについて口から出ておったが、一旦忘れてやる慈悲が儂にもある。あと、夢占いは専門外じゃな」

「いえ、あの占い的な話ではなく!」


 私は己の失言で顔を紅蓮に染めながら、ローザに話した時と同じように、記憶に残っている範囲で夢のことを話してみた。

 するとナナっさんはローザと違って興味深そうに笑みを浮かべる。

 この辺は性格がでるなぁ。


「ほほーう、ではその瓶は湖の乙女に貰ったと考えるのが自然というわけじゃな。面白いのう~……ただ、それに儂が手を出すとやや厄介かもしれん」

「あれ、そうなんですか!?」

「贈呈されたものを更に人に明け渡せば普通微妙な顔されるじゃろう?」

「あっ、ま、マナー的な問題ですか!」

「うむ、ラウラウの話では湖の乙女はその辺をかなり気にするようじゃからな。それを害すると碌なことにならん」

「そういえばそんな話もありました……」


 夢の最初の方、記憶の中でギリギリ残っているエクシュとの会話の中で、そんなことが確かに話されていた。

 私が先に挨拶しておいた方が礼儀的に良いとか何とか……それは目の前のこの謎の瓶にも当てはまるらしい。


 言われてみれば、貰い物を過剰に疑ってたらそれだけで失礼ではあるかも。

 で、でもアイドルのファンレターとかでは普通だし!

 ……いや私、アイドルなところ欠片もないから当てはまらないな!


「まあ、常識が異なるとはいえ湖の乙女は悪しき存在ではない。そこまで危険視しなくても大丈夫じゃと思うがのう」

「そうなんですか? うちの名剣は気を付けろと言っていましたが」

「ラウラウを主と慕う剣じゃからな。少しの危険にも近付けさせたくないのじゃろう」

「エクシュは過保護なんですね!」

「そんなに過保護だろうか……」


 心外だと言わんばかりの声が聞こえた気がした。

 内容は分からないけれど、もしやエクシュが何か言っている……?


 その言葉を聞き取ることは出来ないのだけど、かろうじて今話したかな?くらいは私にも分かるようになってきた。

 それが分かっても、意思疎通は出来ないんだけどね……あー! エクシュと話せたら夢についても聞けたかもしれないのに!

 

 なんとか会話できないかと私がエクシュをジッと見ていると──イブンがいつも通りの平坦な態度で、信じられないことを口にする。


「そんなに過保護かって。なるほど、かっこいい声はその剣の声だったんだね」


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