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その89 ナナっさんなら、ナナっさんなら何とかしてくれる……?

 かくかくしかじか、まるまるうまうまでローザに記憶している範囲で夢の話をすると、ローザは露骨に怪訝そうな表情を浮かべ、眉を顰める。


「難しいところですわね……夢の世界でラウラ様が剣を得たように、有用なものを与えられた可能性もありますし、逆に普通に危険なものを渡された可能性もないと言い切れるものではありません」

「エクシュはすっごいいい剣だもんね。切れないけど……いや、それは私が未熟なせいらしいし!」

「話す剣は希少なので大切にしてあげてくださいまし」


 夢での会話を経て株価急上昇中のエクシュ。

 現実に戻ってみれば、またいつものへちょい姿に戻っていたけれど、それでもなお、前より威厳があるように見えるから不思議だ。


 そして、この瓶に関しては現時点では何とも言えないというのが結論のようだった。

 まあ、今の時点ではただの謎の瓶と液体でしかないので当たり前なのだけど。

 答えというのは、知った上で出さないと、ただ当てずっぽうに過ぎないからね。


「とにもかくにも中身が分からないと何とも言えないのかな」

「ですわね。調査してもらうのが一番だと思いますわ」


 そうなると誰に渡すかが大事になって来るのだけど、普通に考えればお兄様かヘンリーが最も普通、セオリー通りだとは思う。

 二人とも優秀な上に、三学年になるので使える施設も増えるはず。

 特にお兄様はあの湖のことを気にしているようなので、渡したら喜んで貰える可能性は高い……上手くいけば無茶(ただし慎重派なので割と安全)な調査も取りやめてくれるかも。

 

「お兄様にお願いしてみようかな」

「あら、ジョセフ様は今、お出かけしていたと記憶していますわ」

「あっ、そ、そうだった! 授業終わった後、そんな話をしていたような……」


 昨日の授業の終わり際にそういえばそんなことをお兄様が話していた。

明日は調査で学園を離れるとかなんとか。

 色々と言葉を濁していたけど、多分、『真実の魔法』を消すためにあの夢についての調査に出かけたのだと思われる。

 もしかするとジェーンの地元、トルティーナ村まで出かけたのかも……。

 そうなると二日三日は帰ってこないわけで、お兄様が帰ってくるまでこの瓶は大事にしまっておかないといけないことになるけど。


「ふ、不安!」


 震える手で瓶を握りしめる私。

 それは絶対になくさないぞという意思表示でもあるし、普通にビビッて震えている意味もあった。

 何かの拍子で消えたり、逆に爆発しそうでもあるし、色々と怖い!


「学院長あたりに預けてみるのは如何でしょうか? いや、学院長は危険ですわね……ではヘンリー様が最も適当でしょうか」

「さすがのヘンリーも最近忙しそうだしなぁ……」


 今も生徒会副会長として雑務をこなし、忙しい日々を送るヘンリーである。

 直近でそんな彼の一日を借り受けてしまったこともあるので、しばらくは無理させたくない。

 ヘンリーに何かあったら私なんかより数百倍問題になるだろうしね……国が傾くんじゃないかな?

 

「目を離すのも怖いし、とりあえずは私がしっかり持ってることにするね」

「まあ、誰かに渡すにしろ保持することは避けては通れませんわね」

「あとは今日の教師役の人に相談してみようかな。えっと、今日は誰なんだっけ」

「ナタ学院長ですわよ」


 平然と言い放つローザの言葉に私は耳を疑う。

 き、聞き間違いかな……教師役っていうか教師の上の人の名前が出てきたような。


「えっ!? な、なんって言った? ありえない人の名前が聞こえたような……」

「ですから、ナタ学院長ですわ。学院の長という立場でありながら、あの方は贔屓する気満々なのですわ」

「それって大丈夫なやつかな!?」


 呆れたようにいうローザだけど、事態はそんな呆れるなんて態度で収まる範疇とは思えない。

 受験生の勉強をその学院の長が教えるなんて前代未聞過ぎるよ……!

 というか、明らかな不正では!?

 試験の横流しレベルの問題では!?


「別に自分が試験を考えているわけでもないのでセーフだそうですわ。ただし、その好みは基本の授業内容には反映されるので、当然、試験範囲にも詳しいわけですが」

「色々と問題がある気がする……!」

「しかし相談相手としては適切ですわよ?」

「それはそうだけど……と、とにかくもう時間がないしランニングして、授業受けてくる!」

「その前に、帯をお付けいたしますわ」


 すっと淀みない動きで私の背後に近寄ると、帯をささっと装着するローザに顔を赤くしながら、私はこれからのことを考える。

 教師役としては色々と不適切だと思うけれど、相談役としてはこれ以上ないナナっさんであれば、この謎の小瓶の正体も分かるかもしれない。

 そうじゃなくても、ナナっさんに渡しておけば、大抵の危険は回避できるはず。

 ドラえもんレベルで頼りになる我が学院の長であれば、こうなんか……なんとかなるんじゃないかな!


 そんな期待を持ちながら、私はこんな騒ぎの中でもぐっすりと眠るジェーンの顔を眺めつつ、朝の支度を始めるのだった。





「えー、今日は儂の授業の予定じゃったが、秘書やらなにやらに怒られまくって中止となった」

「そりゃそうなりますよ!!!!!」


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