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その81 頑張ればいいだけだろ?

「全人類がお姉さんみたいになればいい」


 もう想像以上に私の思考と一致した声……駄々洩れボイスを気に入ったらしいイブンはそんなとんでもないことを言いだす。

 いやいやいや! 全人類私は世界が滅びるって!


「それは問題しかないよイブン!?」

「なかなかの危険思想ですね。面白そうですが」

「ヘンリー!?」


 世界の危機を面白そうで一笑するのはあまりにも器がでかすぎる!

 むしろそれを面白そうで済ませるヘンリーにこそ危険思想を感じられてしまうほどだよ!


 ……というか、このままイブンの教育に失敗すると私のせいで世界中全ての人間が嘘をつけなくなるというとんでもない事態になりかねないらしい。

そんなことになったら世は乱れ社会は混乱し国は亡びイブンは魔王になるだろう……それはどう考えてもバッドエンド中のバッドエンドだ!

END11『真実の魔王』みたいなエンド名がつけられてしまう!


 なるほど……どうやらこの試験対策のお勉強会には試験以上に大切なものが掛かっているらしい。

 まさかただのお受験が世界を救う一助になるとは……!

 これはより一層気合も入ろうというもの!


『いや、考えすぎだと思うぞ』


 何やら腰の方から声が聞こえて来たきがするけれど、そんなわけがないので気にしない。

 そう、今は世界を救うことに必死なのだから!


「お勉強頑張って世界を救おうねイブン!」

「お姉さんは足元を掬われないようにね」

「お姉さんの足元そんなに不安定ですか!?」

「生まれたての小鹿のよう」

「それはもう不安定っていうか立つのに命が掛かってますね!」


 明らかに私を使って遊んでいるイブンの様子はなんだかとても楽しそうだ。

 推しが楽しそうなのは素晴らしいのだけど、私で遊ぶのは教育に悪すぎるな……。


「世界を救うには一日の勉強では間に合いません。今日はこの辺にしてまた明日としましょう」

「あっ、もうおしまいですか……残念」

「お姉さんが残念がるのは謎過ぎる」

「明日はジョセフの授業となっていますので、ラウラ、色々と頼みましたよ」

「お兄様ですか……」


 お兄様の授業を受けられるなんて妹冥利に尽きる話なのだけど、不穏なヘンリーの物言いでも分かるように、これには懸念事項がある。

 何というか、お兄様はこう……教えるのはあまり得意ではないのだ。

 有体に言えば、教え下手、教え音痴とすら表現できる。


 完璧超人のお兄様が何故そんなことに……と思われるだろうが、これには明確なわけがある。

お兄様は基本的に無理なら頑張る、それでも無理ならもっと頑張る、というのを信条としていて、人が分からないと言おうものなら「分かるまでやればいい」くらいのことは平然と言ってしまう人なのだ。

分からない人の気持ちが分からない……のではなく、頑張らない人の気持ちが分からない……それがジョセフ・メーリアン。

 普通、努力型の人というのは人に物を教えるのが上手そうなイメージがあるのだけど、お兄様の場合、それが行き過ぎているので例外的に人に物を教えるのに向いていないのだった。

 そんなお兄様を支えるのは妹の仕事だろう。

 明日はしっかりやらなくては……!

 



 ★




 そんなこんなで時は過ぎてもう何度目かの談話室。

 私とイブンの前にツカツカと高い足音を鳴らし現れたのは黒髪長身でいつも通り最高に目付きの悪いお兄様だ。

 悪役的とすら言えるその凶悪な容姿はいつだって私を魅了してやまない。

 というか、この身長差は血のつながりが見えてこないんですが?

 足長すぎるでしょ! 5mくらいあるじゃん足!(ない)

 将来はもう足長おじさんと呼ばれることは間違いないだろう……寄付とかしそうだしね。


「今日は数学を教える」

「えー、魔法じゃないの」


 数学と聞いて不満たらたらなイブンの姿を見て、私は少し前世を思い出した。

 数学、それはもうびっくりするくらい好き嫌いが分かれる学問……実は私も苦手な方だ。

 

「数学と魔法は密接な関係にあるからこそ、当学院でも重要視されている。数学は論理的な思考を育てるが、魔法も自身の脳で思考を積み上げる必要がある。また数字の連なりは魔法陣に応用される。イブンは魔法に興味津々のようだが、これは将来必ず役に立つので、しっかりやるべきだ」

「本当に? めっちゃやる」

「チョロい!」


 魔法を絡められるとまっしぐらで食いついてしまうイブン。

 もう魔法の虜である……これっていい傾向? 悪い傾向?


「とはいえ、俺は教えるのがあまり得意じゃない……分からないところがあったらラウラに聞いた方が効率的かもしれない」

「バンバン聞く」

「バンバン聞くのは良いのですが、お兄様、私、あまり数学には明るくないのですが……」

「学院試験の数学はほぼ暗記科目だ。あくまで数学の入り口に立つことが求められているのであって、深い思考を求められているわけじゃない。ラウラも気負わずにやってくれ」

「りょ、了解しました!」


 こうして様々な不安がありつつもお兄様の授業は開始された。

 数学に不安が残る私に、教師に不安が残るお兄様……メーリアン兄妹に一番向いてない科目にすら思えるこの授業、果たしてどうなるのか。

 

 数十分後──そこには驚きの光景が広がっていた。


昨日は投稿できずに申し訳ありませんでした!

書いたら出すというやり方でやっているのですが昨日は全く動けない日でした……。

基本、毎日更新を目指して投稿していますが諸々の事情で今後もできない日があるかもしれません

長期的には開けないので、そういう時は翌日にご期待くださいませ

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