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その79 魔術師が挟むからそう呼ぶんじゃないの!?

 スラっとした指をこちらに見せつけるように軽く動かしながら、ヘンリーは談話室の入り口の方へと移動すると、一歩廊下へと出た場所から、ピクニックに最適そうな大きなバスケットを持って帰って来る。

 木で編まれたそのバスケットが、今の私には宝箱にしか見えない。

 しかもラストダンジョンにある豪華な見た目のやつ!

 

「とはいっても簡単なもので申し訳ないのですが」


 かなり珍しいことに、ヘンリーは少し気恥ずかしそうにバスケットをおずおずと開ける。

 完璧王子と言えども、いや完璧王子だからこそ、人に料理を作るのは珍しいことなのかもしれない。

 そんな貴重なものをご相伴預かれるとは……さっきから国宝級の扱い受けてない私? 大丈夫? 明日死ぬ?

 

 開かれたバスケットの中から現れたのは──輝くように真っ白なサンドイッチだった。

 間には赤緑黄色と色とりどりの具が整然と挟まれていて、その瑞々しい姿は否応なしに私の食欲をドバドバに誘う。

 

 さ、サンドイッチ! 魔法使いが作ってるからサンドウィッチ? どっちでもいい! ヘンリーの手ずから作られた珠玉の白い宝石箱だ!

 顔の良い人に作って欲しいお弁当ランキング(私調べ)でサンドイッチは不動の一位の地位にある……!

 それをヘンリーがやってくれるとはさすが王道中の王道な王子様!

 ちなみに二位は手作りパンとなっております。

 異論は認める。


「だ、大丈夫かな? 食べたら怒られない?」

「誰が怒るのですか誰が」

「いただきまーす」


 あまりの珠玉を前にしてビビり倒す私だが、イブンはそんなことは何も気にせず目の前のごちそうに大口を開けて食らいつく。

 顔が良いので口の中まで美形である。

 多分、内臓まで美しいんだろうな……。


 私も震える手でサンドイッチをつかみ取ると、意を決し、ガブリとかぶりつくと、口の中いっぱいにジューシーな味が染みわたっていく。

 う、美味い……もはや緊張で舌も鈍ってる気がするけれど、ただ美味いことだけは分かる……。

 こんなの毎日食べてたら私の口もやがて輝きだすかも知れないな……もしくはお色気お料理漫画みたいに服がはじけ飛びかねない。

 そんなの誰得すぎるけども!


「美味しいよヘンリー! 味分からないけど!」

「それは美味しいと言えるのですか?」

「うまいうまい」


 ガツガツと食いまくるイブンにつられて私も次のサンドイッチを手に取り口に頬張っていく。

 推しのお弁当、無限に食える気しかしない……まあ、コラボカフェとか行くと限界を思い知ることも多々あるんだけど。

 基本量が少ないのに、たまにめちゃくちゃなボリュームのときあるんだよね……。


「どうやら満足していただけたようで安心しました。さて、食べながらでいいので聞いて欲しいのですが、どうやら彼の吸収力はこちらの想像を遥かに超えているようです。このままいけば試験までに間に合うと思いますよ」

「やっぱりイブンはすごいんだね」

「すごすぎますよ。こんな逸材がまだ潜んでいたとは」


 さしものヘンリーでもイブンの成長速度には驚きを隠せないようで、もりもりメリメリと昼食に勤しむイブンの姿を興味深そうに眺めている。

 

「じんぞー人間だから、超人的なのはそういう風に作られているので当たり前」

「ほう、やはりホムンクルスですか」

「ヘンリー知ってたの!?」

「知ってたのというか、見れば分かるでしょう。雪のように真っ白な肌と、透き通るような髪の毛、そして性別を超越したような容姿……これらは作られた人間の特徴です」

「そ、そうなんだ……!」


 てっきり秘密にされていると思いきや、イブンが人造人間、ホムンクルスなことはバレバレだったらしい。

 冷静に考えてみれば……こんな美しすぎる人間なかなかいないもんね!

 見た目からもう明らかに普通ではない!


「見た目も自分で作れるのにわざわざ醜悪にする理由もあまりないのです。それにホムンクルスというのは究極の人類を目指す者が作りがちですので、結果的に容姿も究極的な、中性的で美しいものになりやすいですね」

「製作者の意思の問題で美しくなるんだ!?」

「どうせなら誰でも綺麗なものを作りたいですから」

「それはまあそうだろうけど!」


 ホムンクルスともなれば、その制作過程に置いて様々な栄養的問題が付きまとい結果として儚げになる……っと思いきや容姿周辺は製作者の趣味の問題だったとは!

 なんかこう……俗!

 

「髪の色が違ったらお姉さんもちょっとホムンクルスっぽい」

「はい!? ど、どこが?」

「栄養足りてない感じが」

「遠回しにちびって言ってます?」

「はっはっはっはっはっは!」


 イブンにからかわれる私の姿にヘンリー大喜びである。

 もうびっくりするくらい楽しそうに笑っているけど……いや、そんな愉快そうに笑うのは初めて見たよ!?

 

「はっはっは! いやいや、ちびは良くありませんよ。ただラウラの美しさの分類も儚げと呼ばれるものに属していますから、確かにジャンルは一緒ではありますね」

「えっ、私、儚げ!? ばかなげとかじゃなく?」

「新語を作らないでください。ありませんよ、馬鹿なげなんて言葉」


 馬鹿なげ

 読み方:ばかなげ

 いかにもすぐに馬鹿になりそうな様子。馬鹿であろうと思われるさま。

 形容詞「馬鹿ない」が、接尾語「げ」により体言化した形。


 こんな感じの意味合いだろうか……私にピッタリ!


最近感想返信が滞っておりまして申し訳ありません!

返信文考えるのがびっくりするくらい苦手なのですが、感想は本当にありがたく思っているのでお気軽にお願いします!

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