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その62 炎柱

 

 空へと伸びる円柱はよく見ると少し回転しているようで、それは炎の竜巻を形成しているようだった。

 つまり炎柱!

 えんばしらじゃないよ! それは鬼殺隊の人!

 

 よもやよもやの事態に戸惑っていると、やがて炎は少しずつその姿を消していく。

まるで夢だったかのように、後には平和な学院の姿が残るだけだった。

 えっ? まだ夢の中ってオチじゃないよね!?

 夢落ちは最大のタブーのはず!


「どうやら運動場の方から伸びていたようだが」


 お兄様は落ち着いて窓の外をのぞき込みつつ、見解を述べる。


「お兄様冷静ですね! 私はもう夢幻の類かと思ってましたよ」


 お兄様とは違い、帰宅から即のファイヤートルネードに面食らう私だけど、同時にオタク脳が勝手にフル回転して答えを導き出していた。

 風と火属性の複合……こんなことが出来るのは一人しかいないはず!


「もしやグレンの魔法では?」


 そう、風と火の魔法はグレンの得意とするものである。

 ほかにこの二つをハイレベルで兼ね備えた人物はいなかったはずだ。

 少なくとも登場人物の中には。


「いや、あいつにここまでの大規模な魔法は無理なはずだ」

「旅行期間中に急成長を遂げたのかもしれません! お兄様の背のように!」

「俺の背は確かに十三あたりでかなり伸びたが……」

「とにかく見に行くしかないじゃろう」


 気軽にそう言うと、ナナっさんは窓を開けるとそこからひょいっとジャンプして、空を飛んで行ってしまう。

 あ、当たり前のような飛行!

 魔法使いはこういう時便利!


「俺たちは普通に歩いていくとしよう」

「ですね! そちらの方が健康にもいいですもんね!」

「空を飛ぶのが不健康というのはちょっと面白いですね」


 私たちは気軽に空を飛べるほどではないので、素直に校舎を歩いて運動場へ急ぐことにする。

 なんだか旅行が始まってから帰宅してもなお、ずっと歩きっぱなしなので、もしかすると明日当たり筋肉痛で動けないかもしれないなと少し恐怖しながら私は階段を下りた。



 ★



 運動場へ来てみると、そこにはグレンが頭を掻きながら困ったように炎の跡が残る地面を眺めているところだった。

 私の予想通り、グレンはいたけれど、果たして本当にあの炎柱の犯人はグレンなのか。


 というか、あの、久しぶりに見るとグレン……かっこいいね!?

 えっ、こんなかっこよかったっけ!? ワイルドでちょっとぼさっとした赤髪が映えすぎじゃない!?


「グレン! 久しぶりー!」

「おおっ、ラウラじゃねぇか! 帰ってきてたのか」


 いつもぶっきらぼうなグレンも今日ばかりは優しく迎え入れてくれるので、私は嬉しくなってしまう。

 そして嬉しくなると意思の力強く表に出てきてしまう!


「グレン! ちょっとイケメンレベルが急上昇してない!? 世界の急上昇ワード一位なんじゃないの!? #グレンイケメンすぎ診断とかトレンド1位にありそう! 男前が上がるって言葉があるけれど、まさにそれっていうか、二枚目超えて二兆目くらいあるんじゃないかな! それだと町内みたいになってる? 二丁目の男みたいに言われても意味不明だもんね。二極目にしておこうか! 10の48乗だよ! いやぁ、本当に顔が……良すぎて……男子三日会わざれば刮目して見よっていうけど、私も気合を入れて刮目しないとだね……!」


 興奮のあまりしゃべり倒す私に、グレンは苦笑いで応える。


「相変わらずだなお前も! いや、まあ、褒めてくれたのはありがとうよ」

「それでグレン様、炎の柱はグレン様が生み出したのですか?」


 私の後ろからひょいっと現れたジェーンにグレンは驚いて、後方へ50㎝ほど飛び跳ねる。

 まるで猫、いや虎!


「じぇ、ジェーン!? か、勘違いしてるかもしれないから言い訳しておくが、俺はラウラに褒められてうれしくはあったがそれで心変わりしたわけではなくてだな……」

「あの、勘違いしてませんし大丈夫ですので」

「そ、そうか」


 しばらく離れ離れになることで愛の進展があるかもしれないと少しは思っていたのだけど、グレンとジェーンはまだ少しぎくしゃくしているように見える。

 告白失敗の傷が癒えるのはまだ長そうだった。

 というか、脈がなさすぎるよジェーン!


「炎は俺が出したんじゃなくて、そこのやつがやったんだよ」


 グレンが指差す先には銀髪の美少年が、ナナっさんと何かを話している。

 銀髪の美少年なんて一種類しか存在していないはず!

 男とも女ともつかない美しい容姿、長い髪、そして鋭い目つき。

 あれはイブンだ! 学院にいるなんて珍しい!


「イブンがあの炎をやったんですか!?」

「そうなんだよ。俺がいつも通りここで魔法の練習をしてたらこっそり覗き見てきてな、仕方ないから呼び出してちょっと魔法を教えてやったらあんなことになった」

「そこで教えてあげようとするところはさすが優しいねグレン」

「別に、暇だっただけだ!」


 顔をそらしてツンデレするグレンの姿は素晴らしく尊い。

 しかもグレンがイブンに魔法を教えていたなんて、うわー!超見たかったなぁ!


 そして、イブンがあの炎を生み出したという話で、私は大事なことを思い出した。

 そうだ! イブンの得意魔法は、その思考を読む力から発展した『コピー魔法』なんだった!


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