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その291 お告げと言うかもはや告げ口


 トラコさんにお悔やみ申し上げたところで、あまりの騒がしさに流石に妹様が目を覚ました。


「悲鳴で起きたのは初めてかも」


 目をこすり体を起こす妹様。

 これで私の猫金縛りの術(猫によって動けなくなる現象の事)から解放された。

 解放されたけれど……名残惜しい気持ちもある! くっ、術を解いても苦しめてくるとはなんと高度な技だろうか!


「すいません、騒がしくしてしまって。悲鳴目覚ましはちょっと目覚めが悪くなりそうですね」

「案外気分いいよ。気に入ったかも」

「気に入られても困りますが!」


 日々の目覚ましが悲鳴というのは流石に猟奇的過ぎる。

 そんな生活していたらそのうちシャワーが血になってしまいそうだ。

 

「というか、トラコのあんな声は初めて聴いた」

「ああ……いえ、その、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいです……」

「どうして? 良いことだと思うわ」


 幻滅してもおかしくない光景だったと思うけれど、しかし妹様は何処か楽しげだった。


「隙がある方が人間味あるじゃない?」

「人間味ですか」

「完璧なメイドも好きだけど、隙のあるメイドも好きなの」


 トラコさんは確かに人間になったばかりなので、人間味が増したと言うのは間違いのないところだろう。

 知ってか知らずか、なかなか確信を突いた一言である。


「それにしても変な夢を見たわ……本当に変な夢を」

「えっ? ……ど、どんな夢ですか?」

「私が無敵な夢なの。自分だけ無敵って、なんだか夢にありがちよね」


 上を見ながら語る妹様の表情は本当に夢を思い出しているようで、なんだか不思議な気持ちにさせられる。

 事件にかかわる記憶は完全に消えたのかと思いきや、夢という形で部分的に残っているらしい。

 今の妹様にとって無敵はもう現実ではなく夢なんだなぁ……。


「でもなってみたら無敵ってつまらないものだったわ。なんだか一人ぼっちみたいな気持ちにさせられた。暇なものだから暴れてみるんだけど、それもつまらないの。そんな風に過ごしてたら──すっごい怖い魔女に捕まっちゃったの」

「すっごい怖い魔女?」

「身の丈3mはある恐ろしい魔女だったわ」

「そんなにですか!?」


 話の流れを考えればその怖い魔女と言うのはジェーンのことだと思うけれど、ちょっと誇張されすぎていた。

 小さい頃は何でも大きく見えるものだけど、恐怖でジェーンのことは更に大きく見えたらしい。

 まあ、空も飛んでたし、見上げて見るという意味では巨大に感じるものなのかも。


「それで無敵の力を奪われちゃって、いい子にしないと爆死する呪いをかけられて目を覚ましたの」

「爆死する呪いとは!?」

「悪い子になると私の頭が爆発四散するんじゃない?」

「恐ろしすぎる!」


 恐怖が恐怖を呼んでよく分からない夢になっていた。

 爆死の本家と言える松永弾正久秀さんでも頭が爆散してはいないと思うなぁ!


「起きてトラコの声が聞こえてきて、それでとっても安心したわ。やっぱり無敵なんてくだらない。敵がいないことよりも、そばに味方がいる方がずっと大事で、ずっと面白いもの!」


 にっこりと笑う妹様のお顔は太陽のようで、私は見惚れて言葉が出なかった。

 大変だったあれこれは全部無かったことになってしまったけれど、トラコさんの言う通り、妹様の中にしっかりとあの出来事は残っていて、それが彼女の成長に繋がっている。

 それはとっても素敵な話だった。


「ところでトラコって女装してるって夢の中でお告げがあったんだけど」

「そんなお告げあります!?」


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