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その286 トラウマは容易には消えない


「まあ、まだ混乱してんだろう。しばらくそこで休んでな」

「は、はいぃ……」


 結局、推しに押し切られるがままに(最近押しが推しに変換されすぎる)、私はベッドの中で待機し続けることになった。

 膝に妹様が乗っかっているので動けないというのもある。

 猫がいると動けない現象みたいな感じだ。


 そんな猫めいた妹様の頭を一撫でして、グレンは寝室を去って行く。

 後に残されたのは私と妹様の二人だけ……と思っていたところに、背後から急に声がかかる。

 私は猫のように目を見開いて振り返った。

 

「大変なことになってしまい、申し訳ありません」

「あれ、トラコさん? いや、なんでそんなところに?」


 窓際にかかったピンク色のカーテン、その中に身を潜めていたのはなんとトラコさんである。

 子供が隠れる場所に選びがちな位置だけど、足が丸見えという弱点が大人になって来ると分かって隠れなくなる場所でもある。


 いや、そもそも大人はかくれんぼしないんだけれど。

 しかし実際にトラコさんはしているわけで、謎すぎる状況だと言えた。

 しかもトラコさんの顔は何故か青ざめている。

 ……その時点で少し察するものがあるけどね。

 トラコさんが顔を青くするの、ジェーン関係だけだもん。


「いえ、あの、結果的にジェーン……様がお尻強者みたいなことになってしまって、それで怒っているので逃げている最中なのです」

「な、なるほど……」


 私は女子のお尻いくら大きくても良い説を提唱しているくらいなのだけど、普通の女の子からすれば『大押し競饅頭大会優勝者』の称号は不名誉すぎたらしい。

 気にしなくてもいいのに……推しのお尻は惜しまず押し出して欲しい。

 

「捕まったら私のお尻が二つに割れてしまいます……」

「それはもう割れていると思いますが」

「ではお尻ぺんぺんで二倍に腫れあがってしまいます。ジェーン様のお尻より大きくなるのは嫌です!」

「本人の前でそんなこと言ったら二倍では済まない可能性がありますよ?」

「秘密にして頂ければ……あっ、出来ないんでしたか!? やばいです!」


 『真実の魔法』の前ではこの言動も筒抜けになってしまうと気付いたトラコさんは、流石にというか、珍しく動揺して視線を右往左往させていた。

 ジェーン関連ではとことん弱いなトラコさん……。

 もしもの時は、お尻を冷やすための氷でも用意してあげよう……。


「あれ、そういえばジェーンはトラコさんは認識にズレがないんですね」

「私とジェーン、そしてラウラ様は元々影響を受けていませんから、今回も同様です」

「そういえばそうでしたか。ええっと、妹様は……?」

「妹様は……もう『信じる魔法』もありませんので」


 普通の女子となった妹様もまた、認識はドラゴンから押し競饅頭になっているらしい。

 ということは、今回の件で真実を知っているのは私たち三人だけということなのか。

 それもなんだか寂しい話ではあるけれども……まあ、良かったと思おう。


 これで私一人だけとかだったら、これまでの全部が夢だったのかと思い込むところだったからね。

 或いは、実際こうなってしまうと夢も同然なのかもしれない。

 ただ同じ夢を見ていただけなのかも。


「屋敷は燃えなかったし、ドラゴンもいなかった……そういうことになってしまいましたが、ラウラ様、私は絶対に忘れることはありません。あなたたちへの感謝を」

「い、いえいえいえいえ! そんなそんな!」


 深々とこちらに頭を下げるトラコさんに対して応える言葉が分からず、私はバタバタとしてしまう。

 私、相変わらず大したことは出来てないからね!


「それと、妹様も認識はすれ違っていても、あの時感じた思いは今もその胸に残っていると思います」

「それは良かったです!」

「そしてジェーン様への恐怖も……」

「それも残ってるんですか!?」


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