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その283 サトリに迫られて悟る


 背中越しに伝わってくる双丘の感触は、エベレストの如き存在感を放っている。

 一歩足を踏み外せば死にかねない危険な山だ。

 息が切れ切れになっていくのも高山病が原因なのか……!

 

 ド貧乳な私にはないものなので、過剰に、ともすれば男子のように気になってしまう自分がいた。

 巨乳なお方は谷間への視線に敏感らしいけれど、あれは意外と女子も見てくるらしいので、おっぱいには男女問わず人を惹きつける何かがあるのかもしれない。

 それにしても……あ~~~~~~~たまに血が上り過ぎて倒れそう。

 

 しかし、ここで倒れていたのでは迷惑がかかる。

 歯を食いしばり、私はやわの攻勢を耐え続けた。


「ぐぎぎぎぎ……」

「ラウラ様? なにやら女子らしからぬ声?軋み?が聞こえてくるのですが大丈夫ですか!?」

「わ、私が爆発する前に早く……!」

「そこまで身を犠牲にしてる感じなのですか!?」

「ラウラ……お前、男だぜ」

「女ですよね!?」


 状況が理解できていない様子のジェーンだけれど、この場でこの苦労を理解してくれるのは悲しいかなグレンだけである。彼だけが励ますような目でこちらを見てくれていた──代われるのなら代わって上げたい! 

 でも、私のような似非おっさんメンタルならまだしも、真の思春期男子には流石に威力が高すぎて全身から血を吐き出して死にかねないから、私が何とか食い止めるよ……!

 頑張れ、私の脳みそ!


「妹様、私は妹様越しに抱きしめてスペースを確保しようと思います」

「えっ!?」

「わ、分かった! えい!」

「ええっ!?」


 徳俵に足をかけて、土俵際ギリギリで頑張っているところに予想外の伏兵が現れた。

 妹様がこちらの無い胸に顔を埋めたかと思えば、更にその後ろからトラコさんが抱きしめて来たのだ!


 ま、まさか単に抱きしめてくるだけでは終わらず、ダブル抱きしめだってぇ!?

 三人でサンドイッチのようなポーズを取るのは雑誌のピンナップとかではたまに見るけど、まさかこの身で好みのシチュを受けることになるとは!


 しかし、確かにこれはスペースの確保が出来て効率的と言える。

 密着率も上がって成功率も格段に上がりそうだ。

 だけどですね……私の心臓を爆発させるのにも効率的なんですよ!?

 いわばこれは効率的に人を殺す兵器ですよ! 人道的だけども! 人道的兵器という矛盾!


「なるほどいい作戦。お兄さん」

「ああ、イブン、内側に入れ」

「えッッッッッッッッッッッ!?」


 恐ろしいイブンの提案とそれに乗っかるグレン。

 い、妹様とトラコさんはまだ女子だから(片方女子ではない)大丈夫だけど、二人はヤバいって!

 迫ってくるグレンとイブンははまるで哀れな子羊を喰らいにきた狼である。

 お、推しが私を殺しに来ている!!!!!!


 本格的にマズい! そんな私×イブン×グレンなんてサンドイッチになってしまったら、私邪魔過ぎるし、私興奮しすぎるし、私ヤバすぎる!

 我が人生最大の危機に、私の息は一時停止する。

 しかしまだ心臓を止めるわけにはいかない……けどこのままでは心停止不可避、ど、どうすればいいんだ!? この私の部分が壁なら何も問題ないと言うのに!


 ──いや、そうか! 私は壁! 推したちの支柱となるただの壁なんだ!

 死に近付いたせいか、高速回転する私の脳は唐突にある天啓を得た。

 それ即ち、私、壁理論である。


 この構図、私という存在が壁であれば、グレンがイブンに壁ドンをしているだけの理想的萌え展開である。

 しかも壁なら特等席でなんの邪魔もせずに眺めていることが出来る!

 私にも二人にも良い! 八方両得!


 そうだったんだ……私はあくまでも添え物、メインはこの目の前の、推しが推しくら饅頭する光景だったんだ!

 何を勘違いしていたのか、これは私を抱きしめているのではない……私を道具にみんながイチャついているんだ!!!!!


 そうと決まれば私は壁らしく、心を殺すとしよう。

 過度な反応を取っているようでは壁足りえない……ただ心静かに眺めていればいい……。

 私は一時的に悟りの境地を開いた。

 森羅万象に感謝を……全ては諸行無常……観無量寿経……酔生夢死……色即是空……。


「なんかお姉さんがものすごく無の表情になっているんだけど」

「死んでねぇか心配だが、その時はもう蘇生の方で頑張るしかないな」


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