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その275 トラウマ必至


 こちらの驚きも気にせずにジェーンはぶん殴って倒したドラゴンの尻尾を掴むと、グルングルンとぶん回し、壁に向かってぶん投げる!

 掟破りのぶん三連打!

 今のジェーンにはもう『ぶん』という擬音が似合いすぎていた。

 風格あり過ぎです。


 逆に壁に激突し床に倒れ伏すドラゴンの姿にはもはやモンスターの王者の風格はどこにもなく、ちょっと可哀そうに思うほどである。

 理屈としてはジェーンから見たトラコさんへのイメージがこれくらい弱弱しいということなのだろうけれど、それが分かっていてもなお、ドラゴンをぶっ飛ばす姿には途方もない迫力があった。


 確かにここまでの衝撃映像なら、妹様の固まったドラゴンイメージを変えることも出来るかも……。

 そう思いつつちらりと妹様の様子を窺うと──妹様は拳を掲げて、何事かを叫んでいた。


「がんばれー! トラコー! 負けないで!!!!」

「そっち応援しちゃいますか!?」

「だって、なんか癪なんだもん!」


 それはまさかの声援だった。

 確かにこの状況で応援したくなるのは、負けているドラゴンの方かもしれないけれど、それ以上に妹様としては負けるトラコさんの姿を見たくなかったのかもしれない。


 そしてその妹様の声は効果絶大だったようで、まるでプリキュアの応援上映かのようなその幼い励ましに、ドラゴンの目が輝きを取り戻す!

 子供のエールで再び立ち上がるのは胸熱だけども、そっちが主役的な展開に!?


「申し訳ないですが、容赦はしません……!」


 しかし徹底してボコるようにお願いされているジェーンは、立ち上がったドラゴンに対して再度拳を振るう!

 拳は今までと同じように顔面にさく裂した──けれど、そこからが違った。

 ドラゴンは吹っ飛ばずにそのまま耐えたのである。

 つ、強くなっている!


 敗北から立ち上がった者が、それまでのダメージを無視して強くなるというのはもはやお約束な流れだけれど、それが今ここで!?

 ともすれば、ドラゴンさんの強靭な精神力を褒め称えたくなるけれど、しかし、これは恐らく妹様の影響だろう。


 ジェーンにボコられるトラコさんを見て、妹様は『強いドラゴン』のイメージを再構築したのではないだろうか?

 応援が本当に援護として成立していた可能性が高い。


 だとすれば、強さを取り戻したドラゴンに対してジェーンは劣勢……!

 心配で思わず目を瞑りたくなるのを我慢して、目ん玉かっぴらいてジェーンの方を見ると──今度は顔面に蹴りを叩きこんでいるところだった。


「えーい!」


 可愛らしい掛け声から繰り出されたその蹴りは、可愛らしくない勢いで再びドラゴンを壁際まで吹き飛ばす!

 そして先ほどまでと同じように、ドラゴンは床に倒れ伏した。


 つ、強い! 強いけど……なんで蹴りは通じているの!?

 えっ、こ、拳じゃなくて蹴りなら通じるとかそういうレベルの話なの?

 ……いや、もしかしたら、本当にそういう話なのかも。


 あくまでもあのドラゴンの強さを構築しているのは妹様のイメージだ。

 だから、その発想はまだ幼く、いびつ。

 拳に耐える姿はイメージしたけど、蹴りに耐える姿はイメージしてなかったんだ!?


 ただ単純に考えると、このまま戦いが続けば学習して立ち上がり、学習して立ち上がりを繰り返し、全ての攻撃を耐えるイメージが構築されて、無敵のドラゴンが出来上がるのではないかという心配もあるけれど──けれど、それはちょっとあり得なさそうだった。

 だって、そんなに何度も倒されたドラゴンに……強いイメージはもう持てないから。


 言ってしまえばこうして吹っ飛ばされている最中にも、ドラゴンは弱体化を続けている。

 だってもう、誰の目から見ても明らかに──ジェーンの方が強いんだもん!


 実際はジェーンが最強とかではなく、あくまで『信じる魔法』にジェーンが対抗できるというだけの話なのだけど、しかし、目の前でドラゴンをボコボコにする少女の姿はやはり鮮烈だった。

 そのタネが分かっている私ですら「ジェーンってもしかして世界一可愛くて世界一強い究極生命体なんじゃないだろうか?」と思い始めているくらいだ。


 当然、それは妹様の目から見ても同じである。

 妹様は目を丸くして呆然と倒れたドラゴンを見つめていた。

 うん、これはそうなるよ。


 だって応援してたキャラが自分の声援で立ち上がって、その後普通にボコられたんだよ!?

 映画館なら子供の泣き声で大変なことになってるレベル!!!!!


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