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その269 不憫だけど不便ではない


「ジェーン、それでどうして精霊さんを追いかけていたの?」


 二人の会話を永遠に聞いていたいので、話の間に入るのも忍びないのだけれど、事態は刻一刻を争うので心を鬼にして私は尋ねた。

 くっ、もっとイチャイチャを聞いていたかった……!


「あっ、はい、あの、ラウラ様がいなくなってすぐに追いかけようとしたのですが、そこの精霊さんに壁を塞がれてしまいまして、ひとまず彼をどうにかしない事にはどうしようもないと思ったんです」

「ああ、壁が壊れていたら危ないからでしょうね。彼は働き者ですから」

「精霊さん、常識人だなぁ……」


 奇妙な見た目だけど根は物凄く普通な精霊さんだった。

 なんというかとても不憫で、それだけで私なんかはちょっと好きになっちゃうくらいである。

 不憫キャラはポイント高い!


「ジェーン……様、それでご協力お願い出来るでしょうか」

「元々トラコが心配で来たんだから、当然協力させてもらうよ。そもそもトラコをぶん回すつもりだったから、当初の予定から変わってないしね」

「それはもう実質殴り込みに来てますね……頼もしいです」


 一度決めたら最後まで貫く強メンタルの持ち主のジェーンは、ドラゴン相手でも怯むことがない。

 私ならドラゴン殴ってこいと言われたら、自分の拳が砕ける心配をするけどね。


「問題は道が分からないことなのだけれど」

「それは精霊に案内させます」

「精霊さん酷使しすぎじゃない!?」


 門番をして吹っ飛ばされて迷宮の管理をして追われて騙されて捕まって妹様に拷問されて更に案内までさせられる精霊さんである。

 これは精霊とドラゴンの関係は共生関係と言うか、奴隷契約って感じがしてきたかも。

 大丈夫? 最終的にハンガーストライキとかしちゃうかもしれないよ?


「今、私の体は恐らくマスクをつけられた状態だと思うのですが……」

「あっ、マスク作戦は成功してたんですね?」

「はい、それで変身が停止していると思うので、ジェーン様にはあえてそれを外して貰います」

「ドラゴンになったあなたを倒すことで、妹様の中にある悪しきドラゴンのイメージを変えようってことよね」

「そういうことです」


 百聞は一見に如かずという言葉があるように、人は他人の言葉より自分で見たものを重要視する。

 ドラゴンについて口で説得するより、実際に目で見て貰った方が早いのは間違いのないことだろう。

 特に妹様の考えは幼少期からの教育によるものなので、その意思を変えるのは容易ではなく、儚げな女の子がドラゴンをボコるという衝撃的な映像を見てもらうのが一番だ。


「……でも、本当に出来るかな。倒す倒す言っているけれど、私も自信があるわけじゃないんだけど」

「ジェーン様なら大丈夫ですよ。適当にぶん殴って貰えればそれで」

「私のパンチに期待を寄せ過ぎじゃない? 自分で言うのもなんだけど、か弱いほうだと思うよ?」

「はっはっは、またまた、何をご冗談を」

「トラコ、もしや私を怪獣か何かだと思ってる?」


 ジェーンのパワーに信頼を置きすぎなトラコさんだった。

 普通に考えればジェーンがドラゴンを殴っても傷一つ付かないだろう。

 けれど、そこに『信じる魔法』と『ジェーンがドラゴンをボコボコにしていた過去』が組み合わさると、一気にジェーンの戦闘力は向上する……という理屈だそうだ。


 いや、妹様の『信じる魔法』の効力が落ちるわけで、どちらかと言えばドラゴンの戦闘力が弱体化するって言った方が正しいかな?

 まあ、要するに、ジェーンはトラコさん相手に特別強いのである。

 幼少期の強弱が大人になっても続くと言うのは、結構リアルな話なのかもしれなかった。


「ジェーン様にとって私をボコるのなんて赤子の手を捻るより簡単だとは思いますよ」

「そんなごつい手の赤ちゃんはいないから。いや、今のあなたの手は綺麗だけど」


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