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その266 軽い命を狩る光景


 直感的過ぎてぱっと見では何も分からないのがスマホの欠点である。

 だからこそこれはアメージングな発明と言えるのだけど、異世界人にいきなり使って貰おうと言うのは流石に無茶すぎた。

 と言っても、私もこのスマホ型のナニカを使って精霊さんと連絡する方法は、寡聞にして知らないのだけども。


 ひとまず私は電話の機能だけでもトラコさんに伝えてみた。

 するとトラコさんは納得したように首を縦に振る。


「なるほど、そういう魔法の媒体なのですね。そう言われてみれば、この石の質感などなかなか神秘的です。もしや純度の高い貴重な魔石ですか?」

「そんな大層なものではないです! ……でも、魔法みたいに思えるのは分かります。謎めいていますし、なんか神秘的ですし、仕組みが謎ですし、魔方陣型充電器とかありますし」


 なんとなくで使っているけれど、よくよく考えて見ればスマホはまるで意味の分からない代物である。

 これ一つで何でも出来てしまうなんて、魔法以上に魔法的だ。

 高度に発展した科学は魔法と区別がつかない……という名言が世には伝わっているけれど、スマホはまさにその言葉を体現していると言えた。


 けれどこれは魔法ではないので誰でも扱うことが出来る。

 科学とは再現性だ。再現性があるからこそ、同様の手順を踏めば平等に同様の結果が得られる。

 そこが魔法との大きな違いだと思う。


「では精霊とラインを繋いでみます」

「精霊と線を繋ぐ的な意味合いだと思いますが、奇跡的にアプリを使うみたいな発言になっている!」


 誰でも使えるので当然異世界人にも使えるし、メイドさんでも、ドラゴンでも使える。

 トラコさんがスマホを片手に何やら念じるように眉間に指を当てると……画面にぱっと炎の精霊さんの顔が浮かび上がった。


「すごい、映像付きなんですね。驚きました」

「いや、私も驚いてますよ!?」


 使い方全然違うけど、結果的になんとかなってる!?

 さすがスマホ! これが感覚的操作か!


「トラコさん、電話の際は『もしもし』というのが決まりです」

「あまりにも謎の風習ですが了解しました。もしもし、精霊ですか?」


 少しの魔を用いて繋がった電話から、少しの間を挟んで声が返って来る。

 それは慌てた声だった。


「ドラゴンさんすか!? マジ助けて欲しいんっすけど!!!!」


 軽い口調でお馴染みな精霊さんだけど、その時の声は不思議と焦りに満ちていた。

 何かあったのだろうか。


「むしろこちらが助けて欲しくて連絡しているのですが、どうかしましたか」

「今、命狙われてるんっすよ!」


 命が狙われている!?

 尋常じゃない話に思わず息を飲んで驚くけれど、トラコさんの反応は私とは対照的に冷静だった。

 いや、冷静っていうか、もはや興味無さげですらある。

 なんか髪の毛を指でくるくる回してるし! 暇な女子高生かな!?


「………………そうですか」

「反応軽ッ!? 命の危機っすよ!?」

「あなたの命は床の埃みたいなものですから」

「マジ酷い!」


 びっくりするくらい扱いが雑な精霊さんだった。

 割と不死な存在とはいえ、流石に不憫である。

 せめて埃ではなく綿毛と言ってあげて……!


「それよりも、至急妹様とそのそばにいる女性を連れてきて欲しいのですが」

「あっ、それっすよ! それ!」

「それ?」

「その女の子たちに追われてるんすよ!!!」

「えっ、ジェーンと妹様に追われているんですか!?」


 思わず声を上げて横から画面を覗き込むとそこには──空を飛んで精霊さんを追いかけるジェーンとその背に乗った妹様の姿が!

 なにこのドラゴンボールみたいな光景は!?

 どういう状況かまるで分からない!!!!


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