その265 もはや携帯電話という表現に違和感を覚える
道中で陽キャ感あふれる精霊さんに一度出会っているけれど、彼?を頼るということだろうか。
でも、一度吹っ飛ばしちゃってるんだよね……。
「精霊とドラゴンは共生関係にあるんです」
「へー! イソギンチャクとクマノミみたいな感じですか」
「たとえは分かりませんが恐らくそんな感じだと思います。炎の精霊は竜のそばで魔力を美味しくいただくと言う恩恵を受けていて、その代わり、私たちドラゴンは精霊を使役できるのというわけです」
共生関係、それは異なる生物が互いを補いながらともに生活することを意味する。
例えばイソギンチャクは毒を持っているのだけど、クマノミはその毒が効かないという体質を有している。
だからクマノミはイソギンチャクの中に隠れることで身を守ることが出来る。
一方、イソギンチャクもまた天敵をクマノミが追い払ってくれるという恩恵がある……こんな感じで彼らは相互利益を生んでいる、らしい。
これはあくまで説に過ぎないのだけど、精霊とドラゴンは実際にウィンウィンの関係を結んでいるようだ。
「私は悪しき竜に変えられてしまいましたが、精霊は変わっていません。こちらの言う事を聞いてくれるはずです」
「なるほど……あれ? でも精霊さんはなんかバリケードを張っていましたけれど……」
別段、敵意剥き出しというわけではないけれど、少なくとも協力的ではなかったような……。
「それは空気を読んだのでしょうね」
「そんな気遣いみたいな働きだったんですか!?」
「彼はコミュ力とノリの良い精霊ですから、言われる前に動くタイプなのです」
「出来る陽キャだった!」
出来ない陰キャという出来る陽キャの真逆に位置する私としてはちょっと憧れちゃうところがあった。
陰キャという生命体は心の何処かで陽キャを羨ましく見ている部分があるのだ……。
パリピになってみたい気持ち……なくはないです!
「あの、そんな出来る陽キャさんを吹っ飛ばしちゃったんですが……」
「ああ、もう生き返っていると思うので大丈夫ですよ」
「命が軽い! 羽のように!!!」
「命は一度きりだからこそ尊いことが分かりますね」
リスポーンできると命が死にゲーみたいになってしまうというデメリットが発覚した。
残機が99あるマリオさんの命とかもう誰も気にしませんもんね。
もしかすると命が軽いからこそ性格も軽くなるのかも……。
「魔力のラインが繋がっているので、普段は離れていても会話可能なのですが……この空間では少し難しいですね。ラウラ様、アメージングなイメージをください」
「驚異的な心象ですか!?」
「はい、何か連絡に使えそうなアイテムのイメージをお願いします。ラウラ様のイメージなら、この空間の縛りを突破できると思うので」
急に無茶ぶりをされてしまった!
いきなりアメージングを要求されたら、どんなデザイナーでも困っちゃいますよ!
「えー、そんなこと言われても咄嗟には……ちょっとスマホで調べてもいいですか?」
「──いやなんですかその謎の板は」
「はっ!? い、いつの間に!」
調べ物をしようと無意識のうちにスマホを取り出した私だけれど、それがもうイメージになっていたらしい。
スマホって他の機能が強すぎて忘れがちだけど、そういえば電話だった! これでいいじゃん!




