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その245 お嬢様闘法


「更に念には念を入れて、これをあげる」

「えっ、あ、ありがとう……これなに?」


 イブンが手渡してくれたのは謎の黒い紙だった。

 その中心には白い棒人間らしきものが描かれている。

 本当になにこれ?


「これは身代わり紙、魔力を発することで魔物の注目を一瞬だけ引き付けられる……けど、絶対じゃないし効果のほども微妙だからあんまり期待しないように」


 なるほど、どうやら魔法道具の類らしい。

 いざとなったらこれを囮に逃げろと言うことか……ちょっと頼りなさげな見た目をしているけれど、そこはエクシュと同じで見た目以上の効果を期待したいところだ。

 それにしてもイブンは何処でこんなアイテムを調達したのだろう。

 疑問に思っているとグレンが先に質問してくれた。


「よくそんなの持ってたな」

「働いたお金でゴーレムの研究がしたくて、その第一段階として買ったもの。初めてのお賃金の品」

「すっごく大事なものじゃないイブン! 受け取りにくいよ!?」


 初めてのお賃金でこれを購入すると言うのもイブンらしい不思議さだけれど、そんな人生の記念碑的な物を私が受け取るのはめちゃくちゃ忍びなかった。

 お年玉を奪う母親のような心ぐるしさがある!

 

「別にただの使い捨てアイテムだから。言うなれば飴ちゃんをあげるのと同じ」

「そんなおばちゃんみたいなノリなの!?」

「お姉さんが使う分には本望だから……それでも気になるなら、後でなにか奢って」

「わ、分かった! 焼肉奢るからね!」

「お姉さんはもしや焼肉を奢りの究極系だと思っている?」

「ち、違うかな?」


 男子はみんな肉が好きだと思っていたのに!

 そこそこの小食の癖に焼肉に対して夢を見すぎな私だった。


「よし、もしもの時のセーフティも用意できたし、始めるとするか」

「始めちゃいますか……」

「お姉さんは作戦通り暫くここで待機ね」

「あっ、はい」


 私の役目は二人が作った隙を見てエクシュを回収すること。

 勿論、ただ単に飛び出すだけでは即死は必至なのでそこで一工夫入ることになる。

 その一工夫とは……シャンデリアだ!


 最初に私がトラコさんの背に乗っていた時にも見えていた豪奢なシャンデリア、脳筋作戦はこれを利用する。

 そう……あれをトラコさんに落とすのだ!!!!!!!!!!!!!

 いかに強固な鱗を持っていようとも単純な質量の落下には敵わない。押しつぶされて必ず一定時間動けなくなるはずだ。

 その巨大な隙をついてエクシュを取り戻し、更に出来ればそのまま斬りまくって戦いを終わらせる!

 

 ……これが脳筋作戦の全体像である。

 あまりにも豪快、あまりにも雑、あまりにも力業!

 最初に保留されたのもさもありなん、無理からぬことだった。


 この屋敷に入ってからというもの、ずっとパワープレイを続けてきた我々だが、そのパワープレイもここに来てついに極限に至った感じだ。

 なんだかんだでシンプルな力業は単純明快な上に効果的で、戦も物量作戦で押しつぶすのがやっぱり最強だし、こうなったらこのまま脳をバルクアップさせていくしかない。

 覚悟しろトラコさん! シャンデリアが相手になるぞ!!!!!!!


 こうして事態は人間VSドラゴンの構図から、シャンデリア+人間VSドラゴンの構図への移っていったのだった。

 人間とシャンデリアの夢のタッグ、これは意外とそこそこお嬢様らしい戦術なのでは?

 新たなる戦法、シャンデリア闘法! これは流行すること間違いなし!


「口から思考が漏れ出ているけど、流行る要素無さ過ぎるだろ」

「ごめん、間違いないのは私の脳の暴走具合だけだった!」


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