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その242 イケコンボ


 魔法的なものの考え方は常識の遥か上を行く宇宙理論なので、咄嗟には理解できない。

 そんな私の姿を見て、イブンはすぐに要約してくれた。


「ざっくり言うと、人になっている時のトラコは登場人物欄のドラゴンという項目を塗りつぶして人間と書き換えている状況」

「分かりやすーい!」

「今のドラゴンになっているトラコは、その書き換えた人間の上にドラゴンと強引に書いている感じ……だと思う」


 つまり『ドラゴン→塗りつぶす→人間→その上にドラゴン』という過程を経て現在に至っているわけらしい。

 酷い書類だ。新しいのを用意した方が良い。

 

「だからその上に書かれたドラゴン要素をエクシュで消そうってことなんだね」

「そんな感じ、ただ……」

「ただなんだよ」

「……戦う必要がある都合上、危険性が高い」

「た、戦わないとかぁ……」

「えくしゅかりばーで斬り付け続ける必要があるから」


 強引に加えられたドラゴン要素を消しゴムの様にエクシュで消す、エクシュ消しゴム作戦を選んだ場合、どうやら戦闘は避けられないらしい。

 戦闘……私から最も程遠い言葉である。

 その遠さたるや天と地、火と水、宗谷岬と波照間島。

 

「安心しろ、ラウラ。全部俺がやるからよ」

「グレン! ……うーん、いや、それはそれで超申し訳ないから」

「面倒な奴だなお前は!」


 青ざめる私を励ます様に力強いことを言ってくれるグレンだけど、私はグレンにも無茶はして欲しくない面倒なやつなのだった。

 推しの危険に晒すくらいなら、自分で戦った方がいくらか心が楽……なのだけど、流石に怖すぎてそこまでの強固な決心は持てない。


「というか、エクシュはお姉さんの剣だから、お姉さんが使わないと十全に実力を発揮できないよ」

「えっ!? そ、そういうもの?」

「そういうもの」

「マジかよ……そりゃヤベェぞ」


 イブンの言葉を聞いて今度はグレンが青ざめる。

 そして私の顔は青より蒼く染まっていった。

 つまり、それは、わ、私が前に出て戦わないといけないってことで……しかもドラゴンを前に!

 これは獅子を前にしたウサギも同然である。

 いや、そんな言い方はウサギさんに失礼か……障子紙より弱い私なのだから!


「ドラゴンを前にしたラウラということわざを作りましょう」

「意味は?」

「美味しく召し上がれって意味です」

「食べられちゃ駄目だろ! ラウラ、無理しなくていいからな。別に他に方法があるだろうし、なんなら多少無茶でも俺がえくしゅかりばーで戦ってもいいんだしよ」


 グレンの優しさは留まるところを知らない。

 意志薄弱でよわよわな私としては、グレンの優しさにズブズブのズブに甘えたい気持ちもあるのだけれど……そんな気持ちを甘受するわけにはいかなかった。

 私に甘いのは卵焼きだけで十分!

 推しだけを危険に放り込むオタクが何処にいるというのか!


「いえ、やります! 一刻も早くトラコさんを元に戻してあげたいですし、私に出来ることなら何でもします!」

「その言葉はありがたいんだが……巻き込んだ上に危険な役目までさせるのは流石にな」

「お兄さん、そう思うのなら全力でお姉さんを守ろう。長引けば長引くほど、手遅れになりかねない」


 イブンの言う通り、このまま放置していればどんな被害が出るかも分からない上に、トラコさんが元に戻れるかも不明瞭になってしまう。

 それが絶対ではないけれど、早ければ早いほど良いと思われた。

 そしてグレンもそれが分かっていて、それでもなお私への危険を考えて迷っていたけれど……しかし、迷っている時間すら惜しいと思ったのか、少しの逡巡で覚悟を決めたようにこちらへ向き直る。


「……そうだな、分かったラウラ。お前に傷一つ付けさせないと誓う」


 不意打ちでとんでもないイケ顔イケボイケ台詞が飛んで来たもので私は……思わず心臓を抑えた。


「ぐふっ……」

「なんで戦う前から死にかけてんだよ!」


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