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その237 紙飛行機、堕ちる


「それで紙は」

「はい?」

「だから、紙飛行機なら紙がいるだろ。持ってるのか」


 冷静な指摘に顔を青ざめながら、恐る恐る持って来ていたカバンの中をあさると……入っているのは無口強制マスクと後は小道具程度、紙は入っていなかった。


「…………………………も、持ってません!」

「根本的なところが駄目じゃねぇか! ばかー!」

「すいませんすいません! 紙なんてあって当たり前だなんて思ってすいません!」


 紙は何処にでもあると言う前提の元で動きすぎていた!

 いや、勿論どこにもないってほどのレア物ではないのだけど、少なくとも現代日本ほど溢れかえってはいないし、この場にもない!


「紙飛行機作戦大失敗です……!」

「失敗っつーか、そもそも作戦として成り立ってもいなかったつーか」

「どうしましょうか……ここから書庫に移動して本を回収してちぎりますか?」

「迷宮化してるから書庫にたどり着けるか果てしなく謎だぞ」

「嗚呼……完全に終わってます……」


 紙が手に入らないだけで紙飛行機作戦がまるで紙屑の様にみすぼらしくなっていく。

 これではイブンだけを起こすことが出来ない……!


「なあ、一つ疑問なんだが」

「この紙屑に答えられるものなら何なりと……」

「すぐにネガりやがって。あのだな、別に紙じゃなくてもいいんじゃねぇの」

「はい? カミジャナクテモイイ?」

「なんで急に未開の部族みたいになってんだよ。別にぶつけられるなら何でもいいんじゃねぇの。風で起こしてもいいし。むしろ紙飛行機は軽すぎて目覚まし足りえない可能性高くねぇか?」

「………………そ、その通りすぎて何も言えません!」


 紙飛行機に拘りすぎていた!

 そうじゃん! 別に何でもいいじゃん! なんなら紙飛行機は不適切まであるじゃん!

 どうして紙飛行機に私の脳は支配されていたのだろうか……前世知識で解決しようとし過ぎて、物事を複雑にとらえ過ぎていただろうか。

 これでは逆知識無双である。

 

 冷静になってくるにつれてどんどん恥ずかしくなってきた。

 紙飛行機て! 発想が小学生の更に下を言っているよ私!

 もっとうまく前世の知識使え!


「あああああ……」

「なんで急にうめき声を上げながら蹲ったんだよ」

「己のアホさにほとほと呆れてしまいまして……ラウラ・メーリアン改めダメダ・メーリアンです……」

「まあ気にすんなよ。むしろそうやって恥ずかしがって何も提案しないことの方が悪いことだと俺は思うぜ」

「グレン……ありがとうございます」


 グレンの言葉はその通りだ。

 羞恥心で動かないことこそが一番恥ずべきこと……それは私が一番理解しているはずのもので、十分反省したはずのものだったはずなのに、もう忘れてしまっていた。

 そうだ、私の羞恥心なんて犬に食わせてしまえばいい。

 いや、お犬様に申し訳ないな……えっと、わ、私の羞恥心なんて私に食わせてしまえばいい!

 今は蹲っていないでやるべきことをやるんだ!


「そうでした、私はもう恥ずかしがって黙ってばかりの女はやめたんでした! 強制的にですが!」

「おう、じゃあとりあえずトラコが暴れた際に破損したこの大理石の岩をぶん投げようぜ」

「それは流石に重そう過ぎませんかね!? イブンの天使を超越した神々しいお顔に傷がついたら流石に怒りますよ!」

「す、すまねぇ……じゃあ、この石ころを」


 こうして紙飛行機作戦は石ころ作戦に変更になった。

 石が紙に勝るなんて、じゃんけんなら反則だけど、現実はそんなものなのかもしれない。


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