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その231 ○○そう度

 

「そして千切ったカーテンをエクシュに結んで完成っと」


 チギリニストたちの手によって用意されたカーテンをエクシュにしっかりと結んでいく。

 鞘に入れたまま結ぼうかとも思ったけれど、私に推しからのプレゼントをぶん投げる勇気はなかった。

 その為抜き身の剣に結ぶことになってしまってちょっと危ない絵面になったけれど、ご安心ください、エクシュは切れ味が絶望的なので安全です。

 小枝も切れないからね。切れるのはその明晰な頭脳だけ。

 

「いつ見ても面白い剣ね。オモシロソードだわ」

「確かに面白そう度は高いとは思いますが」


 子供が落書きした様な見た目のエクシュをニヤニヤと眺める妹様。

 この外見は全面的に私のせいなので申し訳なさMAXなのだけど、エクシュ本人が気に入っているので何も言えない。

 つまらなソードよりはましだと思いたいところだ。


「それでは投げます。紐が付いたことでむしろ投げやすくなりました。任せてくださいね!」


 言いながらグルングルンと紐を回し始めるジェーンは何処か楽しそうで、見ているだけで微笑ましい気持ちにさせられる

 トラコさんの作った空間で過ごすうちに、テンションが幼少期に戻りつつあるのかもしれない。

 きっとドラゴンの尻尾を握ってこんな風に回してたんだろうなぁ……。


「というか、エクシュは回転して大丈夫? 三半規管ぶっ壊れない?」

「主よ、剣に三半規管はない」

「えっ、じゃあ無脊椎動物なんだ!」

「動物でもない」


 回転するとうえっとしてしまうのが生物の性だけど、剣にそんな機能はないらしく、回されながらもエクシュは平然としていた。

 むしろ遠くなったり近くなったりしている声を聞いている私の方がちょっと酔ってしまいそうなくらいだ。

 

 そしてこの紐に結んで投擲する方法だけど、思い付きでやったにしては非常に効果的なやり方だと思う。

 古来の戦場に置ける主な死因は『投石』であると聞いたことがあるけれど、それもただ投げるのではなく紐を用いた投石器の力が大きいはずだ。

 有名なところだと彫像で有名なダビデさんは、この投石でゴリアテを倒しているほどである。


 ……いや、冷静になると別にそんな巨人兵士を殺すほどのパワーを必要とはしてないな。

 なんでちょっと飛距離を大事にし始めたのだろう!?

 ま、まあ、最終的にエクシュを引き寄せる過程で偵察も進むから、遠くに投げる分には悪い事はないのかな……?


「いきますよー! うりゃー!」

「ああ! まるでエクシュがハンマー投げの様に!」

「ハンマー? えくしゅかりばーは剣でしょ」

「いえ、ハンマーを投げるという意味ではなくそういう競技がありまして……ハンマー投げという名称だけど別にハンマーは投げないんです」


 等と説明しているうちに、エクシュは勢いよく壁の穴へとすっ飛んでいく。

 空を貫くように突き進み、やがて霧の中に姿を消したエクシュ。あとは何かにぶつかる着弾の音を待つばかりなのだけど、待てど暮らせどなんの音も聞こえてこない。

滅茶苦茶穴の向こうがフワフワで、音を吸収したとか?


「エクシュー! 聞こえてるー?」


 ひとまず穴に向かって声をかけてみるけれど、声は返ってこない。

 ただ霧が不気味に揺れるだけだった。

 ……や、やばい、不安になって来た。

 無事だよね? エクシュ?


「紐を引っ張って回収しましょう」

「そ、そうだね……あれ、滅茶苦茶重い!?」


 心配にかられた私は焦って紐を引っ張るけれど、不思議なことにビクともしない。

 あれ、エクシュは私でも携帯出来るくらい軽いはずなんだけどな?

 何か壁の曲がり角にでも引っかかっちゃったのだろうか。


 そう思いつつ何度か引っ張ってみるけれど、やはり重くて引き上げることはできない。

 いや、重いと言うよりこれは、向こう側から引っ張られているような……?

 背が低いという理由だけで綱引きの先頭に立たされた記憶が蘇ってくる。


 その時だった。紐が霧の中にすごい速度で引きずり込まれていったのは。

 そして私に咄嗟に手を離すような脳も反射神経もなく、一緒に霧の中へと突っ込んでいってしまう。


「ひょえ~~~~~~!?」

「ラウラ様!?」


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