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その213 ぎゅー!ぎゅー!


 とにもかくにも、私の羞恥心と引き換えに妹様とローザは滅茶苦茶仲良くなっていた。

 ローザと手を繋いだ妹様はルンルンでその手を振っている。

 まるで姉と妹の様な微笑ましさがそこにはあった。


 もうなんか、短期間で仲が良くなりすぎて、哀れな私は若干の仲間外れすら感じてしまうほどです。

 謎の寂しさの正体は一体?


 ああこれは……三人組で一人あぶれるやーつだ……!

 この型に嵌ってしまうと、仲良く話す二人の後ろをトボトボとついていくことになってしまう!

 あと靴の紐とか結んでるときに置いていかれる!


 なんて私の傷心はさておき、これで『素直の魔法』をかけることは可能になった。

 ひとえにローザのトークスキルの賜物である。

 

 あとは屋敷の人たちの所へ顔を出していたグレンの元へ、魔法をかけた妹様をお届けすれば任務完了だ。

 そしてこれが事前に魔法をかけておいた妹様です。


「本当に魔法かかってる? 何一つ違いを感じないわ」


 これといった変化がなくて妹様は不満げだった。


「それは根が素直ってことですわね」


 妹様は元々が素直なお方なので現時点では露骨な変化はないらしい。

 そうだよね、特に何かを隠そうとかそういうことしないもんね。

 まだ無邪気な彼女にとって素直さは標準装備らしい。


「とはいえ兄の前では素直になれないという話なら、グレンの元へ行けば変化があるはずじゃろう」

「そうですね。妹様、そんなわけでグレンの元へ行きましょう」

「ちょ、ちょっとまって、心の準備が」

「では心の準備運動をすればいい」

「心の準備運動って何!?」

「まずは心の手を伸ばして背伸びの運動」


 妹様はイブンにコーチされながら謎の心の準備体操第一を行いつつ、愛しの兄様の元へ移動する。

 その道中でナナっさんは帰宅してしまった。何度も言うように忙しい人なのでこれは仕方がない。

 忙しい人はそもそも生徒のフリッフリな衣装を見るために抜け出して来ないって? はい、それはもう、何もかもその通りでございます。


「ラウラの調子はどうだ?」

「大変良くやってくれています。妹様にも可愛がられていますし」

「それはあの格好を見れば一目瞭然だな」


 グレンは廊下でトラコさんと話しているところだった。

 廊下の影から様子を窺うが、今は話しかけるなら絶好のチャンスに見える。

 何故か先ほどに続き話題が再び私なのが気になるけれど、それは私の心の準備体操が不完全なので極力気にしないように頑張ろう。

 

「妹様、これ以上私の話題をこの世界にばら撒くわけにはいきません。止めてきてください!」


 頑張れなかった。


「ラウラ様、落ち着いてくださいませ。目的がズレていますわ」

「でも出ていく必要はある。妹様、レッツゴー」

「ちょっと待って! まだ心の準備体操第十二が終わってないから」

「いったいどこまであるんですの。心の準備体操」


 妹様はまだまだグレンの前に出ることを羞恥しているようだった。

 気持ちは分かるけれど、これでは事態が進展しない。仕方がないので背中を押すことにする。言葉ではなく、物理的に。

 無敵な妹様だが身体能力は普通の少女なので、その体重は非常に軽く、簡単に廊下の影から追い出すことに成功した。


「ぎゃー! ぎゃー!」


 何やら叫んでいるが気にしない。

 「ぎゃー!」は聞き間違いで実際は「ぎゅー! ぎゅー!」って言っている可能性もある。抱きしめて的な意味合いですね。


「おや、そこにいるのは妹様ではありませんか」

「なにしてんだ、マイシスター」

「あわ、あわわわ……」


 もう偉く騒いでいたので即座に見つかってしまう妹様。

 さあ、素直の魔法をかけられた妹様は兄の前でどうなってしまうと言うのか……!

 


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