その209 不審ショタ
昔、おじ様の手によってかけられたという『真実の魔法』は既に解除されているはずのナナっさんだけど、それとは関係なしに素直過ぎる性格をしていた。
まさかあの段階から既にみられていたとは……。
あれ? という事はつまり、私の恥ずかしファッションショーも見られていたと言うことに……?
「儂がラウラウのレア衣装を見逃すはずがないじゃろ!!!!!」
「本当に見られてた上にこちらが悪いみたいな言い方!?」
「威張って言う事じゃない」
イブンがいつもの冷ややかな視線を更に冷たくしてナナっさんを睨む。
その視線はもうれいとうビームだった。
そしてナナっさんは何故か自信満々すぎる!
永久に見逃しまくって欲しいのに!
「言ってくださいよー! 恥ずかしすぎますから!」
「じゃって、言ったら見せてくれんじゃろうし……」
「勿論見せませんよ!」
現状のフリッフリですら見られたくないなのに、これ以上なんてあり得ない話だった。
「なら儂の行動はやむを得ないものじゃったという事で」
「何一つ納得出来ませんが、レアシーンを目撃したいという気持ちだけは理解できます……」
イベントスチルの見逃しは重罪である。
クリア後に見ることの出来るイベントCG欄。そこに穴があいている時の絶望は計り知れないものがある。
オタクとしてここは広い心で受け止めるのしかないようだった。
ナナっさん相手だしまあ良いとしよう。切り替えて行こう。
「ええっと、ナナっさんにお願いしたいことがあって呼んだのですが……いや、ギリギリ呼んでないな。お願いしたいことがあってナナっさんを呼んでいないのですが、お話を聞いてくれますか? ……と思ったけど、多分もう聞いちゃってますよね?」
「うむ、呼ばれておらんけど来たし話も既に聞いている」
「なんなのこの人、なんなのこの人、なんなのこの人!!!!!!!」
あまりに非常識なナナっさんの言動に、先ほどまで呆気に取られていた妹様も流石に正気を取り戻し、ブンブンと拳を振り回す。
分かりますよ、妹様。なんなんでしょうねこの人。
でもそこが魅力なんです……!
いつか分かる日がきっと来ます……!
「妹様落ち着いて、ただの不審者だから」
「一番落ち着いちゃ駄目じゃないの!」
「もうその通りすぎて反論の余地もありませんが、妹様、どうか今は受け入れてください……!」
「儂の扱い酷いのう」
冷静になればなるほどナナっさんの怪しさは凄まじいものがあった。
子供の見た目で辛うじてバランスを取っているところがあるもんね。
そしてそれは同じ子供の妹様にはあまり効果がないのかもしれない。
「『素直の魔法』を使うんじゃよな?」
「はい、安易かもしれませんが……」
「いや、『素直の魔法』の使い方としてはこの上なく正しい。むしろこの問題解決に『素直の魔法』を思いついたことを褒めてやりたいくらいじゃ。頭撫でても良いかのう?」
「あっ、はい、どうぞ」
しばしナナっさんに頭を撫でられ顔を赤くした。
子供に頭を撫でられることほど素晴らしいものはない。
「小さなおてての感触、ありがとうございます!」
「うむうむ、ではそこのちびっ子に魔法をかけてやりたいのじゃが……」
ちらりと妹様の方を窺うナナっさん。
妹様はイブンとこそこそと何かを話していた。
「滅茶苦茶不安なんだけど、大丈夫?」
「魔法の腕前だけは世界屈指だから大丈夫。多分」
「多分をつけないで! 多分じゃ多分駄目だと思うの!」
滅茶苦茶不安がってるな妹様。
いや、無理からぬことだけど!
「受け入れて貰わないと使えんからのう。あれでは無理じゃ」
「ああ、そういえば妹様もそのようなことを言ってましたね」
そもそもあれだけ不安そうな雰囲気を出している人に魔法をかけるのも問題かもしれない。
ナナっさんの怪しさに実害が出てしまっていた。
うーん、ナナっさん以外の人が『素直の魔法』を使えれば良いんだろうけれど、そんな人に心当たりはないしなぁ。
「ならば、ちょうど儂が『素直の魔法』を教えている奴がいるから、そいつにかけて貰うのはどうじゃろう」




