その205 目からドラゴン
そもそもイブンは勉強も優秀だし運動も出来るし魔法も抜群に得意なので、かなり完璧超人な存在である。
しかも容姿は極上天使と来ている。眺めているだけで眼球の極楽行きが確定だ。
「そもそも何か勘違いしている」
そんなイブンが指を一本立てて話していると、まるで神の代弁をしているようである。
神聖な光景がここにはあった。
今のイブン、女装メイドだけど……。
そういえばそこについてのツッコミがグレンから出なかったな!?
それくらい自然だったってこと?
「な、何を勘違いしてるって言うの」
「──友達作りと家族と仲良く出来るかは無関係だと思う」
ズビシッっと指差されながら伝えられた言葉に、私は稲妻に撃たれたような衝撃を受けた。
「言われてみれば確かに……!」
「えっ、そ、そうなの!?」
妹様は完全にその二つを同一視していたようで心底驚いているけれど、実は私も良く分かっていない。
だって私、友達とも家族とも仲良く出来たことあんまりないからね!
でも確かにお兄様と私は友達と言った感じではない。
兄と妹、その関係としか言えないものがある。
私にとっては推しでもあるのだけど、それはお兄様としては理解の及ぶところではないだろうしな……。
「友達が多い人でも家族と上手く行っていない場合もある」
「そういうものなんだ……知らなかったわ」
「はい、目から鱗です」
「大丈夫、こっちも最近知ったことだから」
何故か自慢そうな顔をしているイブンだけど、それ、もしかして最近知るのもおかしなことなのでは?
私が言う事ではないけれど、まさかここにいる人たち、誰も常識がない……!?
イブンはこう見えてまだ生まれたばかりの幼さだし、妹様は正真正銘子供、そして私はメンタルが永遠の子供だ。
……私が一番駄目じゃん!
なんだよメンタルが永遠の子供って! それただ成長出来てないだけだから!
これではいけない! 私が一番お姉さんなのだから私が一番頑張らないと!
「イブン、家族と友達が別なのは分かったよ。その上で聞きたいけれど、私たちはどうしたらいいと思う?」
なんかちょっと冷静ぶってみたけれど、言っていることは他力本願もいいところだった。
もしや私は他力本願寺の住職……?
「まず相手から仲良くしたいと思って貰わないと仲良くは絶対に出来ない。そしてグレンは仲良くしたいと思っている」
「ほ、本当に? 兄様、そう思ってくれてる?」
「断言できる。何故なら心が読めるから」
「説得力がすごい!」
単に「仲良くしたいと思っていると思うよ?」なんて曖昧な意見ではなく超断定的な意見。その力強い言葉に妹様は嬉しそうに口元を緩ませる。
そりゃあ間違いないよ。だって心、読んでるんだもん。
「グレンはいつも妹様を気にかけている。降って湧いたような出逢いだったけれど、その出逢いを大切にしようとしている」
「……そうか、イブンは私と兄様の関係が分かるのね」
「えっ、えっ、な、何かあるんですか?」
何やら意味深な会話を続ける二人についていけない私。
まるで急流をいかだで下るような不安がある。
「別に秘密にしてることでもないんだけど……私と兄様は義理の兄妹なの」
「えーーーーーーーーー!?」
妹様から告げられた真実に思わず叫び声を上げてしまう。
じゃあ妹様は義理の妹ってこと!?
それって……それって……
「一番萌えるやつじゃないですかーーーーーーーー!!!!!」
「も、もえ?」




