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その204 友達は数じゃないし……(震え声)


「えっと、わ、私のボッチは真なるものですから!」

「そんなに主張されても逆に困るが……」

「今は『真実の魔法』でおしゃべりになっているだけです」

「あっ、へ~……そういう面もあるんだ……」


 『真実の魔法』に恩恵的な面があるとはまるで思っていなかったようで、妹様は素で驚いていた。

 まあ、これは元々の私が喋らなすぎるせいだろうけれど。

 RPGの没個性な主人公くらい喋らなかったからね。選択肢でのみ話します。


「お兄様とも最初は話せなかったんですよ。というかまともに顔を合わせると顔面大炎上してました」

「あっ、私も! 私も兄様を前にすると顔燃える! 物理的に!」

「すいません比喩です!」


 私とは恥ずかしがりのレベルが違う妹様だった。

 うかつに比喩が使えない!


「とにかく、兄様と仲良くしたいのになんか恥ずかしくなっちゃって」

「お悩み理解出来ました。グレンはかっこいいですし仕方ないですよ」

「えっ!? す、すき、だったり、するの?」


 そういうのに興味がある年頃なのか、それとも単純に兄を取られたくない嫉妬なのか、機敏にこちらの言葉尻に反応する妹様。

 しかし言葉にするのは難しい気持ちなので非常に説明に苦慮する。


「好きなのは間違いないのですが色恋とはまた違うと言いますか、うーーーん、要するに私は推しが幸せならそれでいいのです」

「おお……な、なんか大人……」


 別段大人の意見でも何でもないのだけど、何故か尊敬を集めてしまった。

 そして妹様の悩みも分かってきた。

 普段は子供っぽい女帝と言った雰囲気の彼女だけど、大好きな兄を前にすると緊張してうまく話せないということらしい。


 なんと可愛らしい悩みだろうか。

 あんなに自信満々な妹様がしおらしくなるなんて、心がドッカンドッカン震えてしまう。

 それは否応なしに協力したくなるほど可愛らしくて、そして愛らしい悩みだった。

 しかもグレンと妹様の絡みを見られたら私も眼福だ! 得しかない!


「むしろこちらから協力させてくださいとお願いしたいくらいなのですが、問題が一つ」

「なに?」

「仲良くなる方法を私も知りません──教えて欲しいくらいです!」

「この頼りにならないメイドめ!」

「すいません!」


 我ながら駄メイドすぎた。

 妹様も怒ってぽこぽことこちらを叩いてくる始末である。

 ダメージはない。どころかむしろなんか心が回復しているくらいなので、ヒーリング攻撃という世にも稀なものだった。


「友達多そうだしお喋りだから期待してたのに!」

「ごめんなさい! それらは全て幻影の様なものなんです! ゆめまぼろしの如し……!」

「まあ、ラウラは愛玩メイドだからそれでいんだけど」

「愛玩メイドとは!?」


 愛玩、要するに可愛がる対象のことである。主におもちゃか小動物に対して使います。

 ついに面と向かってペットかおもちゃと言われてしまった。

 そんなに? 私ってそんなに小動物?

 少なくとも妹様よりは大きいよ!?


「じゃあ、どうしよう……」

「どうしましょうか」


 スキル【友達作り】のレベルがお互いに0な主従コンビが結成されてしまった。

 どうしようどうしようと二人で繰り返していると、背後から声をかけられる。

 それは滅茶苦茶透き通った声だった


「話は聞かせてもらった」

「い、イブン!」

「任せて欲しい」


 いつの間に近付いて来ていたのか、自信満々なイブンがそこにはいた。

 腕組みとかしてるし!

 

「は? いや、あんたは無表情だし全然友達多そうに見えないのだけれど」


 妹様から割と的を得た意見が飛び出すが、イブンはなおも腕組みをしたままこう宣言した。


「入学から数日で友達の数はもう両手で数えられなくなった」

「ぐっ……!」

「やめてあげてイブン! 友達マウントは良くないよ!」


 こう見えて友達作りマスターなイブンなのである。

 


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