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その202 着せ替えラウラちゃん人形


 そんなこんなのなんやかんだで私はメイドな日々を送った。

 そう、メイドの中のメイド、メイドインメイドになるために……!

 と言うのは冗談で、実際の私の仕事の殆どは妹様に遊ばれることだった。


 時に一緒に料理を作ったり(この世の泥を全て混ぜたような味がした)。時に勉強を教えたり(教科書が景気よく燃えた。突然の焚書)。時に鬼ごっこをしたり(逃げて追いかける遊びではなくただひたすらに妹様が鬼な遊び)して楽しく過ごした。

 私は子供のおもちゃにされるのが大好きな人種なのでかなり楽しんだものの、イブンは果たして平気なのかやや不安だった。しかしそれは杞憂で、流石と言うべきかイブンはどんな理不尽も飄々と乗り越えてしまう。


 さすが推し。さす推し。

 むしろ一緒になって私で遊んでるくらいである。

 なんで私の近くの年下はみんな私で遊ぼうとするの?


 そんなある日、妹様が提案してきた遊びは屋敷にある衣装を引っ張り出してとにかく私に着せていくというもので、これにはさすがに羞恥心がヤバババーンだった。

 早い話が妹様の着せ替え人形にされるわけで、もう、なんか、こう、ヤバい。


「可愛い可愛い! 今度はこれを着て!」

「ハイ……ワタシ、ナンデモキマス」

「心が死んでいる……」


 着せ替え人形にされた人間はだんだんと自我を失い本物のお人形さんの心持ちに近付くものなのである。

 現在の私の心モチモチはひたすらに己の今の姿を自覚しないように心を殺す、という逃げの姿勢でいっぱいだった。

──ワタシハニンギョウ……ワタシハニンギョウ……ハズカシクナイ……ハズカシクナイ……。 

 

 そして十着目、私に似合わないフリッフリのドレス……現代的に言うとゴシック・アンド・ロリータに着替えたところで、彼はやって来た。

 何を隠そう妹様のお兄様、グレンである。


「うおっ、すごい格好してるな」

「ふぇん!? グレン!? ちょ、ちょっと待って!!!!!! これは偽りの私だから!!!!!!」


 妹様や特にこういったことに興味を示さないイブンならまだしも、同世代の男子にこの姿を見られるのは流石に羞恥心も限界だ。

 そりゃお人形の呪いも溶けてしまうというものだった。

 

「いや、滅茶苦茶似合ってるじゃねぇか。さすがだな、妹」

「あ、ありがとう、兄様……」


 平然と似合っているなんて推しに言われれば水が上から下に流れるように、ごく当然の流れとして私の顔も赤くなるのだけど、おかしなことに妹様も真っ赤になっていた。

 何故妹様も? あくびみたいに私の赤面につられて? 赤面ってそういうものだったっけ……。


「グレーン……来るなら言ってよー」

「丁度時間が空いたから見に来たんだよ。面白いものが見れてラッキーだったぜ」

「アンラッキーもいいところだよ!」

「あとでこれをネタにジェーンと談笑してやる」

「談笑するのは滅茶苦茶いいんだけど……超素晴らしいことなんだけども……! これをネタにするのはやめてー!」


この話がジェーンに伝わると、何故だろうか、ジェーンからも着せ替え人形にされる気がしてならない。

 そんなことになったらもはや私の自我は完全に崩壊するだろう……しかし推しに話題を提供出来たと思えば、私の自我くらい安いものだろうか。

 うう、悩む。


「イブンも元気か」

「現金稼ぐ為にも元気にやってる」

「そうとは思えないほどの無表情だが、それなら良かった」

「グレン、そういえばこの間話してたことなんだけど──」


 イブンとグレンが2人して話込み始めたのを見て、私はこのゴスロリから脱却するために、こそこそと部屋を出ようとしたのだけど……がっしりと妹様に腕を掴まれてしまう。

 逃走失敗。大魔王からは逃げられないのか……!


「ちょ、ちょっといい?」

「今すぐにでも服を脱ぎ捨てたい状態の私に何か御用でしょうか」

「痴女は駄目!」

「裸の方がもしかすると恥ずかしくないかもしれません……」

「そんなわけないでしょ! それよりも、あの、兄様のことなんだけど……」


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