その201 抱き枕の時給を至急教えて!
「抱き枕は交代制にしておくとして~」
「死にますよ? 私が。私への暗殺計画か何かですか?」
「認識阻害がどうして起こっているのかが気になるわよねぇ~」
毎日ナマ美少女抱き枕なんて用意されたら私は私を唾棄してお先真っ暗になっちゃう!と言うのはさておき、認識阻害の理屈はなかなか謎だった。
そもそもジェーンはともかくどうして私にも効果が無いのかが分からない。
一応、私も魔力はすごいらしいから、それなのかなぁ。
「実は~私もドラゴンに対してはまだかなり懐疑的なのよねぇ~……どうしてなのかしら~、かなり受け入れがたい~……」
「ニムエさんにも効果あるんですか!?」
「今の私は超弱体化してるから~」
ポキュポキュとか可愛らしい足音がしそうなほどにロリロリな今のニムエさんだが、その見た目相応に弱くなってしまったのはかなり痛い。
元は神話的な強さを誇っていたらしい……まあ、記憶の無い時の私が倒しちゃったらしいけれど、それは反則みたいなものなので、ノーカウントで。
そうかー、ずっとニムエさんが微妙な反応をしていたのはそういう理由があったのか。
「もしかすると私の場合~、別のドラゴンの認識阻害も受けているのかも~……と言うのも~、多分~、ドラゴンは夢世界と同じようなところから来たと思うのよね~」
「そうなんですか?」
「正しく認識出来ないのって世界の違いから出るものが多いからね~」
「ああ、なるほど」
おじ様が前に話していたことを思い出す。
ええっと、異世界から転生してきた私の場合でも、その前世の話を他者は世界の違いからうまく認識することすら出来ないとかなんとか。
この辺はもしかするとニムエさんよりおじ様の方が詳しい分野かもしれない。
なにせあの人は専門分野『世界』だから。
今度会いに行くときに色々聞いてみるのが得策だろう。
タバサさんについても聞きたいし……実はあの人が一番謎なんだよね。
「おじ様ならドラゴンについても知っているかもしれません」
「知っているか知っていないかで言えば知っていそうですよね。私としては、その、タバサさんが危険な人物でないのか聞いてみたいですが……」
「ジェーンはタバサさんのこと苦手だよね」
「苦手と言いますかなんと言いますか……」
非常に歯切れの悪いジェーン。
よほどファーストコンタクトが悪かったと見える。
私の目の前に現れた時は謎めいた人くらいの印象だったのだけど、ジェーンの目の前に現れた彼女はどんな感じだったのか、逆に興味がわく。
かなりの怖いもの見たさだ。
「まあ~もっと情報が必要ね~、妹様についても謎だし~、とにかく仲良くしてちょうだい~」
「了解しました!」
結局、まだまだ屋敷で奉公を続ける必要がありそうだった。
まあそうじゃなくても、全然辞めるつもりはないんだけどね。
「じゃあ~次の議題は抱き枕のシフト割を決めるわよ~」
「バイト感覚で何を言ってるんですか!?」
「私はいつでも入れます。祝日の急な対応も大丈夫です」
「ジェーン!?」
歴戦のアルバイトかと見紛うような真剣そのものな表情で、一体何を言っているのジェーン!?
急な抱き枕の対応って何!?
その後、しばらく本気でシフト割を作ろうとする2人を止めるので大変だった。
絶世の美少女たちを抱き枕にするお仕事は富豪の所業すぎて、お給料出せないから!
そんなとんでもない贅沢には、いったい何千億兆万円必要なのか、想像も付かない。
令嬢だけどあんまりお金持ってないんだよ! 私!




