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その198 暴君ジェーンの望郷



「というわけで、ドラゴンの正体は女装した美人さんだったんだよ。可愛さ信者の」

「すいません、あの、分かりません!」


 ベッドに腰かけるジェーンにドラゴンについて話すと普通に困惑されてしまった。

 屋敷から寮に帰って来たそのままの興奮したテンションで話してしまったので、落ち着いて深呼吸をし、もう一度筋道立ててトラコさんのことを話す。ついでに仕事内容や妹様についても話してしまう。

 するとジェーンは何かを思い出したように目を大きく開けた。


「トラコン! そういえばそんな名前を提案しました! 私が!」

「ジェーンが?」

「はい、至極適当に」

「適当に名前付けちゃ駄目だよ!」

「すいません……本当に良くない子供時代でして……」


 幼少期のジェーンは本当に自由で、ガキ大将な雰囲気が漂っている。

 そうか、あのあからさまにドラゴンな名前はジェーンの考えたものなのなんだ。

 そう考えると途端に羨ましくなる自分がいる。

 私も適当な名前を付けられてみたい! チッコイ・レージョーみたいな!


「でも懐かしいですね。あれは楽しい日々でした」

「トラコさん、トラウマになってたけどね」

「そうですか……振り回してしまって申し訳なかったです……」

「いやいや! でもいい思い出でもあるって!」

「そうですか? 物理的に振り回されていたのが好きだったのでしょうか?」


 やはり暴君なジェーンだった。

 何度聞いてもそういう暴れん坊な彼女が! 物理的に振り回す彼女の姿が想像できない!

 きっと魔力的にも全盛期にあったんだろうな……もしかしてナナっさんもそれが狙いで子供の見た目で成長を止めているのだろうか。


「一度会ってみたいですね。旧友ですし、万が一、偽物だったらいけないですし」

「きっと震えて喜ぶと思うよ。物理的に」

「物理的に? ええっと、ではいつか訪れるとして、ちょっと時系列を整理しますね」


 手元にあった紙にスラスラとペンを動かし、ジェーンは図を描く。


「まずトラコは幼少期に私の地元に住んでたんです。と言っても家があったわけじゃなく、森の中にいたのですが。今考えると、あの頃はまだ人間になりたてだったのかもしれません」

「そういえばジェーンの地元ってすっごい不思議な場所だったね」

「はい、なかなか変な場所のようです。それで、ある時からちょくちょく姿を消すことが増えたので、あの時期から仕事場を探し始めたのかもしれません。それで職場が決まり私にお別れを告げて、ハンカチも落としたと」


 トラコさん、ジェーンに(物理的に)振り回されながら職場探しも並行してやっていたんだ……超過密なスケジュールだ。

 まるで退職を決意し、働きながらたまの休暇を利用して次の職探しをする人みたい。

 あれは滅茶苦茶大変らしいですよ。

 

「それにしてもあの細くて泣き虫だった彼が立派にやっているようで安心しました」

「友人として心配だった?」

「いえ、かつてのボスとして」


 ボスって自称する人初めて見たなー私!

 なんだかトラコさんの話をしているうちに、ジェーンのメンタルが少し幼少期に戻りつつある気がして、私は心臓ドッキドキだった。


「す、すごくしっかりしたメイドさんだったよ! 妹様についてもすごく冷静に対処してたし」

「私で慣れたのかもしれませんね……ああ、そうだ! ラウラ様、その妹様という人が誰かに似ていると思っていたのですが、それは私かもしれません」

「ジェーンに?」


 言われてみれば子供の頃のジェーンは話に聞く限り無敵の暴れん坊で、現在の妹様と酷似している面がある。

 いまいち想像できなかった子供ジェーンだけど、妹様と比べてみれば少し想像が楽になる。

 そうか、あんな感じだったんだジェーン。

 ……超萌えるな~~~~~~~! その頃にも会ってみたかった!


「まあ、私と同じだとすれば、そういった無敵な側面はですね、大人になるにつれて消えていきます」

「えっ、そうなの?」

「はい、あくまで幼少期の全能感でのみ可能なんです」


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[良い点] テンポ良くノリの良い文章 才能分けて欲しい [気になる点] なし [一言] ホント何でも肯定するな―ラウラ さすが世界推し
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