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その195 長風呂得意侍


「ちなみにイブンさんにメイド服を着せたのも、趣味です」

「あっ、そこも趣味でしたか。あの、こう言っては何ですが……趣味が合いますね!」

「我々はもしかすると心の友なのかもしれません」


 思わず私はトラコさんと力強く握手を交わす。

 片方の目が見えないとは思えないほどにスムーズな動きである。

 それほどまでに今この瞬間、心が一致していたのだ。


 イブンのメイド服という世界一可愛い旗印の元で、私とトラコさんの絆は深まった。

 この世で最も純粋な子を通じて繋がったこの世で最も不純な絆である。

 冷静に考えると職権乱用も甚だしいことしているからね! この人!

 何をしれっと当然のように女装させてるんですか!

 グッジョブとしか言いようがありませんよ! まったく!


 というかなるほど、イブンにメイド服を着せたのもトラコさんが男性である証左だったのか。

 イブンがあまりにも可愛いので違和感を覚えなかった……。

 

「さて、もうそろそろ湯あたりしてきたのではありませんか? 上がる頃合いかと」

「あっ、いえ、まだ大丈夫です!」


 このまま入り続けると茹蛸になってしまい大根でポコポコ叩かれてしまうことが見込まれるが(そうすると柔らかくなる)、しかし、私にはまだまだまだまだ気になることがある。

 ここは私の肌がお湯でシワシワになったとしても、この場に留まっておきたい!


「しかし……」

「長風呂耐性があるんです! お風呂で本を読むのが好きなので……」

「なるほど、そうなのですか」


 お風呂場にまで本を持って読んでいたオタクな経験がここで生きた。

 お風呂に何を持っていくか。スマホ派と本派で分かれるところだろうが、私はスマホをお風呂に持っていくことでビビり倒す程度の心臓の持ち主なので、必然的に本派である。

 時に京極夏彦などを持っていき、お風呂で頑張って読んで腕を痛め、熱中で熱中しすぎて死にかけていた甲斐があったというものだ。


「それよりもあの、私、どうしても調べないといけないことがあって……」

「なんでしょうか?」

「世界についてなんですが」

「世界について考えたことすらありませんが、今一度考えて見るとしましょう」


 怪しい勧誘の様な発言になってしまったが、トラコさんは流石と言うべきか冷静に受け入れる。

 そして私は世界を滅ぼす可能性と、その候補がドラゴンであることをトラコさんに話す。

突飛な話にも関わらず、トラコさんは少しの動揺も見せずに、ただ頷く。


「世界を滅ぼす……それは私には不可能ですね」

「ドラゴンでも無理なのですか?」

「私はドラゴンの中でも弱い方なので……しかし、強い方だったとしても無理でしょうね。ドラゴンなど所詮は魔法が使える獣です。人間の方がずっと強い」

「途方もなく強いイメージがありましたが、そういうものなのですか」


 私のドラゴンに対するイメージが偏っていたようで、どうやら世界を滅ぼすほどの力をドラゴンは有していないらしい。

 そもそも世界を滅ぼすほどの力が何なのか謎すぎるから、いまいち実感が沸かないのだけど。


「ですが、滅ぼせる人に心当たりはあります」

「えっ、だ、誰でしょうか?」

「それは勿論──妹様ですよ」


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